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<A's03> それぞれの家族

学生の試練、期末テストがようやく終わり、久しぶりに執筆投稿できました。

長い間空けてしまい本当に申し訳ありませんでしたっ!実に二週間も空けてました……。


休止状態のようでしたが、ここで再開致します。

では、よろしくお願いします。

 肌を撫でる潮風の生暖かさは変わらない。

 今はどこの海を航海しているのかわかるはずもない。まだ南海なのか、風が生暖かい。

 まだ赤道付近であり、海は蒼という字にふさわしいほどに美しく、水平線の先にある日本はまだ遠い。

 島から乗船して日が経つが、まだこの胃が揺れるような気持ち悪い感覚は慣れない。

 初めての頃よりは随分とマシだが、やはり顔色は優れない。

 海のほうに寄りかかり、グダ〜ッと身体を伸ばして潮風を浴びていた秋津は陸軍下士官服の袖で額の汗を拭った。

 「………?」

 背後に気配を感じて、秋津はゆっくりと顔色が悪い表情で振り返った。

 そこには帝国海軍の夏服である白い第二種軍装をキッチリと着込んだ無機質な瞳を宿した少女、この復員船『葛城』の艦魂である葛城が立っていた。

 「やあ……。また会ったね…」

 あの初めて会った日以来だった。

 葛城の感情が見えない瞳がジッと青い顔で苦笑いする秋津を見据え、またか…というような呆れた雰囲気を僅かに見せていた。

 「あはは…。まだ慣れなくて……」

 「………」

 「な、なに…?」

 葛城の突き刺さるような視線がジッと秋津を見据えたまま。ジロジロと見られる秋津は船酔いとは別に身体がざわめく気分を感じた。

 秋津のだらしなく崩れた姿を舐めるように下から上まで見通して、微かに納得といった雰囲気をかもし出しながら頷いていた。

 「?」

 「…不幸なヒト」

 「???」

 葛城のポツリと漏れた言葉に秋津はますます首を傾げた。

 「ねえ、どういう―――」

 秋津がヨロリと動きながらも目の前に立つ少女に訊ねようとした瞬間、その少女の背後にある鉄の扉が突然開かれた。

 「解員番号×××・秋津衛!」

 突然、秋津と歳が近いような少年がドカドカと現れて、葛城の横を通り過ぎて面を喰らう秋津のもとに足を踏み入れる。

 いかりのマークを付けた帽子を被った、元海軍軍人の主計科兵であった。

 ちなみに解員というのは復員兵のことである。戦地から復員船に乗船した兵を復員兵というのだが、帝国海軍では解員と呼んでいた。

 「な、なんでありますかっ?」

 軍隊の頃に戻った口調で反応する陸軍軍人に、切羽詰った形層で迫る海軍軍人という光景はおかしなものだった。

 「おかの口調で喋るなっ!」

 「は、はっ! も、申し訳ありません…!」

 「お前に主計科長がお呼びだ。至急来られたし」

 「は、はぁ…?」

 ただ流されるままになっている秋津を、葛城はただ細めた瞳で見詰めていた。

 「………」

 「――?」

 秋津は不意に目の前に立つ主計科兵の後ろでなにかを伝えようとしているかのようにジッと見詰めてくる葛城を見つけた。

 葛城の口が小さく動く。

 「な、なに言ってるの……?」

 彼女はまだ出会ってからこれで二度目だが、外見からでもあまり言葉を話さない、そして声が小さいタイプの人間かんこんだと思っている。

 だから秋津は葛城のなにか言葉を紡いでいるかのような口の動きを凝視する。

 それをまるでモールス信号を読み上げるように、ひとつひとつの動きを見て読み上げた。


 ―――ニ・ゲ・テ。


 「えっ?!」

 それ以降、葛城の口は閉じたままだった。

 いちいちおかしな反応をする秋津を訝しげに見詰めていた主計科兵はじれったいという風に秋津の腕を掴んで強引に立たせようとした。

 「立てッ!」

 「ちょ…! …ッ」

 強引に動かされたせいで治っていない船酔いが身体の奥底からぐっとこみ上げてきた。視界がかすみ、グラリと傾く。

 「船酔いか? それでも日本男児か。情けない…」

 自分は別に船乗りでもないし海軍軍人でもない。陸で戦う兵隊だ。…いや、元々は航空機の整備兵なのだが。第一海軍軍人だって最初は慣れない艦に乗って船酔いと戦うくせに偉そうな口だ、と秋津は毒を吐く余裕も根性もなかった。


 パシッ!


