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12 エピローグ

エピローグ1


 兵庫県明石市に本拠地を置くイカロス・インダストリー、その応接室。

 ミハル・クライトン元作戦統制官は僅かに緊張した面持ちでソファに座っている。品の良いグレーのスーツ姿で超研対の制服ではない。


「これがジェイムス・アンダーソン氏に依頼されていた『アストレアの欠片』です」

「ご苦労なさったでしょう。心からお礼を言いたい。ミセス・クライトン」


 テーブルの上にはA4サイズほどのジュラルミンケースが置かれている。

 対面で座るその男に対し、クライトンはようやく顔を綻ばせた。


「恐れ入ります、ブレインズさん」

「その名前で呼ぶのは止してくれませんか。私は死んだことになってますので」

「え……ああ、そうでしたね」


 クライトンは鎖付きの眼鏡を押し上げ、慌てて同調する。

 男は意に介した様子もなく、職員が運んできたお茶に手を出すと、香りを確かめ始めた。

 そして、おもむろに口を開く。


「トーキョーロスト、おかしいと思いませんか?」

「は?」

「あの時ハッキングされた核は三発。〔一番目〕が他を排除するためなら三発も要らない」

「なん、の話でしょうか?」


 クライトンは話が見えず、困惑の表情を浮かべる。


「誰がデトロイトに核を向けたのか」

「え…………」








エピローグ2


 カンッカンッカンッカンッ……


 朝の柔らかい陽射しの中、甲高い杖の音が階段の下まで響いていた。

 イオは白地にライトグレイと黄色のラインが入ったハーフヘルメットを被っている。

 浅いベージュのジャケットに膝丈のキュロット、右脚の下肢装具はアイボリーのニューモデル。

 胸のイ重研のバッジはやっぱり曲がっている。


「どうしてキミは、ギリギリまで起きない」

「あなたこそ、先に起きたんなら起こしなさいよ」


 階下で待っていた黄色いモタードの後ろ、イオは「どすんっ」と腰を下ろす。

 軋み音の不平を漏らすリアショック。

 電シェル横のスタートキーを押して超電導モータを起動した。

「ヴゥン……」一瞬だけ伝わる微振動。

 ハンドルバーのATiマネジャーも同時に立ち上がる。ディスプレイに浮かび上がるロゴにはv6とある。僅かにチラついているのは製造が終わって久しい絶版車だからだ。


「そうそう、今日はリコが戻る日だから、早く帰って来てね」

「また、重くなった」

「な、なんですって?」

「フロントショック。沈み込み」

「えっ? ……って大して変わってないじゃないっ!」

「毎日、少しづつ。先週と0・8ミリ、違う」

「細かっ、どんな眼してるの? そういうの才能の無駄遣いって言うのよ」

「そういうキミこそ、大雑把過ぎる」


 超研対の制服、お手製のサポーターが覗く右の手でスロットルを煽る。

 イオとお揃いのヘルメットの右側、「ゴッ、ゴッ」と軽い衝撃が走る。

 ヒトは面倒臭そうに呟いた。


「杖は人を殴るもの、じゃない」




.

この度は最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。


また、本作をブクマ評価等で応援いただけましたら大変嬉しく思います。

今後とも宜しくお願い申し上げます。m(_ _)m

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