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39歳で青春するのはダメですか  作者: みちぼん
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タイトル決定!「39歳で青春するのはダメですか?」

 俺の住むアパートは築15年二階建ての手狭な単身用アパートだ。4畳の部屋に3畳のロフト付き。トイレ風呂は一応別だがユニットバスを無理やり半分にした作りで、風呂釜はなくシャワーのみ。決していい部屋ではない。


 だが既にこの部屋で暮らして3年になる。駅からは800m、コンビニは徒歩9分と絶妙に不便だが割と気に入っているのだろう。引っ越しが面倒なだけかもしれないが。


 そんな部屋で人の心を打ち、尚且つ自分は青春できる物語を描こうと言うのだ。読者からしたら読むのをやめたくなるレベルの創作環境だろう。


 いや・・どんな場所だろうといい物はいいのだ。僻地にあるのに客足の絶えないラーメン屋と同じ理屈だ。


「さて・・まず時代設定とストーリーの流れ・・後は伏線を・・」


・・ん?なんだ。何やら外が騒がしい。

バタバタと人が歩いて回る音がする。よりによって人が壮大スペクタクル長編小説創作の第一歩を踏み出すタイミングで生活音を響き渡らせやがって!


「あっそれはロフトにお願いしまーす」


ん??なんだ今の可愛いらしい声は・・。

待てよ・・そういや隣室はずっと空き家だったな

まさか新規入居者か!しかもまさか女の子か!


 俺はすぐさま自室の玄関ドアに近付いて耳をくっつけ外の声を拾おうと必死な体制を取った。行きかう引っ越し会社の人間の声に混ざり、時折り聴こえてくる女性の声。これは若い子だ。間違いない。俺の女子大生感知センサーが警戒アラームを鳴らすが如く反応している。


「すいません。お任せしてしまって」


 なんて上品な声質だろう。引っ越し業者を労う優しさ、それに合わせて時折聞こえる笑い声・・これはもしかしてもしかすると超絶美女が舞い降りたんじゃ・・


見たい。

どんな子だ。

マリア様かもしれん。

今さりげなく買い物に行くフリをしてでれば・・


「あっお隣にお住まいになられている方ですか??

今日からお世話になります。宜しくお願いしますね」


なんてきっかけ作りも容易だろう。

よし行くんだ行こう俺行くべきだろ俺!


もしかしたら別な青春が始まるかもしれないじゃないか!いやむしろ小説なんかより全然可能性あるんじゃないのか!よし!動かなきゃ何も始まるまい!


ガチャ


・・あれ・・もう終わった・・の?


すでに引っ越し業者の姿はなく隣室のドアも閉じられていた。そういやそんな広い部屋じゃないし・・荷物もそんなにない・・よな。


 俺はそっと自室のドアを閉め鍵をかけ、パソコンに向き直る。しかし書き始めたはいいものの・・早速自分の教養、語彙力、センスの無さを思い知る。つかそれ絶対作家に向いてないやつ。


 しかし最も苦しいのはアイデアは出てきてもそれを具現化する事の難しさ。一流作家の如く。


 わかってはいたが今回もそれに打ち当たっていた。今、日本中に物書きはどれほど存在するのだろうか。そして存在する物書きそれぞれが独創性を持ち、非凡で尚且つ面白い物を書きたいと思っているだろう。


 もちろん俺もそうだ。ありふれた誰にでも描ける物語をわざわざ書こうとは微塵も思わない。だが自分が書いた物を読み直すと、平凡で誰でも思いつくネタやオチに塗れた駄作としか思えない。


 書いている最中は夢中で面白いと思っても、俯瞰でみるとつまらない。己の才能の無さを感じてしまう瞬間だ。自分が面白いと思えなければ赤の他人はもっと面白いとは思わないだろう。まずは自分で面白い、楽しいと思う物を生み出さねば・・。


 どうやらまだ諦めてはいないらしい。必ずやり遂げる強い意志だけはまだこの小さな魂の中に宿っているようだ。

青春を題材にするのであればやはり高校生が主体となり

真っ直ぐで淀みのない喜怒哀楽に彩られた・・


 いや、その設定では俺には描ききれない。いい青春を送っていないから想像と願望でしかないパラレルワールドになってしまうだろう。つまりは他人の作品に引っ張られ兼ねない。


 かと言って青春物語を謳っておいて39歳を主体にした物語など誰が読みたいものか。気持ち悪い。


いや・・違うな。俺はこの部屋で青春すると決めたはずだ。自由でいいんじゃないか。


 がむしゃらだけど無駄と徒労ばかりで、でもどこか熱を持った39歳が繰り広げる第二の青春活劇・・。書いてみるか。1からだ。

 ここまで書き上げていた物を全て消して真っ新になった原稿画面に一文を打ち込む。タイトルだけはすんなり決まった。


「39歳にもなって青春するのはダメですか」




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