プロローグ
夜の帳も深くなる丑三つ時。
真っ暗な闇の中に一人の男がいた。昼間なら子ども達の声が響くであろう公園で、その男はカツカツと靴を鳴らしながら歩いている。
「困りましたね。明日の仕込みもあるというのにお目当ての方が見つかりません。出来れば今晩中に終わらせてしまいたかったのですが」
やれやれと男は首を振るう。と───、
ヒュン
という風を切る音が男の背後から聞こえてきた。
「………」
男は軽く体をずらしただけであっさりと避けた。
「おやおや。そちらからお出でになってくださるとは、手間が省けました」
嬉しそうに笑う男を尻目に暗闇の中から随時と影の薄い男が現れた。
「お探ししておりました。私は宮部ヨシトと申します」
宮部ヨシトと名乗った男は、とても綺麗な所作で頭を下げた。優しい微笑みは殺伐としたこの空間では異様である。
「………う゛、う゛う゛っ!」
「ああ……怖ろしいのですか? ご安心ください。私、腕はとても良いのですよ? 貴方様の手によって苦しみ死んでいった方々の為に最高のおもてなしをさせていただきます」
宮部はそれはそれは優しく微笑を向けると。
「文字通り、地獄に送って差し上げますのでお迎えの方がいらっしゃるまで心ゆくまでお楽しみください……それでは」
「お仕置きの時間です」
宮部はおもむろに背中に隠してあったモノを取り出す。
そして宮部が取り出したモノを見た男は一瞬固まるとクルリと回り、一目散に逃げ出した。
「おやおや。──逃がしませんよ」
優しい微笑を浮かべる死神が、その後を追うのだった。
●○●○●○●○
「ひぃ、ふぅ、みぃ……。はい、確かに確認しました。依頼料は間違いなく受け取らせていただきますね。倉木さん」
「いや~……。宮部さん、相変わらずの仕事振りですねー。お陰様で私達としては少々張り合いがなくて拍子抜けしますが。まぁ事がスムーズに進むので助かっているのも事実ですし………。しかし、何時もながら見事なお手並みで」
倉木と呼ばれた男は三十代半ばほどの痩せた男だ。倉木は部下が運んでいる人の形をした『何かに』チラッと視線を向ける。
「ふふっ。これも仕事ですからね。お役に立てたようなら良かった……。それでは、私は明日の仕込みがありますのでこの辺で失礼させていただきます。ではまた、何かございましたらご連絡ください」
優雅に一礼をして立ち去る宮部を見送った倉木は宮部の手によってお仕置きされた男を冷めた目で見つめる。
「……お前の私欲で苦しんだ人達にその身で償え。連れて行け」
命じられた部下達はボロボロになった男をどこかに引きずっていく。男は暴れようとしているが宮部によって刻まれた恐怖心に体が固まってしまっていた。
身動きの取れない男は倉木の部下達と共に暗がりへと消えて行った……。それにしても。
「宮部さん。仕置人というよりも始末屋と名乗った方が正しいような………。宮部さんは本当にこの仕事が向いている人だ。────副職でいるのが本当に残念でならない」
倉木はそう呟くと、いつの間にか姿を消していたのだった。
ヨシトが背後から取り出したモノは何だったんでしょうね? [壁]_-)☆
それではまた次回にお会いしましょう。
次回は十六日に投稿予定です。




