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6/6

<A's05> 想い出

関東では雪が降ったようで……。

そして本場のこちらは大荒れ。ひえええっっ!

今も降ってますよ。雪が何十センチも積りますよ。

さらに北はもっとひどいことになっているようですけど。

最近念願のマイパソ到着。初めてのマイパソなので、色々と自分一人でやるのは初体験でしたね。最初の設定とか。普段使っていたのは家族のPCでしたから。

まぁそんなに難しいわけではなかったのですが。

今までXPを使っていたのですが、届いたマイパソはVistaなので使いにくいです。でもまぁそこは慣れですね慣れ。

今年か来年か忘れたけど、今度は新しいタイプのが出るから今のところはXPをやり続けてVistaは買わないほうが良いという話を聞きましたが、そんなことお構いなしで買っちゃったので。でもまぁいいか…。

今回はこれで書いてみたんですけど、やりにくい…。

ゆっくりと慣れていこうと思います。

執筆速度は変わらないと思います(笑)


さて、今回はいよいよ最終回です。いきなりですが。

事件と、そして葛城と秋津の紡ぐ物語の結末はどうなるのかぜひご覧くださいませ。

後書きは、葛城教官による「愛の水泳教室」らしいです(爆

本編もそうですが、さらに後書きも加わっているので長くなっていますがこれが最後ということで、ひとつお願いします。

 ……僕は蟻だ。


 蟻には構築された社会とそのシステムが存在する。

 女王蟻が居て、兵隊蟻が居て、そして働き蟻が居る。役務分担とヒエラルキー的階級社会の存在。人間社会にも見られるシステム。


 女王蟻は、蟻たちの上に君臨するただ一匹だけの特別な存在。いわば神。


 兵隊蟻は、身勝手に働き蟻の犠牲の上に無為徒食する不逞の輩という存在。


 働き蟻は、社会の下層として生涯上層のために働き尽くし、そして身を食い尽くされる存在。


 ……僕はいったい、どの蟻に分類されるだろうか?


 蟻の巣という複雑な構成を営んだ国家。そしてその国家に司る軍隊。

 僕はおそらく働き蟻の立場だろう。

 女王蟻の下にいるから身勝手に振る舞い動く兵隊蟻に勝手に死ぬまで使いまわされる蟻。

 彼ら兵隊蟻によって命を落とした働き蟻の数は計り知れない。

 ――僕はその中をたった一人、自分だけ生き永らえることができた。

 でも、僕は一生働き蟻のまま。

 僕は蟻。

 身勝手に無為徒食される働き蟻。

 

 僕は蟻。


 働き、戦い、そして死に逝くはずだった者。




                       ●




 夕食が過ぎてから数時間、どっぷりと夜の闇が浸かり、海も真っ黒に染まったとき。

 何事もないように復員船『葛城』はただ静かに白波を立てて航行していた。

 

 ドタドタドタドタ………


 しかし艦内は無数の走る足音でうるさかった。

 「待てーっ!」

 逃走する一人を追って、大人数が走り出す。

 「そっちに行ったぞーっ!」

 「逃がすなーっ!」

 元帝国海軍軍人の乗組員たちは、ある一人を追い回していた。

 彼らは上官の命令で先日の銀パエ犯人だとされた一人を発見し、今こうして逮捕連行しようと必死になっているのだ。

 しかし彼らは全員とある主計科長の下に属する者たちばかりであり、他のごく普通の航海士や元帝海軍人たちは加わっていない。

 「いたぞっ!」

 追われていたのは、秋津だった。

 時計の針は深夜と言っていい時間帯に差し掛かり、すでに復員兵たちは寝に静まっているのだが、今宵は騒がしい夜であった。

 「はぁ…はぁ……」

 秋津は――正確には葛城とともに、押し寄せるように迫りくる追っ手の波から逃げていた。

 秋津の背中を追いかける彼らの中にはふと不審に気づく者もいた。

 それは――何故、こんなに走って目的を見失うことなく追い続けているのに距離は縮まらないのか。

 

 その答えを知っているのは秋津だけ。


 葛城に手を引かれながら走る秋津は彼らに捕まることはずっとなく、逃げ続けることができていた。

 かれこれもう結構と言うほどに走り続けているのだが、葛城は涼しい顔で息ひとつ切らしていない。疲れてきている自分が情けない。そんな情けない自分は葛城に手を引かれ、足が止まることはない。

 「はぁ…はぁ…ッ げ…!」

 前方からも追っ手がこちらに向かって走ってきていた。このままでは挟みうちだ。

 「…こっち」

 「はぁ…ッ! はぁ…ッ!」

 ぐいっと葛城に引かれるままに秋津は挟みうちから逃れるために角のほうを曲がった。

 前と後ろから押し寄せてきた追っ手の彼らは秋津たちが逃げ込んだ廊下へと雪崩れ込む。

 この艦の乗組員としてこの先は行き止まりだと熟知している彼らは追い詰めたと確信した。

 闇の向こうへと駆け抜け、しかしそこにいるはずの者はいなかった。

 見えるのは行き止まりの壁だけ。

 「捜せッ!」

 この廊下の左右にあるすべての部屋の扉を開けて、彼らは必死に捜し出す。

 そしてその中のひとつの扉を開けた先は、箱が山のように積まれた倉庫。

 かつては弾薬庫として使われた空間だったが、武装解除のときにそれはただの倉庫と化した。兵員たちを収容するほどのスペースとして使うにはあまりに狭すぎるため、あるのは何が入っているのか統一されていないただの箱や樽ばかりであった。

