この人、不審者過ぎるんだが...。
少し質問してもよろしいですか?
貴方は何故心を閉ざしているのですか?
――――僕は....。
何故、貴方はずっと忘れられずにいるのですか?
――――僕にとってあの人は....。
何故その人は、
―――わからないッ!!
では最後の質問です、貴方は何故忘れてしまったのですか?...あの言葉を。
「それはッ!!....。」
最近変な夢を多くなっている気がしていた。それも少しやな夢をだ、そのせいで最近は眠りが浅くてしょうがないのだ。今回の夢なんて夜中に部屋が光って、その光の中から女の子が出てくるという全く意味の分からない夢だった。
(今日は休日だし、凄く眠いし布団から出たくないのだが、この後八時から津々との予定があるから早く起きないといけないんだっけか?)
僕は重い身体を起こすため右手を動かした。その手はベットの縁を持つはずだった、だが右手はそんな硬い物を触れることは無かった。
(....。なんだこの感触は?この柔らかくて絶妙に生暖かい感触は!?しかも、手に収まりきらないぞ?)
そんな物は僕のベットには乗っていなかったはずだった。だが現に今、僕の腕にはその柔らかいものを鷲掴みにしているのだ。そんな時だった、
「ん、ん~~~~~....。」
(はい?なんだ今の唸り声....。)
僕は今まで眠すぎて閉じていた瞼を、恐る恐る開き始める。すると僕の右手は予想外のところを掴んでいた。
「なんだ、ほっぺか....幽霊でも出たのかと思った.........んッ?」
今僕はとんでもない悪寒に襲われ、表情は凍りつき顔色は一瞬で青ざめた。
「なぁーーーーーーーーーーーーッ!!!!!?」
僕は全く知らない女の子が自分と同じベットに存在しているという異常事態に、驚きのあまりベットからすごい勢いで転がり落ちてしまった。
[ドォーーーーーーン]
「ふぁ~~~。何ですかぁー今凄い音がしましたよぉー?」
見知らぬ少女が、僕の転がり落ちた音で目を覚ました。
「あんた....!誰?何で僕の隣にいるわけ!?」
少女はその僕の問いに何か思い出したかのように手をたたいた。すると起き上がり、こちらの方に身体を向け急に頭を下げてきた。
「お布団、ふかふかで気持ちよかったです!ありがとうございました!」
「......お気に召したようで良かったです......!?いやいやいやいや、違う!!そうじゃ無い布団の感想なんかどうでも良いよ!?」
「えぇーーーー!?どうでも良いんですかぁー?じゃあ、冷蔵庫に入ってたプリン美味しかったです!!」
「いや、何勝手に食べてるの!!それ僕のなんだけど!!......いや違う、そんな事じゃ無い僕が聞いているのは何でここにいるのかってことで!!」
すると彼女は首を傾げた。
「それならもっと早く言ってくれれば良かったのに、てっきりこの家の感想を言ってほしかったのかと思いましたよ!」
「一番最初に言ったよ!」
彼女は一体何者なのだろうか、落ち着いて彼女を見ているとあることに気付いた。
(...美人だ。)
そうかなり美人なのだ。それに加えて金髪でスタイルは恐らく津々を超えているんじゃないかと思う、例えるなら。
「...女神。」
そのふと出た言葉は紛れもない称賛であり、女の子にとってそれは最上級の言葉である。それに自分で言うのもなんだが、僕はあまり人を褒めないのだが今回は本当に彼女を見てそう感じてしまったのだから仕方が無い。だが、どうやら彼女にとってその言葉は最上級でも、ましては称賛でも無かったらしいのだ。
「はい、私は女神ですけど?よく解りましたねぇー。ヒント無しで正解するなんて、見事の一言に尽きますよー!」
(嘘!?何その自信、自分の事女神とか言っちゃってるよ?普通どんな美女でも流石に自分から女神なんて言わないよ....。)
「あ~~!!その顔もしかして私の事変な奴だと思ってます?違いますよ私は全然怪しくなんて無いのに!!」
「いやいやいや、人の家に勝手に入ってきてベットで寝て、勝手に人のプリン食べて挙句の果てには自分の事を女神とか言っちゃう人間のどこが怪しくないのか逆に聞きたいわ!!ていうか、人の家に勝手に入ってる時点で不法侵入の現行犯だからねッ!!?」
こっちは怒っているはずなのだが、自称女神は全く人の話を聞く気が無い。僕が二行以上の言葉をしゃべると、必ずよそ見をしたり手で遊んだりしている。
「おい、話聞いてます?女神とか馬鹿なこと言ってないで、もう帰ってくれないかな!?今回はプリンの事は不問にしてあげるからさ....。」
「それは無理ですよ?だって私は貴女に頼みたいことがあるからやって来たんですから。」
彼女は急に真面目な顔になり、こちらを見つめてきたのだ。その顔は今までのとぼけた顔を一瞬で忘れてしまうほどに豹変していた。
「あのね、アンタにはあっても僕には無いの!だから今日はおとなしく帰ってくれないかな!?」
「だからそれは出来ませんよ?私は女神として貴方に頼みたいことがあるのですから!」
「なんだそれ....。まぁ、なんかこのまま言っても帰ってくれなさそうだから話位は聞いてあげるよ」
そう僕が了解すると、彼女は表情を満面の笑みに変えてこちらによって来た。
「本当ですかッ!!!?ありがとうございます!」
「近い近い近い、分かったから離れて。」
「うぅー、ケチですねぇーまぁいいですけど!そんな事よりお話しなきゃですね!」
すると彼女はベットの上で突然立ち上がり、腕に付けていたブレスレットに何か指で書き込み始めたのだ。僕はよく解らずにそんな彼女を見ていると、急にそのブレスレットが部屋中を包み込むほどの閃光に包まれたのだ。
「うッ!?な、なんだ!?」
その閃光の中、眩しさをこらえて彼女の方を見るとその光景に驚愕した。何故なら彼女の体には黄金に輝くガントレットに白いワンピースを身に纏っているのだ、それこそ女神の様なだ。だが驚く所はそこでは無い、その服をいつ着替えたのかである。光の中で着替えたにしても光が目くらましなっていたのは、ほんのわずかの時間で二秒も無いのだ。
「どうやって着替えたんだ!?ていうか、本当にアンタ何者なんだよ!?」
「だから言ってるじゃないですか!私、女神なんです!」
家に謎の美女登場、勝狐は一体どうする!?そして、彼女は一体....。