 「…ッ?」

 傾いた身体を支えるように自分の手首がなにかに掴まれた。

 かすむ視界に写ったのは、少女の無機質で、しかし吸い込まれるような漆黒の瞳。

 ――倒れそうになった自分の手首をまた掴んでくれた、葛城だった。

 不自然な格好で静止した秋津を訝しげに見詰め、主計科兵が彼を引っ張り出そうと手を伸ばした。

 「――ッ!? ぐ、あっ?!」

 と、突然彼は見えないなにかに足をすくわれ、そのまま見事に後頭部を床に強打して転倒した。なにが起こったのか理解できぬまま、ただ悶絶している彼を置いて、呆気に取られている秋津の手を引いた葛城が駆け出す。

 「…こっち」

 「ちょっと待…っ うわ…!」

 倒れて悶絶する一人を置き去りにして、二人は艦内の廊下を走りぬけた。

 

 しばらく走った後、角を曲がり、葛城は追手が来ていないか確認した。追手がいないことに安全を確かめた葛城は秋津のほうに振り返った。秋津は壁に背を預けて息を切らしている。

 「ハァ…ハァ……」

 すこし走ったくらいで息があがるとは情けない、といつもの葛城なら思うだろう。しかし秋津のその表情は本当に青かった。

 「………」

 葛城の凝視する視線に気付いた秋津は無理をしたような笑みを浮かべる。しかしその顔の青さは隠し切れず、玉の汗がぷつぷつと浮かんでいる。

 「な、なんだったんだろ……。いきなり……。ねえ、葛城」

 「………」

 「…あ。葛城、だよね。この船がたしか『葛城』っていうし、艦魂である君の名前も葛城でしょ? 前に会ったときも君がそう教えてくれたし」

 「…そう」

 「じゃ、葛城。…君、なにか知ってるよね?なんで僕がこんな目に合わなくちゃいけないの?」

 葛城は不安に浮かべる彼の気の毒な表情を無機質な瞳で見詰め、小さく溜息を吐いた。

 やれやれ。面倒なことになりそう。

 そんな声が聞こえるかのような落胆した溜息を吐いた葛城は、船酔いから脱することができない陸軍軍人に向かって淡々と説明を始めた。

 

 

 一通り説明を終えた葛城の目の前には、葛城の説明を聞き終えてさらに落ち込んだ表情をした秋津が、葛城のそれよりもっと深い溜息を吐いて自分の不幸さを呪った。

 「…僕が泥棒ってわけ?」

 「…あくまで容疑者としてあなたは追われている」

 「どっちも同じだよ…。はぁ。海軍さん勘弁してほしいなぁ」

 額に手を当てて「はぁぁぁ」と長い溜息を吐く秋津を葛城はただ無表情に見詰めていた。

 「それで。僕はどうすればいいのかな」

 「………」

 「…あ、うん。何故私に聞く?って顔だね」

 秋津は苦笑してから、続けた。

 「せっかく戦地から日本に帰れるっていうのにこれはあんまりだ。ここは海の上。逃げるところはなし。この広い艦の中限定だ。さっき、葛城は僕を助けてくれたし、頼りになるのは君だけなんだ。情けないかもしれないけど、僕一人でこれを乗り切れるかどうか不安だ。もちろん僕はそんなことしてないけど、もし捕まれば絶対に尋問されて酷い目に合わされるだろうし…。…ねえ。なにかないかな?」

 秋津はチラリと上目遣いで葛城を見た。葛城は秋津をジッと見下ろし、ゆっくりと胸の高さまでグーの手を上げて、人差し指から一本一本指を立て始めた。

 「…あなたの選択肢はこれから述べるとおり。 一、容疑を認め出頭する。二、濡れ衣と主張して出頭する。三、容疑を認めるが故に逃走する。四、濡れ衣を主張しつつ逃走する」