 間違いなくここに隠れている。

 倉庫に入った彼らはそう思い、捜索を開始した。

 樽の中身を覗き、箱の中身を開け、隙間という隙間を捜しだす。

 しかしいくら漁っても人の気配すらしない。

 「……ちっ。他をあたるぞ!」

 ここには居ないと判断したのか、彼らはその陰湿な空間から早々と出て行ってしまった。

 扉が閉じていくに連れて光の線が徐々に短くなり、やがて完全に光は断たれて扉はガチャリという景気の良い音とともに閉まった。

 「……行った」

 「………ッ」

 天井の排気孔の柵がはずれ、サッと何かが降りてきた。

 音もなく華麗に着地した少女と、その手を繋いだ秋津も淡い光に覆われながらふわりと降り立った。

 「……ふぅ」

 秋津は吐息を漏らし、ひとまず胸を撫で下ろした。

 ドキドキしていた胸がおさまり、緊張が解けたかのように力が抜けていく感覚にとらわれる。チラリと闇に慣れた目で見た葛城の横顔は、やはりいつも通りの無表情で冷静だった。

 「なんとか巻いたねぇ……。…でもさ、艦魂の力でぱぱっとその場から瞬間移動で逃げれるんじゃないの?」

 「…あんな大勢の視線の前で消えれば、ますます大騒ぎ」

 「…まぁ、そうだね」

 突然追っていた人間がぱっと消えた瞬間なんて非常識なものを見たらさぞ驚くに違いないし、余計になにかがややこしくなりそうだ。

 そういうのは残念だが控えたほうが良いと葛城は判断したらしい。

 「…もう、みんな行ったみたいだね」

 「……そろそろ私たちも」

 「そうだね。これくらいの時間なら、僕たちも烹炊所に―――?」

 秋津は取っ手を掴んだ閉じた扉に違和感を感じた。

 「……ん? ふっ―― ……あれ?」

 ぐっと押してみたが、ビクともしない。

 「ふんっ」

 今度は引いてみたが、これも駄目。

 「ふんぬぬぬ……ッ」

 違うと思うけど、一応横にも挑戦してみる。案の定無理。

 「う、嘘……」

 「…どうしたの」

 「……開かない。 扉が……開かない」

 「………」

 秋津が呆然と立ち尽くす扉の外側には、しっかりと施錠がかけられていた。

 それに気付いた秋津は、顔を青くする。

 「ど、どうしよ……。僕たち、ここから出られない……」

 おろおろとする秋津と反して、葛城はやはり冷静だった。

 ……いや、むしろ呆れている様子だった。

 「…落ち着け」

 「お、落ち着いてなんかいられないよっ! 閉じ込められたんだよっ?!」

 「……私を誰だと思ってる」

 「え? そりゃ君は、この艦の艦魂……―――あっ」

 気付いた秋津に対して、葛城は小さく溜息を吐いた。

 「……瞬間移動でここから出れば良いだけの話。人目もないし、普通に出られる」

 「そ、そうだったね…。あはは……」

 「……馬鹿?」

 「ううっ…」

 シュンと落ち込む秋津を、葛城はただジッと見詰めていた。

 まぁ無理もないかもしれない。さっきまで追っ手から逃げ延びてきたのだ。その時まで結構緊張していたせいもあって、冷静な判断力も失っていたのかもしれない。

 しかしそれで同情するほど自分は生ぬるくない。軍人ならば……元軍人であったならば如何なる場合でも冷静さを失っては困る。

 「……この程度で冷静さを欠くとは情けない」

 「ううう……」

 言い返せない秋津は悶えるばかりだ。

 それよりこんなことをしている場合ではないと葛城は気付いていた。さっさとここから出て、計画通りに進まなければ……

 「さぁ… ―――?」

 秋津に手を伸ばしかけた瞬間、不意に葛城は視界の片隅にさえぎる影を見つけた。

 「――――ッ!!」

 ただ箱と樽などが置かれた陰湿な倉庫。

 そしてその住民。暗くて湿った空気の中、わずかな隙間から出てきた素早い影。

 ササッと葛城の目の前に現れたその正体は、ネズミであった。

 「―――ひっ!」

 「…うわっ!?」

 秋津もネズミの存在に気付いた直後、突然秋津の胸の中に葛城が飛び込んできた。

 突然のことに驚いてその瞬間事態がよく飲み込められなかった秋津だったが、自分の胸に葛城が顔を寄せて、小刻みに震えているのがわかった。

 「……あっち、行って…」

 ふるふると震える口で言ったその言葉は、どうやらネズミに向けられたもののようだ。

 ネズミはその場で二本足で立ち、耳を立てて首を傾げている。

 「………」

 震える葛城の小さな頭を見詰めてから、秋津はネズミのほうを見た。

 ギラギラと闇の中で不気味に輝いているネズミの瞳と目が合い、一匹と一人はしばし見詰めあった。

 そして、秋津の視線を正面から受け止めていたネズミはやがて伸ばしていた背を曲げて四本足に戻り、鼻をヒクヒクさせた動作を見せ付けてから、サッサと現れたときと同じように素早く物の隙間と奥へと消えていった。

