1
拝啓お母様、お父様。
……あと糞食らえな妹様。
本日中に、死んでしまうかもしれません。
比喩なんかではありません。
本気でそう思っているからです。
はぁ……
「ふしゅるるるるるる…」
時計の針は1時を超えている。すっかり日は落ち、この時間帯のため周囲の家もすっかり寝静まっているだろう、光が付いていない。電灯の光のみが辺りを明るくする。
そして、その光が目の前の脅威を照らす。
「ふしゅるるるるぅ…」
豚だ。
目の前にいるのはまぎれもない豚だ。
厳密に言えば異世界物語の世界で良く現れるであろうモンスター、豚だ。
そう、オークだ。
……因みに言っておくが、俺は普通の高校生だ。特殊な力を持っているわけでも、魔法を使えるわけでもない、ただの人間だ。
…だからこういう時にどうするかなんて知らない。
マジヤバくね。
この俺の貧相なボキャブラリーからは、これ以上の言葉が思い浮かばない。
……
………
つかさ、これ、俺の知り合いが会わなくちゃいけないシチュエーションなんじゃね?
ほら、よくある現代バトルアニメとか?こういうシチュエーションでなんかあってから能力に目覚めーの、敵倒しーのするもんじゃん…
俺じゃないだろ?どう考えたってこのポジションは俺じゃない気がする……
あー!もしかして黒幕さんが殺しにくる対象間違えたとかー!あるよね、あるある!
『貴方が如月 明か?』
先ほどまで目の前で呼吸をするだけだった豚の口から、唐突に俺の名前が出てきた。
あー…目当ては俺だったかー…
死にたくないなー…ははは…