 なんだかどの選択肢も嫌なルートばかりだ。まず一と二は死亡フラグ。三も断固否定する。自分が選ぶのはただ一つだけ。四である。…四は四で不吉な数字だが。この際深く考えないでおこう。

 「……四番目のほうを選ぶよ」

 「四、濡れ衣を主張しつつ逃走する。…では、あなたはこの選択肢に従い行動することとする」

 「…もちろんそのつもりだよ。……でも、ここ以外は逃げられない。いくらここが広くても…」

 「………」

 落ち込む秋津を見下ろしながら、葛城はスッと立ち上がった。

 立ち上がった葛城を、秋津が見上げ、二人の視線が合った。

 秋津の瞳にはまるで光が射しているかのような光景の中で葛城の無表情の中の強い威厳がこもった瞳が映り、葛城の瞳には見上げる秋津の純粋に揺れる丸い瞳が映る。

 「……付いてきて」

 「あ…」

 葛城はそう述べると背を向いて歩き出した。秋津はカツ、カツと靴音を鳴らして歩んでいく葛城の背を見詰め続け、肩にかかる程度に切りそろえた黒髪が潮風に揺られて彼女は踵を返した。

 「早く」

 「あ、うん…!」

 秋津は急いで立ち上がり、葛城のそばまで駆け寄ると、秋津が葛城のすぐそばを付いていく感じで二人は艦内へと消えていった。


 

 「逃がしたぁ?」

 図体が大きくてごつい体つきをした主計科長が苦々しく舌を滑らせた。まるで調理が失敗した味見をしたかのような表情だった。

 そんな大男といえるほどの彼の前で、未だに痛む頭痛を抑えた若い主計科兵が直立不動で立って「はい…」と弱々しい声で答えた。

 図体が大きい彼と向かい合っているからか、とても小さく見える。

 主計科長は「ふんっ」と荒い鼻息を鳴らし、懐から出した煙草を取り出し、それを口にかじりつくように咥えて、その先端にマッチの火を付けた。

 紫煙を漂わせて、ギロリと小さい彼を睨んだ。

 「泥棒を逃がすとはなんという馬鹿な」

 「………」

 紫煙を噴き出し、指に挟んだ煙草をビッと彼の眼前に突き出した。

 「いいか。必ず捕まえて泥を吐かせ、盗まれたモンを取り戻せ。それまで貴様も飯抜きだということを忘れるな」

 「……了解しました」

 「さっさと見つけ出して捕まえろ。相手は陸軍の兵隊だから遠慮もいらん」

 「………」

 鼻に煙草の匂いが漂う。

 ピクリと眉を微かに寄せた。

 「さっさと行け」

 そして、ある感情を押し殺し、見事な踵を揃えて敬礼してから、彼は立ち去った。 

 彼が立ち去る背後で、紫煙を鼻の穴から吹かしてジッと細めた瞳で背中を見詰める主計科長がまた荒い鼻息を鳴らしたと同時に、紫煙が鼻の穴から漏れた。


 

 『葛城』は元々帝国海軍が温存してきた中型空母であったため、軍艦や民間船舶、米軍から貸与された船舶等を含めた復員輸送に従事する復員船の中では最大の大きさを誇っている。さらに武装は撤去され、日本人を収容するためのスペースが新たに設けられ、最大の船を生かした構造となっている。

 空間にぽつりと光の玉が現れ、それが瞬時に眩く光りだした。そして光の中から少女が降り立ち、同時に少年がドスッ!と音を立てて尻餅を付いた。

 「いった!」

 頭をすこし振って黒髪を揺らす彼女の背後で、秋津は強打したお尻を撫でながらフラリと立ち上がった。

 艦魂の能力のひとつである、本体である艦内ならば自由にどこにでも瞬間移動できるという力によって葛城とともに光に飲まれた経験をしたが、一瞬の出来事だった。

 とりあえず自分はどこにいるのだろうか、と部屋を見渡す。

 「いててて……。ここ、どこ…?」

 秋津は部屋の中を見回した。殺風景な部屋で、小さい。ずっと使われていない部屋――いや。人一人暮らすには十分すぎる広さ。そして微かに感じる人の気配。この部屋がある一人によって使われているのは感じ取ってわかることができた。

