鬼降臨と同時に死期到来なのだが…
「( )、僕は弱いし( )みたいにはなれないよ!」
そう言った僕に、あの人はこう答えた。
「勝狐!覚えておけ、己は何者かなんて自分で分かるわけが無い。例え鏡を見たところでそこに見えるものは、自分では無い。つまり、弱いなんて自分では分から無いんだ。だから、前を向け!少なくとも私は、勝狐を強いと思うぞ?それとも私は信じられないか?」
自分を信じる勇気、前を向いて歩む勇気、それをあの人がくれた。
だが今、僕は自分の目を信じられない。
「どうですかぁ?この神衣、私が創ったんですよ!可愛いですよねー?貴方はどう思います?」
(なんなんだ!?この人は!家に勝手に入ってるし、自分のことを女神とか言うし、俺のプリン食べるし!通報しよ、うん通報しよう。)
僕は、ベットの上に置いてあった携帯を掴み110という数字を打ち込もうとした。
「あー!信じていないですね!」
「信じる要素がない!まず、女神とか言ってる奴に普通のはずがない!」
「だって、普通じゃないですもん!仕方ないので、証拠を見せてあげますよ!」
彼女は微笑みながら、指を鳴らした。すると。
「110番っと…………………………ん?………………あれ、おかしいな?…………………繋がらない!?」
僕が焦り始めると、彼女の微笑みが楽しそうな笑顔に変わった。
「あれれ〜繋がらないですねー、電波でも悪いのかな?」
「そんなわけ………なんで!?圏外!?」
そう、彼女の言葉で携帯の画面端を見ると、電波はゼロ横には圏外と表示されていた。
「私の力で圏外にしてみました〜!凄いですよね!ね!信じてくれました?」
「信じるも何も、百歩譲って信じたとしたらアンタ女神なのにやるコトちっさすぎるぞ!?」
「女神なんて、そんなもんですよ!」
(この女神はアホだ、今確定した…)
「あぁー!今、アホとか思ったでしょ!でも、女神だとは思ってくれたみたいなのでいいでしょう!」
「いや、完全に信じたわけじゃ……まあいいや、めんどくさいし。」
僕は、この状況がかなりめんどくさい事に気がついた瞬間、恐ろしいほどの脱力感に襲われた。
「あー、もうなんか良いや寝よ。」
(なんか忘れてる気がするけど…それもいいや)
「あ!?ちょっと待ってくださいよー!?まだ頼みたい事があるのに〜!」
(知るかそんなめんどくさいそうな事、僕は寝るぞー)
こうして、僕は後に色々後悔する事になるとも知らずにまぶたをそっと…いや勢いよく閉じたのだった。
いや、閉じたかった。そう、閉じたかったのだ。何事も無く、穏便に……………実に、頭お花畑で考え無しの愚か者だ俺は。(べつに、直す気は無いけど)
扉が開いた。今、この目を閉じようとした時にだ。分かっている。分かっているとも、いくら頭お花畑の考え無しでもこの状況の最悪さ、いや災厄さは分かる。
「………。勝狐ぃ?」
戦慄、恐らくコレの事を指す言葉なのだろう。今言葉を発した人物は、まさにそれを起こしたのだ。
いや、この状況で隠すのはおかしいだろう。普通に言うと、津々である。
「誰かなぁ、その人…」
最悪である、男の部屋に男と女がいるのだ。側から見ればそれは完全にアウトだ。だが、べつによくあるハーレム系のアニメの様に一つのベットで寝ているところを見られた訳でも無いし、ましてや俺の知り合いでも無い訳だからただの不法侵入者として扱えば良いのだが。
(…あ。今日、津々と約束があったんだった…。)
そうも行かなくなった。ここに来て僕は、事の重大さに気づいた。時計を見たのだ、ベットに置いてある目覚まし時計を。驚愕した、約束の時間は八時そして現在の時刻は。
「っっっっっっく、九時半んんんに!!!????」
約一時間半のオーバーである。
「そうよ…九時半よ…遅いと思って来てみれば、アンタ!!何やってんのよぉ!!!!!!」
その怒りは部屋の窓を振動させ、家具は揺れる程のものだった。これほどの大声でも、起きて来ない父と母は流石と言うほかない。
「津々?コレには事情が…」
「事情も何も、無いわよ!!乙女との用事をすっぽかして、部屋で女の子とイチャイチャなんて…どういうつもりよ!!」
津々の血管は今にでも、切れそうだった。
(マズイ、コレは本当にマズイ。もしこんな事がファンクラブにバレたら…殺される。確実に殺られる。何とかしないと…。)
そう、僕が脳内で色々思考を巡らせていると。彼女の方が先に行動を起こしてしまった。
「ふむふむ、直正 津々さん、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の天才さん、なお学園では女神と呼ばれている……と、凄いですね!お友達になりましょう?」
彼女はそう言い放つと宙を浮かび上がり、津々の前に行き手を掴んだ。
「…え?今、浮かんだ!?」
僕と津々は思考を止めた。
彼女は一体何者なのか、果たして本当に女神なのか…だが、それはまだ信じられない。いや信じたくない。
だって、絶対に面倒くさいからだ。
短かったので、伸ばしました!