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『芸術』を感じる

作者: 山口昴

 

 『芸術』とはなんだろうか? 多くの人がこの問いに対して、自分の中にハッキリとした答えを見つけることは出来ないだろう。


 おそらく、それほど難しい問題ではない。なぜなら、この問いに関しては、決まった答えのようなものは無いと思うからだ。日常的に芸術に触れ、それがどういう意味を持っているのか、ということを考えていれば、自ずと自分の中に答えのようなものが生まれてくるものだと思う。大切なのは、その答えを自分の中に持っているかどうか、ということである。

 

 しかし、昨今の世の中では、多くの人が『芸術』のことを、非日常の一部のようなものとして、常に半歩引いた姿勢をとっているように思える。


 先に結論を言うと、我々はもっと『芸術』に触れるべきである。これから述べる私の意見を読んで、ほんの少しでも、『芸術』に目を向けようと思ってくれたら幸いである。


 一口に『芸術』と言っても、やはり多くのジャンルが存在する。音楽や絵画、文学などが真っ先に挙げられると思う。しかしどの『芸術』にも共通していることは、どれも人の心を表現しようとしている、ということである。


 人の心というのは、複雑怪奇であり、簡単に伝えられるものでは無い。コミュニケーションの手段として発展した言語ではあるが、それは心を伝えるにはあまりに情報量が少なすぎたのである。


 クジラは多種多様な鳴き声(所謂『ソング』と呼ばれるものである)を用いて、自分が見た景色、感じたことを非常に正確に伝えられるという。もしも人がクジラと同じように、より多くの情報量を内包した音を発することができれば『芸術』というものは発展しなかっただろう。


 人は伝えたいのに伝えることのできない、胸の内で燻っているものを伝えるためにあらゆるものを利用した。感じたものを『色』や『形』を用いて表現しようとしたものは、いずれ『絵画』やそれに準じたものとなった。『音』の力を用いたものはいずれ『音楽』となり、『言葉』を駆使し、心の表現に挑んだものは『文学』となった。


 つまり『芸術』とはコミュニケーションの手段の境地のようなものとも言える。それでも、多くの人が『芸術』に対し、抵抗のようなものを感じるのは何故だろうか。


 私が思うに、『芸術』には、一つ一つの作品に異なった周波数のようなものがあるのだと思う。その周波数が一致すれば、その作品が伝えようとしていることを感じられるが、一致しなければ、その作品は、『よくわからない何か』になってしまう。その周波数を一致しようとするものこそ、芸術を理解する上で必要とされる、『感性』と呼ばれるものである。


 『感性』の鋭さは、人それぞれである。生まれつき鋭い人もいれば、そうで無い人もいる。では生まれ持たなかった人は『芸術』を理解することはできないのか? そうではない。『感性』というものは研ぎ澄ます事が出来るものだからだ。


 これは実体験になるのだが、私も数年前まで『芸術』に対してとても無関心であった。『絵画』はあくまでただの"絵"でしかなかったし、クラシック音楽など、睡眠導入剤のようなものとしか思っていなかった。しかしある日、ラジオで流れているヴィヴァルディの四季、夏の第三楽章を聴いた時、私は"夏"を感じた。(言うまでもないがもちろんこの時私は、その曲が"夏"であることを知らなかった。)その時私の中で何かがカチリと音を立てて切り替わったような気がした。それから私は、今までは観測することすらできなかった『芸術』が発する周波数に、少しずつダイヤルを合わせられるようになったのである。


 『芸術』を感じることは素晴らしい。『感性』が研ぎ澄まされている感覚は、自分を豊かにしてくれる。私はその感覚を少しでも多くの人に味わってもらいたくて、この文章を書いた。是非ほんの少し、『芸術』に目を向けて見てほしい。こちらが寛容な意思を示せば、きっといずれあなたに合った『芸術』を観測する瞬間が来るだろう。


 見え方が変われば、世界は大きく変わって見える。


 

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