第2話
「貴方が如月 明でしょうか?」
さて……どうするか。
ここで、僕がそうですっ!…なんて言えるわけないだろう。絶対に死ぬ。このオークに殺される。
ならば…俺が言うことは一つ、
「いいえ、違います」
これが正しい応えだ。間違いない。
つかこう応じる以外にどうしろと?
「……ふむ」
俺の言葉にオークは顎に手を当てて、何かを始めた。
……アレ?意外と知性的?
少しの間、思案に耽っていたオークだが、ふと何かあることに気づいたのか、おもむろに自身が履いているズボンのポケットの中に手をつっこんだ。
そして、その中から一枚の紙……人が写った写真を取り出した。
「しかし、如月 明はこの写真の者だとお聴きしたのですが?」
その写真には、俺の姿がはっきりと写っていた。
いやー……写真撮られちゃってたかー…
「あのー…人違いだとか、そもそも写真に撮った人が間違いだとかは…?」
「いいえ、間違いでは無いと思うのですが?この写真は貴方の知人から戴いた物ですので」
誰だよモンスターと知り合いの写真渡してるやつ。つかなんでオークの存在を受け入れれてるんだよ。
あ、いやでも…目の前で実際見れば受け入れざるを得ないか…
いよいよ万事休すとなった俺は、ゆっくり後ずさっていく。
……いやもう、普通に逃げよう。
ゆっくりとだが、確実にオークと距離を置いていく。
「おや?」
やっべ!?
オークから少しずつ距離を離していくのがバレてしまう。
そんな俺の行動にオークは、一瞬、不思議そうな顔をした後、はっ!…と察したような顔をした。
そして、ズボンに手を突っ込み、中から懐中時計を取り出した。
「おやおや……もうこんな時間ですか」
時計の時間を確認しながらオークは言葉を吐く。
そしてのそのそと歩いて近づいてきた。
やばい!やられる!
……と、思った矢先。目の前で立ち止まったオークは、またもやズボンに手を突っ込んだ。
そしてその中から写真ではなく別の紙切れを取り出し、それを俺に差し出してきた。
「こちら事務所の名刺となっておりますので、何かあったらご連絡下さい」
「あ、ご丁寧にどうも…」
名刺貰った。
つか事務所って何?
「本日はこのような時間にご挨拶に伺わせていただきまして、申し訳ございません。また後日、お伺いさせていただきます」
一礼した後、オークは優雅に去っていった。
え?いやマジでなんだったの?
俺の手にある戴いた名刺には『探偵社 玄帝』とその下に恐らくオークの名前であろう文字が書いてある。
……あ、あの人黒沢さんって言うんだ。