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プロローグ




この世界のとある地域に、ドラゴンが住まう国がある。




ドラゴンという単語から、一般人が想像するのは

とても強く、とても逞しく、とても獰猛で、凶暴な種族。

一般的カテゴリーで分別するならば、魔物に属する生物である。


それら4つの想像は、半分が正しく……そして半分が間違っている。


彼等は確かに頑強であり、なおかつ屈強でもある。

だがしかし……彼等は平時は、別に獰猛でも凶暴でもなんでもない。

体の大きさ自体が、海に生息するホエール種に次ぐ世界第二位の大きさなため

その厳つい顔に体に鱗に……恐怖が優先したイメージが付くのは仕方が無かった。


彼等は、確かに『以前は』ほぼ全生物の敵だった。これは当然といえば当然だ。

何故に好き好んで自分の命を絶つ捕食者と友誼を持たねばならないのか?


故に、彼等に命を狙われる可能性のある生物からは

出会った場合はとにかく逃げる事を諭されていた。

それは獣然り、人然り。




─────さて、突然だが。

冒険者ギルド、と言うのをご存知だろうか?



このドラゴンが住まう国には、全世界の国家から唯一認められ

100年近く経営を存続させている冒険者ギルドが存在する。


時には補修され、時には立て直され。

それでもその冒険者ギルドは、国の民に、旅人に、家族に愛され、存続をしている。


しかし同時に、逆の疑問も存在する。

このようなドラゴンが住まう環境の国に、人が住めるのだろうか?

そして追加要素として、ドラゴンと言う強烈な存在と共存出来るのか?

ヒエラルキーのトップに堂々と君臨するドラゴンの怒りにも触れず

どうやってこの冒険者ギルドは成り立ってきたのか?





「ん……むぅー……あ、ふぁぁぁぁ……」



非常に億劫な感じを出した、麻のドレスと思わしき服を着たスレンダーな美女が階段を静かに踏みしめ、あくびをしながら二階から降りてくる。



「─────おはよう、アルギア。いつもの事だが……眠そうだなぁ」



降りてきた美女の姿を確認し、既に冒険者ギルドの食事場のカウンターに立ち、開店準備を進めている30歳弱と思われる『人間』の男は、その様子に特段反応もせず、引き続き料理の仕込みを始める。



「……むー、おはようだ、お前様。……お前様は一体何故、このように早く……あぁぁぁ~……起きれるのだ」

「アルギアがだらけているだけだろうに……習慣化すればすぐ起きれるようになるぞ。…ところで、ミニアはまだ寝ているのか?」

「あぁ、まあ……生まれて5年もしていない我等の曾孫だ。まだまだ気持ち良さからの抜け出しは未熟なのだろうよ……」

「アルギア……今現在それにとんでもなく未熟なお前が言っちゃ駄目だろ……自称3000年も生きてるエンシェントドラゴンがそれじゃ、他のみんなの将来が不安になってくるんだが」

「なに……朝に弱かろうとも、生きる事には苦労はせんさ」



2人は家族らしい会話を続け、アルギアと呼ばれた美女は

洗顔と容姿端整のため、外の井戸へと向かう。

そして、丁度彼女が出て行ったのと擦れ違い的なように

再び二階から、今度は10歳程に見える少女が降りてきた。



「ん……にゅ……おはようございます、おじじ様……」

「おはよう、ミニア。まだ眠いのなら寝ててもいいんだぞ」

「ぅー……眠いです……。でも、眠いけど……おじじ様達のお手伝い、したいです……」

「ハハハ、良い子だな。今丁度アルギアが井戸に行ったからお前も顔を洗ってきなさい。ほら、手拭いだ」

「ありがとうございましゅ、おじじ様ー」



彼等は皆が皆、いつも通りの日常を開始する。

普段通りの、冒険者ギルド開店前の朝だった。





さて、何故こんなに平穏な空気の場所が

今までドラゴンの被害も蒙らず、存続出来たのか?


簡単な話である。

この国の住民が、9割がドラゴン─────今は基本的に竜族と呼ばれているが

現存している竜族の殆どが、国民として暮らす国だからだ。


世界に存在する全ての竜族が国民として存在し、その庇護を受けてきた冒険者ギルド。






この世界のとある地域に、ドラゴンが住まう国がある。

その名前は











「お、おじじ様ぁー!」

「ん、どうしたミニア。わんこにでも吠えられたか?」

「おばば様が井戸に落ちてしまいましたっ!」

「…………何をやってるんだ、あいつは」




アルギアンス共和国という。

このアルギアンス共和国における最年長の国民は

齢3482歳を誇る『アルギア』という名のエンシェント・ドラゴン。

また国の名前を付けるに当たって参考とされた、強大な力を誇るドラゴンである。

今、井戸に落ちたけど。




この物語は、彼等のギルドの全容を映していく物語である。





「おじじ様ぁー!」

「どうしたぁー!! 縄はしごは持ってきたぞー!!」

「おばば様が井戸の水の中で寝てますーーー!!」

「なんだとぉーーーー!?」




決して、彼等のスットコドッコイな日常を映していく物語ではない。




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