 秋津はふぅと安堵し、そっと胸の中で震え続ける葛城に囁きかける。

 「もう安心していいよ。 …もう、ネズミはいないから」

 ピクッと反応して、顔を上げた葛城の瞳を見た秋津は一瞬息を呑んだ。

 それは今までに見たことがない瞳。いつもの無機質な瞳とは違う、もっと人間らしくて感情がこもった瞳。しかしそれはおびえたように揺れた瞳だった。

 「……本当…?」

 まるで小さな年相応の女の子がおびえているような声だった。

 だから秋津は出来るだけ優しく声をかける。

 「…うん。 もう、怖がらなくてもいいんだよ……」

 秋津はそっと葛城の黒髪が流れる小さな頭を優しく撫でた。

 葛城はネズミがいたところにおそるおそる振り返ったが、いないことを確認してほっとした雰囲気を見せる。

 「……良かった」

 「うん」

 「本当に…… ――――ッ!!」

 「えっ ――うわっ?!」

 またいきなり、今度はドンッ!と思い切り葛城に胸を叩かれた秋津は、そのまま頭を強打して倒れこんだ。

 「……ッ!」

 「ぐおおおお………」

 後頭部を強打してぷるぷると悶える秋津に、葛城が不意に心配するような眼差しを向けて駆け寄ろうとしたが、ハッと何かに気付いたような顔になって、足を止めた。

 「………」

 「い、たたた……。 コブできてるな、これ… ひぃ〜」

 後頭部を擦りながら上半身を起き上がらせた秋津だったが、その女のような大きい瞳は涙目だった。

 葛城がいつもの無の雰囲気の中で少々戸惑うような雰囲気をわずかに垣間見せていたが、やがてなにか決心したようにキュッと拳を胸の前で握り締め、ゆっくりと足を前に一歩、踏み出した。

 「………」

 秋津は、目の前まで近寄ってきた気配に気付いて顔を上げる。視線を上げるとそこには葛城の無表情があった。しかしどこか申し訳なさそうな、そんな普段の彼女には見たことがないような雰囲気が垣間見えていたような気がした。

 「……大丈夫?」

 葛城の小さい声での問いかけに、秋津はハッとなる。

 「あ…うん。 ちょっと痛むけどね……これくらい平気さ」

 葛城の伸ばされた手を掴んで、起き上がる秋津。

 「……め、ん……い…」

 「え?」

 自分が起き上がる最中に、なにかボソリと呟いた、葛城の声を聞いたような気がした。

 「なんか言った?」

 「……ッ」

 完全に立ち上がった秋津の目の前で、葛城は泳がせていた視線を真っ直ぐに向け直して、今度は、いつもと変わらず小さいが、しかしはっきりと聞こえる声で言った。

 「……ごめんなさい」

 「…あ。 いいよいいよ、僕は気にしてないし。それに…仕方ないよ」

 こんな陰湿な倉庫ならネズミが出てきてもおかしくない空気だ。

 そして目の前にいる少女は艦魂という存在であっても普通の女の子と変わらない部分ももちろあるだろう。

 「………ッ!」

 突然葛城の顔がカァァッと赤くなる。

 さっきまで冷静さを瞬時に失ってしまった自分の姿を思い出して恥じているのだろう。

 だけど……

 葛城だって女の子。苦手なものや怖いものだってあるのだ。

 「それから……」

 「ん?」

 「……ありがとう」

 その時、秋津はなにか心が温かいものに満たされていくのを感じた。

 ふわぁっとしていて、とても心が洗われるような感覚だ。

 暗闇だが、慣れた目が、葛城の頬に朱をさしこんでいることくらいは見てわかった。

 秋津はなんだか嬉しくて、可笑しくて、クスリと微笑みを漏らす。

 「…礼を言われるようなことはしてないよ。実際に僕はなにもやってないから」

 「……それでも」

 「……うん。わかったよ」

 なんだか……変な気持ちだ。

 よくわからないけど、とりあえず嬉しい。

 微笑む秋津と、頬に朱をさしこんで視線を逸らす葛城の、二人のそんな姿がそこにあった。

 それは確かだった。

 二人の距離が縮まったような、そんな感覚を与えてくれた。

 「……そろそろ、行かなきゃ」

 「うん、そうだね」

 葛城の差し出した手の平を、秋津がそっと包んで、そして握る。

 手を握り締めあった二人は、闇の中で輝き、淡い光に包まれて、その場から飛んでいった。

 

 

 烹炊所は静かだった。

 主計科兵の実戦と言われる一日に三度の飯は既に終わった後で、すっかり夜となって時計の針は日付が変わろうとしているところだった。

 先日の銀パエの犯人とされた秋津を主計兵たちが総出で追っているために烹炊所にいるのは主計科長一人だけであった。

 「――なにをしておられるのですか、主計科長殿?」

 「………」

 ゆっくりと振り返る主計科長。

 その細い瞳の視線の先には、敷島が立っていた。

 「…敷島一曹か。全班員は逃走する犯人を追えと、指示を出したはずだぞ」

 「…はい。全員、先日の銀パエの犯人――とされた――彼の追跡を全力を以って実行中です。そして自分も、主計科長殿の指示通りに犯人――である――者の追跡を行いました」

 「……なにが言いたい。敷島一曹」

 「主計科長殿、その手に持っているのはなんですか?」

 「………」

 さっきまでなにかを漁っていた主計科長の、その手に持っているものは軍需品の一部であるものばかりが入った袋であった。 

 袋に入った米や砂糖。銀パエが発覚してから今日までの間にも、日に日に米や砂糖の量がすこしずつ減っていたが………

 「やっぱりあなただったのですね、主計科長殿?」

 「………」

 「都合よく容疑者としては最も疑わしい解員の秋津衛という人物が現れたおかげで、彼に濡れ衣をかぶせ、その機に乗じてさらに銀パエがしやすくなり、そして今ここにいた者たちを全員追っ払い、今日も……」

