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死にざま

「わしらは勝てん」


居並ぶ隊長クラスの怪獣、奥には数百の戦闘員がいる。


魔王の冷たい視線が怪獣達を順に見つめていく。怪獣達は魔王の開口一番の一言に戸惑いを隠せない。


魔王は一瞬寂しげな表情を見せ、静かにその場から消えた。


なんの動きもないまま、しばらくが過ぎた。魔王四天王の一人、ゾーマが魔王に拝謁を求め、許された。

ゾーマは魔界一の怪力と謳われ、ひとたび戦場に姿を現すと敵は恐れ、味方の士気は上がり、ゾーマの戦闘能力は魔王をも凌ぐとも噂されていた。


「超文具戦隊ブンボウガーの動向は?」


魔王は背を向けたまま、眠たげな口調で聞いた。


「え、あ、はい…。ブンボウガーは全員集まり、司令官フデバコにより我等の存在を知り、我等の野望阻止の目的を理解した模様。」


聞いているのかどうかを不安に感じながらもゾーマは続けた。


「鉛筆レッド、消しゴムブルー、ハサミグリーン、分度器イエロー、コンパスピンクの五人戦隊編成でこの五人はそれぞれ社会人として民間企業で働いております。ブンボウガーの本拠地は立川にあり、メンバー全員が立川周辺に住んでおります。戦闘経験がないので武器や戦術などはわかりませんが…」


ありがとう、そう言って報告を遮ると魔王は振り返り、近付き刀を抜いてその切っ先をゾーマの首筋に当てた。

ゾーマは一瞬驚いたが、歴戦のつわもの、すぐに呼吸を整え、キッと魔王を見据えた。


「勝てんのだぞ、それでもやるのか?」


悲しげな魔王の目、


「他に選択肢があるのですか、魔界に帰りますか?魔王様は死が怖いのですか?」


不敵な態度でゾーマは言い放った。魔王の顔色は変わらない。


「怖いわ。死は怖い。勝てない戦でおまえらを死なしてしまうのが恐ろしい」


「笑止!」


ゾーマは大きく笑った。魔王はそれを見て刀を納めた。


「それは他の怪獣達も同じ気持ちかな」


「当然。我等死ぬことよりも、やるべきことを取り上げられることの方が辛い」


魔王はニヤリと笑うと、怪獣達を集めるように指示をした。



「すまなかったな」


全ての怪獣、戦闘員を集め、魔王は謝ると、


「悪いが百パーセント勝てない戦い、我等は大きなシナリオの上で敵として殺される運命だ。だがしかし…、戦うぞ!!!」


わっ、と怪獣達の士気が爆発し、咆哮により地響きが鳴った。


魔王はニヤリと笑い、すぐに冷たく鋭い目で指示を飛ばした。


「第1話、魔族襲来」


東京都市部から少し離れた立川、多摩川沿いの大きな工場の地下には誰も知らない正義の秘密基地があった。


そこに集められた五人の戦士は、ごくごく普通の民間人である。

彼らは魔王から地球侵略を阻止する、超文具戦隊ブンボウガーとなることを決意した。



「刺客を…」


魔王の前にゾーマが現れ、部隊長の怪獣を連れて来た。その怪獣は部隊長最弱ピップだった。


魔王は、「行け」と言いそうなところを必死でとどまった。


(これだ…、大きなシナリオ、物語のセオリーともいうべき運命…。少しづつ強い怪獣を倒してヒーロー達は成長し、絆を高め合う…。させん。そうはさせんぞ)


「待て。」

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