 「ここは……葛城の?」

 秋津は葛城のほうを見るが、葛城はまるで無視しているかのように反応皆無で目線を向けることさえなかった。

 ただベッドのほうに歩み寄り、柔らかい布団に腰を下ろして座り込んだ。

 ベッドに腰を下ろした葛城の前に立つ秋津。

 葛城は秋津のほうに見上げることもなく、ただ前を見詰めたまま口を開いた。

 「…ここは私の部屋。ずっと私以外に使われていない忘れ去られた空間。誰も来ない…」

 「…か、隠れ家にはいいね」

 何故葛城が自分をここまで連れてきたのか理解する秋津だった。

 「………」

 秋津は改めて殺風景な部屋を見渡した。ベッド以外になにもない部屋。本当に寝るためだけに存在しているかのようだ。

 四角形の空間の中にベッドがひとつ。

 秋津は色々と考えてとある問題がいくつか浮上した。ここで過ごすといっても日本まではまだ数ヶ月は掛かる。その間ずっとここに隠れているというのも無理そうな話だ。結構今後のことを考えれば課題だらけである。 

 あとひとつだけ引っかかるところがあるのだが気にしないでおこう。

 ちょっと赤面する秋津だったが、ふと視線を泳がした。

 そしてベッドの片隅にあった写真立てを見つけた。

 「……これは」

 「…!」

 葛城は、秋津が写真立てを手に持って額にはまった写真を眺めている光景を目のあたりにした。

 秋津が眺める写真。そこには三人の姉妹が写っていた。

 二つの巻き毛を巻いた少女と、中央には一番活気の良さそうな女の子に抱きつかれてすこし不機嫌に眉間を寄せている葛城という、三人の少女が写った微笑ましい写真であった。

 背景は海と空。どこかの甲板で撮ったものなのだろう。見る限りこの少女たちは姉妹に見えた。

 中央にいる葛城は右隣にいる満面な笑顔を輝かせてピースしている少女に抱きつかれ、無表情なうちの中ですこしだけ嫌な顔をしている。そんな二人の妹をそばで微笑んでいるおとしやかな少女が彼女たちの姉なのだというのがよくわかる。

 「これ、葛城のお姉さんたち…?」

 秋津は写真のことを尋ねようと振り向いたが、そこにいつの間にか彼女はいなかった。

 「あれ……?」

 秋津はただ一人、その小さな部屋で残されるように立っていた。そして再び、秋津は自分の手にある写真に写る仲の良さそうなのか微笑ましい姉妹たちの姿を眺めた。


 

 葛城は一人で目を床に落としながら艦内の廊下を歩いていた。

 「………」

 何故、自分は逃げたのだろう―――?

 写真にはもう取り戻すことは永遠にできない光があった。かつて帝国海軍の未来の空母として希望を託された雲龍型航空母艦の姉妹、長女の一番艦『雲龍うんりゅう』の艦魂、雲龍と、二番艦である次女の天城。そして三女の自分(他にも妹たちはいたがどれも完成には間に合わなかった)。

 短い間に過ごした姉妹だけの日常を唯一記録した写真。長女の雲龍は輸送任務の途中で敵潜水艦の雷撃に遭遇して戦没し、姉の天城も自分が大怪我を負った呉大空襲で転覆し、ある意味艦生を終えたも同然であった。姉の天城はその場を動くことが出来ず、ただ息をして生きているという、あるいは仮死状態といえるかもしれない、残酷な現実であった。

 姉妹の中や龍鳳を含めた空母たちの中で一番元気が有り余っていた姉は、今は見るも無残な姿となって日本に残っている。いつ解体されてもおかしくない状況だが……。

 姉妹の中でも自分一人だけがこうして無事に生き残っている。

 そんな現実が再び胸を苦しくする。

 「……ッ」

 葛城はきゅっと自分の胸をおさえた。

 だが自分は生き残った者の義務としてこの日本人輸送任務に従事してきた。生き永らえた者として最善のことをしているつもりだ。これで同胞たちを日本に帰すことができる。そしてこれが終わったら、自分も役目を終えて姉たちに続いて逝くことができる。

 それまでの、―――辛抱。

 そして、―――約束。

 あのとき、彼と交わした、最後まで『生きる約束』。

 自分は生きて生き抜き、そして全うする。

 もう取り戻すことはできない過去。未来を生きる現在いまの自分。

 いまの自分はなにをしている?