 「口を慎め、敷島一曹」

 手に握り締めた袋、白く輝いたそれは砂糖。

 「……主計科長あろう者が、なんて愚公を」

 「……愚公? 敷島一曹、貴様、最後に見た陸の上はどうなっていた?」

 「………」

 「……再び海に出る前に俺が最後に見た陸の上は、滅茶苦茶だった。 地平線まで続く廃墟、疲弊しきった国民、食糧もなく、飢えと貧困に苦しむ日常。 それ以外になにかあったか?」

 祖国を離れ、子供が知らないような外国の港と海に長く居ることになった戦争が終わって、しばらくぶりに帰ってきた陸は、想像以上にひどかった。

 文明の欠片もない陸。

 人々は飢えと貧しさに苦しみ、活気というものがない。

 

 帰った家は、無残なものになっていた。

 広い庭だけが焼け野原として残り、建っていた我が家はない。

 そこにはポツンと小さな、残骸をかき集めたような粗末な、自称した家。

 自分の帰りを待っていたのは、妻と娘たち。

 息子たちはいくら待っても帰ってこない。その理由をその時初めて知らされ。

 そして自分はまた海に出ることになった。

 あの何もない陸の上でまた家族が待っている。

 なにもない、なにもないところに。


 「だから……この最後の復員輸送から陸にあがった後のために、こんなことを?」

 「…あの陸の上で綺麗ごとばかりで生きていられると思うか? 敷島一曹」

 「しかしここは海の上、そして船の中です。船や艦という世界では規律があります。その規律に遵守することが決まりなのです。…それは、立派な犯罪です。主計科長殿」

 「敷島一曹、お前、これが終わって陸にあがったらどうするんだ?」

 「……帰りますよ。自分の家に」

 「……お前は帰るところがある。そこは、飢えているか? 貧しいか?」

 「……日本中の誰もが皆、貧困と飢餓に苦しまれつつも必死に戦っております。自分は…この目で見たことがあるので知っています。それが、自分が見た最後の陸の光景でした」

 「…聞き間違いか? 俺の見たものとお前が見たもの、同じものを見たはずなのにどうも全然違うような気がするが――」

 「聞き間違いではありません。確かに俺はあなたと同じものを見た。だけど……感じたことが違うだけだ」

 二人のそれぞれの主張が宿る真剣な瞳が絡まる。

 やがて主計科長は砂糖の入った袋を、どんっとそばにあった机の上に置いた。

 「……俺は家族を養わなきゃいけないんだ。三人いた息子はみんな、戦死した。俺が帰って、女房と娘たちにすこしでもうめえもんを食わせてやりてぇんだよ」

 彼は家族を養う責任を持つ故、銀パエを犯した。

 だけど、それは家族とともに生きるためだ。

 「息子はお国のために死んだ。 俺もお国のために家族を家に残していって、戦った。 だが、国はそんな俺たちになにかしてくれたか? 戦争が終わって、お国が負けて、俺たちに与えられたものは苦しみだ。だったら、自分で生きるためのことを、なんでもするしかないだろう」

 「……そうですね。あなたのお気持ちはわかる。でも―――」

 だからといって……

 「他人に罪をかぶせることは許し難い行為です」

 「…俺は生きるためならなんでもすると言っただろ。他人を蹴落としても……な」

 「……そんなことをしてまで手にしたものが、すぐに尽きるであろうわずかな食べ物を得るためだけに二重に罪を重ねて、それでもあなたはいいのですか。家族がそんなあなたに喜んでくれると思っているのですか?」

 「家族とともに生きていられればそれでいいっ! ならば女房と娘たちが生きていられれば俺はどうでもいいっ! ……だから俺は、構わない」

 ゆっくりと、主計科長の大きな図体が歩み寄ってくる。

 「…もっと、ゆっくりと話し合おうではないか。敷島一曹。お前なら、すべてわかってくれると信じている」

 「…そんなこと微塵も思っていないくせに」

 「それまでの上官に対する暴言も許そう。ゆっくりと……話し合おうでは、ないか…」

 一歩後ずさる敷島に、さらに距離を縮める主計科長の大きな図体が近づいてくる。

 そんな大男に手を伸ばされれば自分なんて簡単に捻りつぶされてしまう。

 しかし敷島は逃げない。

 主計科長の、大きな手がヌッと敷島に忍び寄って―――――

 

