表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/200

16-137.私、読めますよ

 

 ――!?

 

 リムが折った羊皮紙には()()があった。四隅に少しだけ書かれていた文様が折り目できちんと合わさり、それぞれが文字の(てい)を成している。無論、ヒロにはこの世界の古語は読めなかったが、各々の断片がきちんと繋がって、一つの文字になっていることは分かった。


 表面とは違って、裏面は、折り紙の折り目や閉じ合わせた辺同士が露わになり、お世辞にも綺麗とはいえない。だが、それこそが石板の謎を解く鍵だったのだと一同は息を飲んだ。


「これでよい筈ですよ。昔は手紙を折り型にして送るなんて普通でしたから」


 リムの説明を聞いたヒロはハート型の羊皮紙を手に取った。


「リム、折るのは良いにしてもだ。何故ハートだと思ったんだ? 折り形なんて沢山あるだろうに」

「さっき、エルテさんが箱を開けたときに手の甲に浮かび上がった魔法印がハートだったからですけど」


 リムの答えにエルテがはっとした表情を見せた。思わず左手の甲に右手の人差し指を当ててなぞる。呪文を唱えていたのか、先程と同じハート型の印が彼女の白い肌に浮かんだ。


「ヒロさんには前にお伝えしましたけど、この魔法印はラクシス家当主の証。代々、受け継がれてきたものです。なぜこの形(ハート)だったのかようやく分かりましたわ」


 エルテが感慨深そうな表情で、ヒロに折った写しを見せて欲しいと手を伸ばした。ヒロは静かに頷いて手渡す。


 エルテは、ハート型の写しに書かれた文字をじっと観察していたが、やがて小さく首を振った。


「これは……、シャル、読めますか?」


 エルテがシャロームを見やる。シャロームはちょっと失礼というとエルテからハート型の写しを受け取り、じっと見つめた。が、目を閉じてふぅと一息ついた。


「エルテ、申し訳ありませんが、私では読めません。こんな文字は見たことがない。知り合いの学者に見せてもよいですが、あまり期待しない方がよいですね」


 シャロームはハート型に折った写しをそっとテーブルに戻した。その顔には落胆の色がありありと浮かんでいた。やっと手掛かりを掴めたと思ったのに、文字自身が読めなくては始まらない。ヒロ達は黙り込んでしまった。一人の精霊を除いて。


「どうしたんですか? 私、読めますよ」


 リムの言葉に一同は目を剥いた。ヒロは読んでみせてくれといって、ハートをリムに渡す。リムは、きょとんとした顔で、鈴の鳴るような声で読み上げた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