 頭の中に、さっきの一人の少年が思い浮かぶ。

 葛城はその場から、光とともに消えていった。



 小さな部屋で一人残された秋津はベッドに腰を下ろし、三人の少女が写った幸せそうな写真を見詰めていた。

 写真の中に写る三人娘の中の一人は明らかに葛城だ。今と全然変わらない。―――いや、初めて見る唯一の表情だ。身内に囲まれた彼女は今とは違う。その頃はきっともっと表情はあったのだろう。

 先の戦争で日本は多くの艦艇を失い、戦争の終わる頃には帝国海軍の戦力は無きに等しかったと聞いている。自分のように南の孤島で戦いに励み、戦争の前半は帝国海軍の艦隊もよく支援に来てくれていたが、戦況が悪化し、いつしか支援の艦隊も無くなり、実際に海軍の支援も受けられないままに孤立した最中で死ぬ思いで戦った。

 戦争によって大半が沈んでしまった日本の艦艇。そしてその艦艇に宿る少女も散っていったことになる。彼女もまた、自らの姉妹や仲間をこれまでに失ってきたのだろう。

 もしかしたらこの写真に写っている少女たちも、今はもういないのかもしれない。

 ……そう。自分と出会うまで、葛城は、彼女は一人ぼっちだったのだ。

 「悪いこと、聞いちゃったかな……」

 自分をここにかくまってくれた彼女はどこかに行ってしまった。彼女が帰ってくるまで、自分はここで待たなければならない。

 秋津は申し訳ない気持ちに浸り、謝りたい思いだった。

 しかし、葛城は帰ってこなかった。

 秋津はそっと、姉妹の写真がはまった写真立てをベッドの片隅、元の位置に戻した。

 自分にも家族はいる。

 東北地方出身の彼の実家は代々受け継ぐ農家であった。街からは遠く離れたなにもない田舎。自分も小さい頃からはよく父の畑仕事を手伝わされたものだった。そしてまた自分も家を継ぐはずだった。農業科の大学に入学した矢先、学徒動員で大学生活も僅か数ヶ月で幕を閉めて戦場に送り込まれた。

 家には父と母や兄弟たちがいる。冬の時期は何十センチという雪が積もるのでこの時期は心配であった。父はもう歳だし、畑仕事や雪かきはそろそろキツイ頃合のはずだ。

 早く帰って、色々と手伝ってやりたい。

 そう思うこと、そして生きて帰ることが最大の親孝行だと思っていた。

 家族への想いは、家族を持つ者なら誰しも同じであろう。秋津はそう信じていた。

 戦争で多くの仲間や家族を失った葛城の気持ちは、誰が全部わかるものではない。――自分も、あの戦場で仲間を失い、一人だけ生き残った……。

 ふと懐から古びたお守りを抜き取った。出征直前に母親から譲り受けたものだったが、それが今でも自分を護ってくれている気がした。

 自分が唯一、家族を想えるものが、このお守りだった。

 そして、彼女にとって写真が、家族を想えるものなのかもしれない。

 「どうすっかな……」

 秋津は今起きている自分への不幸を思い出し、本当に無事帰れるのだろうかと思ってベッドに背中を倒した。

 「はぁ…」

 深い溜息を吐き、不意に布団からのいい匂いに気付きながら、秋津はまだ残っていた船酔いとどっと出た疲れによって意識が遠くのを感じた。

逃亡生活スタートです(笑)

う〜ん……。なんだか書いていて思ったんですけど、正直言って不安ですね。いや、前から思ってたことなんですけど。これ、戦うシーンも特にないし、あまり皆様に楽しめないかなぁと考えてしまったり。

でも頑張って頭を捻り、最後まで書いていきたいです。なので見捨てないでくださいね。

突然変なこと言ってすみません…。

では。いつになるか相変わらず不明ですが、また次回に。

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