 「ふざけんなぁぁぁぁぁっっっ!!」


 突然の怒号をとともに敷島の横を突風が通り過ぎた。

 ドスッ!と鈍い音が響き渡り、敷島は目の前の光景に唖然となった。

 秋津のとび蹴りがまっすぐと大きくてごつい手を伸ばしかけた主計科長の脇腹に食い込み、その大きな図体がグラリと傾き、そのまま倒れこんだ。

 「………」

 「黙って聞いていれば悲劇の主人公きどりかっ! 濡れ衣をかぶせられた僕の気持ちにもなれってんだ、この木偶の坊がぁぁっっ!!」

 荒く肩を上下に揺らす秋津に、汗をタラリと流した敷島が声をおそるおそるかける。

 「あー……秋津…?」

 「はいっ?!」

 グルリとすごい形相で振り返った秋津に、敷島はビクリと震えた。

 「なにっ!?」

 「いや……お前、キャラ変わってないか…?」

 「なにをわけのわからないこと言ってるんだよっ! あーすっきりした。 ったく、僕がどれだけ狭苦しい思いしてきたかわかってるのかな、こいつは」

 と、言いながら白目をむいた主計科長の身体を蹴った。ビクンと震える大きな図体。

 この大男を一撃で倒したほどの力に敷島は呆然となる。

 ちなみに秋津の強烈なとび蹴りは、敷島には見えていなかったのだが、葛城との二人によるツープラトンだった(大半は葛城の力による)。

 憤慨し、落ち着かせる秋津のそばには葛城が無表情に、哀れに倒れた主計科長を見下ろしている。

 「とりあえず、作戦はうまくいったね」

 「…ああ。 しかし薄々睨んではいたが、よくあのオヤジが真犯人だとわかったな」

 「…あ、うん。盗まれた砂糖や米のところに怪しいところはないか漁ってたんだけど、砂糖や米入れのすぐそばにさ、煙草の灰がわずかに落ちてて。ここで煙草を吸う人なんて、この人しかいなかったから。それだけで完全に断定はできなかったけど、これで確実だね」

 まぁ…実際に見つけたのは葛城だけど。

 それは心の内にしまっておこう。

 「…関心だな。 見直したよ、秋津軍曹」

 「いえいえ……あはは…」

 秋津はチラリと倒れた主計科長を見て、やっぱりちょっとやりすぎたかなと思いつつも、敷島に尋ねてみる。

 「あ、そういえば……。 この後はどうしましょうか」

 「この後の処置は任せろ。 お前が犯人ではないこともちゃんと皆に明白する。盗まれたものも戻す。 これで一件落着だ」

 「その……あの人は…」

 「ああ…。 ま、本来ならば軍法会議ものだ。だが、そんなことする軍もすでにない。こうして俺たちが呼び合ってる階級だって本来はとっくになくなってるんだ。 まぁ…少なからずの制裁は与えられると思うが、大丈夫だろ」

 「だ、大丈夫……?」

 「ああ。すこしだけ家族のもとに帰れるのが遅れるだけだ。死にはしないよ」

 「はぁ…」

 それは本当に大丈夫といえるのか?

 まぁ……彼はそれだけの罪を犯したのだ。他の復員船でも銀パエが流行っているとはいえ、彼も立派な加害者。相応の制裁を与え、罪を償って帰ってもらうのが正当だろう。

 「……秋津軍曹」

 「なに? あ……」

 ピンと背を伸ばして、見事にビシリと敬礼する敷島がいた。

 「御苦労だった。 協力感謝する、秋津陸軍整備軍曹」

 フッと微笑んで敬礼する敷島に、秋津も答礼する。

 「…はっ。 御苦労さまです、敷島海軍一曹」

 一人は海軍式、一人は陸軍式の敬礼をし合ったのだった。

 葛城も微かに口元を緩ませて、秋津も気づかない後ろで、スッと静かに敬礼した。



 銀パエ事件が落ち着いて、数週間が経った。

 いよいよ明日には日本、呉の港に到着するといわれた『葛城』艦内では、兵の誰もが明日を楽しみに、早く故国の土を踏みたいという思いがあって、明るかった。

 その艦首の甲板上には、並ぶ二人がいた。座った男と、そのそばに立つ少女。

 「いよいよ明日は……ははは…」

 嬉しくて、つい頬を緩ませてしまう。

 「………」

 その隣では葛城が無表情にただジッと水平線の先を見詰めていた。

 秋津は葛城のほうを見上げたとき、不意に微笑みが消えた。

 彼女の無表情。これはいつものことだ。

 もう慣れている。だけど、何故かその無表情のうちに何かの感情が垣間見えていた。

 いろいろな思いが渦巻いたような、そんな複雑な感情。

 こんなこと、初めて出会ったときは想像もできないほど秋津は葛城の微妙な変化に気づくことができていた。

 それは―――まるで葛城が想いをよせる【彼】のような。

 「……ッ」

 その複雑なうちの絡むひとつを悟る。

 この航海が葛城の最後の航海なのだ。復員輸送を終えれば、彼女に待ち受けるのは解体だけだ。

 そして彼女との別れにもなる。

 「…日本に着いたら、葛城とお別れしなきゃいけないね。寂しいなぁ」

 「……私はそんなことない」

 ばっさりと切られた。

 すこし落ち込むけど、まぁいつものことだ。

 最後まで……優しくしてくれなかったな。

 「もう、素直じゃないんだから」

 「……殺す」

 「ごめんなさい」

 彼女の包丁も定番になったのも慣れてしまった(悲しいことに)。

 そんなやり取りも、もうできなくなるんだなぁとしみじみ思う。

 二人は再び前のほうに見詰めなおした。

 「ねぇ……葛城」

 「…なに」

 「イソップ寓話にある『蟻とキリギリス』って話、知ってる?」

 「……知っている」

 「元々のギリシア語の物語では『蝉と蟻』だったらしいけど、まぁそれはどうでもいいことだね。内容は、働き者の蟻と怠けていたキリギリスの話で、しっかりと備えていた蟻が冬を越せるのに対して、怠けて遊んでいたキリギリスは冬を越せないっていう話さ」

