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夜の部屋
チク、タク、チク、タク。
草木も眠る丑三つ時。暗闇に閉ざされたその部屋は、時計の針が時を刻む音が響いていた。
部屋の中心に置かれたベッドには、少女が一人、横たわっている。瞳を閉じて静かに寝息をたてる彼女を、“私”は微動だにせずに見つめていた。
ふと、なにかに気付いたように彼女はその瞳をゆっくりと開く。まだ半分夢の世界に浸かっているのだろう。重たそうな瞼を擦る様は、さながら小動物のそれだった。
なんて可愛いらしいのだろう
寝返りを打って再び夢の世界へと沈んでいった彼女を見て、私はそんな気持ちで心が満たされていくのを感じた。
彼女の行動、表情、そのすべてが、私の目には愛らしく映る。
「ああ、愛しい」
感嘆のため息と共に、そんな言葉が私の口からこぼれ落ちた。慌てて口を塞いだが、幸い彼女は夢の世界から顔を出すことはなかった。
ほっと胸を撫で下ろしながら、私は口元に笑みを浮かべる。
『おやすみ、るりちゃん』
今度は、声には出さずに口だけを動かして。
愛しい彼女の姿を目に焼き付けながら、私はその扉を閉めた。
部屋は、静寂に包まれた。