 「……?」

 葛城は彼が何故そんな話をしているのかと理解できず、つい首を傾げて秋津のほうを見る。秋津はずっと前のほうを見詰めたまま続けた。

 「もうひとつ。 蟻には女王蟻と兵隊蟻、働き蟻の三つがいてね。 一匹しかいない女王蟻と、その下にいる兵隊蟻たち。そして大半を占める小さな働き蟻は兵隊蟻に貪られようが、踏み潰されようが、必死に自分たちの巣のために働くんだよねぇ」

 「……なにが言いたいの」

 「…いや別に」

 そう言いながら凝視する葛城のほうに振り向いた秋津の表情は微笑んでいた。

 「……蟻」

 「へ?」

 「…あなたは、蟻?」

 「………」

 しばしの沈黙が降りる。

 聞こえるのは揺れる波の音だけ。

 匂うのは、潮の磯臭い香り。

 肌を撫でるのは、潮風。

 「……そうだね。僕は蟻かな」

 「……あなたは、蟻じゃない」

 「そう言うきみは、人魚かな」

 「……私は人魚ではない。艦魂というひとつの存在。あなたは人間」

 「……人間って言ってもらえるのはどれくらいぶりだろう。嬉しいね……」


 昔は、あの頃は、人間だったら生きていられなかった。

 人の心をもっていたら、殺せない。

 敵を殺すには、人を放棄するしかない。

 兵器になるか?

 兵器にもなれない。

 『人の心』だけでなく、『心』でさえ失う。

 すべてを失うと戦うことさえできない。

 では、何になれという?

 

 あのジャングルの中、見たことがない大きくて赤い蟻たちが泥に倒れた死体に群がっている光景、そんな空白の時間ともいえた雨の中、上官が言っていた言葉。

 

 「よく見ておけっ! 貴様たちは今より人ではなく、この蟻のようになるのだっ! 蟻になれっ! そしてこの牙で戦えっ! 敵を砕けっ! 殺せっ! そうなれば我々は最強の兵隊なりっ!」

 

 あの狂ったように叫んでいた上官の言葉が何故かその場にいた自分たちの中に、スルリと入ってきたのだ。

 あの極限状態にいた中、なにもかもが苦しみが支配していた。

 その瞬間、人を捨てて、蟻となった。


 「まぁ……それでも戦って殺すこともできずに、死ぬこともできずに生き残っちゃったんだけどね」

 「………」

 「でもね……。こうして葛城と会えて、敷島とも会えて、生きてて良かったと思うよ。そして、生きて、人間って言ってもらえて、ようやく人に戻れた気がするよ。 ありがとう」

 「……礼を言われるようなことはしていない。……だが、これでおあいこ」

 「おあいこ?」

 「………」

 「あ…」

 葛城の顔が赤くなっていることに気付いて、思い出す。

 あの銀パエ騒動のとき、倉庫の中で、ネズミに怯えた葛城の姿。

 「あはは…。 そうだね…」

 葛城は再び、秋津のほうに真っ直ぐな視線を向ける。

 「……あなたは人間」

 「……うん」

 やっと優しくしてくれたのかな。

 いや、本当は、彼女は自分にいつも優しくしてくれていた気がする。

 そして今また、優しくしてくれたというより、救われた気分だ。

 うん、そうだ。

 もうすぐお別れだけど、彼女への感謝の気持ちは忘れない。

 これまでの日々を、彼女と過ごした時間は、宝物だ。

 「……ところで」

 「ん?」

 「……なんで私が人魚?」

 「え? いやだって、葛城。あの島にいたとき、泳いでたでしょ」

 「―――!」

 「実は葛城に会う前にさ、僕、すでに葛城を見てたんだよ。最近思い出したんだけどさ。それで、あの時泳いでる葛城を見たとき、まるで人魚だなって――――はっ!」

 「………」

 気づくと、葛城の身体からどす黒いオーラが湧いて出ている。

 「……見たな」

 「え…? あの……葛城、さん…?」

 葛城は泳ぐのが好きだ。

 気分次第で海に飛び込んで優雅に泳いでいるが、その時の自分のスタイルは絶対に相手には、特に異性には見られてはいけない絶対領域なのだ。

 葛城の泳いでいるときの姿は、全裸である。

 それを―――目の前の平和ボケした顔の純粋野郎は見たと言うのである。

 自分の滑らせた口に気づいて、蒼白になる秋津。

 そして怒りの炎を燃やして、ギラリと不気味に輝く包丁と、瞳。

 「ま、待って葛城! 落ち着いて……」

 「……天誅」

 「うわあああああっっっ!!」

 日本を目前にした復員船の甲板上で、騒がしい声と音が響く。

 それは復員兵の一人である、慌ててひとつひとつの描かれる一閃をかわして逃げ回る秋津と、この船の艦魂の少女である、包丁の刃先を一閃一閃斬りかかって追い回す葛城という、二人の姿がそこにあった。

 だけどその二人の表情は、一人は明らかに楽しんでるみたいに明るくて、そして一人は無表情のうちに、わずかに頬を緩めているような―――?

 

 気のせい、かな?


 

 (終)

 

 

葛城「…『私と菊也の愛の水泳教室』」


――本番組(?)は北は樺太、南は台湾、いえいえ電波ジャックをしてでも世界中に報道してやろうじゃないかというある意味テロ的なラジオ番組です――


――(強制)支援は東京、ワシントンDC、北京、モスクワ、艦魂同盟のご提供でお送りします――


葛城「…ようこそ。愛の水泳教室へ。言っておくがこれは決して不健康なけしからん番組ではないことをあらかじめ忠告しておく。もし勘違いして淫らな目的で来た者には容赦ない制裁を与えるから覚悟しろ。死にたくなければそんな輩は即刻去れ。 …これは私と愛する菊也との愛の水泳――」

日向「ちょっとなによこれぇぇっ!!」

伊勢「葛城さんに占拠されてしまったわねぇ」

作者「ごめん、阻止できなかった……」

柱に縛られた三人。

日向「別に最初から馬鹿作者なんかに期待してないわ。 それより葛城ッ! これはいったい何の真似よっ! 本来は私たちの番組なのになに勝手なことしてくれちゃってるのよぉっ! うっ?!」

葛城「…黙れ。 すでに作者からも了承済み。これは正当なものだ」

日向「はぁっ?! なにこのサインッ! 馬鹿作者ぁっ!」

作者「ビクッ! いや、実は一応要望があったので……」

日向「死なすっ!」

作者「へーんだ。お前も縛られてるから動け……ぐほぉっ?! な、なんで!?」

日向「これくらいで私の攻撃を防げるとでも? なめられたものね」

作者「でも逃げはできないわけね……アウチッ!」

日向「その口いっぱいにティッシュ詰めてあげようかしら」

作者「すみません……」

日向「…ところで葛城、さっきから気になってたんだけど、あんたの格好、なによそれっ!」

ちなみに今の葛城の姿は、スクール水着(旧スク水)である。

葛城「……愛の水泳教室なんだから当然のこと」

伊勢「あら、お似合いね。可愛らしいわ」

日向「だからってなにもスク水じゃなくてもいいでしょうがっ! なに? 胸のところに可愛らしい丸っこい文字で『葛城』なんて書いてるのよっ! いちいち細かいわねっ!」

葛城「……菊也はどこ」

日向「無視かよっ!」

作者「あー……三笠は…えーと……」

伊勢「三笠さん、どうかしたんですか? 来てませんけど…」

作者「うん…。 一応呼びかけたんだけど、颯爽と逃げていっちゃったんだよね……。まぁ逃げたくなるのはわかるけど、自分だけずるいよ……」

葛城「……菊也がいない…菊也がいない……」

日向「目、目が…!」

伊勢「あら、これは……」

作者「いつかのヤンデレモードッ!」

日向「ていうか馬鹿作者はヤンデレの意義を勉強したほうがいいと思うのは私だけかしらっ!?」

葛城「…菊也がいなきゃ……私……ブツブツ……」

トントントントン………

作者「ああ…。 なにもない板に包丁を何度も野菜を切るように動かしている……。野菜なんてどこにもないのに…」

伊勢「空鍋に代わる新しいタイプね」

日向「ていうか怖いわよ……」

作者「しかもスク水ヤンデレ……。ふむ…これは……」

日向「とりあえず、おらっ!」

作者「がふぅっ!?」

伊勢「日向、やりすぎよ」

日向「こいつが悪いのよ」

作者「ひぶぅ……」

葛城「……仕方ない」

日向「葛城?」

葛城「…代理を連れてきた」

秋津「な、なにここ? 僕、なんでこんなところにいるのっ?!」

日向「って、誰よあんたっ!」

秋津「あ、初めまして…。僕、陸軍の軍曹で、秋津……」

葛城「…さっさと来い」

秋津「なんかいきなり連行されておまけに水着に着替えさせられたんだけど、これどういう……わぁぁぁぁ」

ズルズルと葛城に引きずられる秋津。

日向「災難ね…。あいつも」

伊勢「というか葛城さん、代理ってそれでいいのかしら?」

葛城「…あなた、泳げる?」

秋津「え? まぁ…カナヅチってわけじゃないよ。でも50メートルくらいかなぁ」

葛城「……十分泳げないほう」

秋津「えっ?! そ、そうかなっ!?」

葛城「…そう。500メートルは最低泳げないとだめ」

秋津「…いや。それはいくらなんでも……。ていうか僕、別に海軍でもないし、陸軍だし……」

葛城「…えい」

トン、とプールのほうに押される秋津。

秋津「ちょ…! うわあああああっっ!!」

ドッボォォォンッ!!

秋津「ぷはっ! い、いきなりなにするんだよっ! 人をプールに落としちゃダメって教わらなかったのかぁっ?!」

葛城「………」

ドッボォーンっ

秋津「ぶばっ!(水が顔にかかる)」

葛城「……では始める」

秋津「……もう勝手にしてよ」

日向「ねえ…。私たちはこうして見てるだけなのかしら」

伊勢「たぶんね」

作者「まぁおとなしく見学しようよ」


葛城「…ではまず、一分間水中に潜れ」

秋津「無理ッ! 殺す気かっ! 僕はギネスの最高記録を目指しているわけじゃないんだぞっ!」

葛城「…教官の命令は絶対。やれ」

秋津「ごぶぅっ!!」

バシャバシャともがくも、無理やり突っ込まれる。



ぷか〜と浮かぶ水死体。


葛城「……次」

秋津「まだやらせる気なのっ!?」

あ、復活した。

葛城「次はクラゲを投入する」

秋津「きみはクラゲに刺された痛みを知らないでしょっ?! クラゲ舐めるなぁぁぁっっ!」

葛城「…これはまだ初級クラス。これの次はサメを投入。ちなみに人食い」

秋津「いきなりハードル上がったような気がするけどっ?! だったら上級はどれだけなのっ! 即断るよっ!」

葛城「…わがまま」

秋津「絶対にそんなことないよ。命に危険があるから言ってるんだよ」


伊勢「三笠さん、逃げて正解でしたね」

日向「あ、断末魔…」

作者「くわばらくわばら……」


秋津「ゼェ…ゼェ…。死ぬかと思った……」

葛城「…冗談はこれくらいにして」

秋津「冗談だったのっ?!」

葛城「…ここからが本番」

秋津「えっ?」


パチャパチャパチャ………


葛城「………」

秋津「………」

葛城が手を引いて、秋津がバタ足で泳ぐという図。

日向「なんかさっきまでとは大分一変したわね…」

伊勢「普通の水泳教室に見られる初心者の微笑ましい練習風景ねぇ」

作者「…恥ずかしそうだね、秋津」

秋津「////(照)」

葛城「………」

秋津「(この年で女の子に手を引かれて泳ぎの練習って、これどんな羞恥プレイ?)」

葛城「…そう、上手」

秋津「…いや。だから僕はこれをやるくらいのカナヅチじゃないって最初に言ったでしょ」

葛城「…基本は大事」

秋津「だからってこれは……」

葛城「…恥ずかしいの?」

秋津「………」

葛城「……わかった」

葛城が手を離した瞬間、不意にすこしだけ寂しそうな表情を一瞬見せる秋津。

秋津「…ッ!」

そんな自分に気づいて水を顔にかける。

バシャバシャッ!

葛城「…どうしたの」

秋津「な、なんでもな―――!」

上目づかいで覗き込む葛城。その肌に纏わりついた雫がキラキラと輝き、そして平均的であろうくらいの実った二つの果実の間がまともに見えた。

葛城「…顔、赤い」

秋津「そ、そそそんなことないよっ! うんっ! あ、もう僕あがるねっ!」

葛城「え…。 ちょっと待……」

逃げるようにプールからあがった秋津を、続いてあがって駆けて追いかけた葛城が後ろから腕を掴んだ。

葛城「まだ私の―――」

ツルッ。

葛城「え――?」


(※)プールで走ってはいけません。


葛城「―――ッ!」

秋津「え? うわっ!」

ドォォォォンッ!

日向「あーあ」

伊勢「転んじゃったわね…」

作者「大丈夫かな二人とも…」


葛城「…ッ。 ……あ」

秋津「いツツ…。 いったぁ……――ッ」

二人で転倒したものだから、仰向けに倒れた秋津の上に葛城が折り重なるような図になってしまった。

秋津「……えっと」

葛城「――――ッ!!」

秋津「ちょ、待…ッ!」


日向「うわぁ…。倒れた相手の上に乗りかかったままぼこぼこに殴りかかってるわ……」

伊勢「目を背けたくなるほどに惨いわねぇ…(ばっちり直視)」

作者「あれじゃもう水泳教室どころじゃないね…」

伊勢「あら、見て二人とも。縄がほどけているわ」

日向「ホントね。いつの間に……。誰がほどいてくれたのかしら?」

大和「私だ」

作者「や、大和ッ!」

神龍「大丈夫ですか?皆さん」

伊勢「あら、神龍もいたのね」

日向「なんでここに?」

神龍「菊也さんに、助けにいってやれって言われまして……。 葛城さん絡みだとお聞きしましたが、なるほど……」

大和「それに次回の外伝作品も告知しておかねばならないだろう?」

作者「助かりますよぉ」

日向「今回の葛城編も無事終わったことだし、次回作はなにかしら」

作者「前にも言ったとおり、噂の雷の話です。短編として今、書き始めたところですよ」

大和「ふむ、駆逐艦『雷』の話か。ということは彼彼女の武士道の物語かね」

作者「そうですね。すでに過去作品として黒鉄先生が書かれた作品もありますが、私も挑戦してみたいと思いまして。すでにずっと前から先生からも承諾していただいていますから、遠慮なく書かせてもらおうかと」

日向「…ってまた私たちの話はお預けっ?! 私の出番はいったいいつになるのよっ! もう他の作品の後書きだけっていうのはうんざりよっ!」

作者「お、落ち着いてください…。近いうちに必ず書きますから……」

伊勢「私たちの話を書くとしたらどのあたりかしら」

作者「やっぱり呉大空襲と解体のあたりでしょう。このときのために本作の神龍では明らかに書かなかったわけだし、だから他の呉大空襲を書いた黒鉄先生の作品は読まないことにしています。読んだらきっと似たような話になってしまうおそれがありますから」

日向「そうね」

作者「まぁ葛城の途中でチハとか書いちゃったけど、無事なんとかこの作品も完結できたわけです。これも読者様や先生がたのおかげですよ。これからも作品を書いていきますのでよろしくお願いします。次回作は雷の話ですので、どうかお楽しみに〜」

大和「では、告知も済んだところで私はスク水姿の葛城にハァハァしてこようかな」

神龍「ちょ……大和さんっ!」

日向「出たわよ、(すこしだけ)世に広めたハァハァ……」

神龍「わっ! あの誰か知らないかたを巻き込みながらお二人で戦いを交え合っていますよっ!」

作者「……次の雷はこんな騒動起こす娘じゃなければいいことを願いつつ。では、皆さんご機嫌よう。ていうかこんなものでごめんなさい〜っ! 愛の水泳教室、面白いネタが思いつきません〜っ!普段から面白いネタなんていつもないんですけどねっ!!」


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