#9
自分の顔だったり、性格だったり…「自信」ある人なんて、あまりいないよね?
…あたしもそう…
まして、環境が環境だから、自分さえ信じられなくなって…
…だけど、こんなあたしでも必要としてくれる人がいて…それが今の彼なの…
と、一息で話して…
自分のカンを信じて、今はオシャレなバーにいる…
…すごく、彼が大人に見える…
あたしの初めてのお酒は、「ファジーネーブル」
全然種類がわからなくて、「とりあえず生」と言ったあたしを、軽く笑って『生もいいけど、女の子におすすめのカクテルがあるから、それにしてみない?』と優しくエスコートしてくれる彼…
あたしはついひねくれた気持ちになり、彼にふざけて言った…
「こうやって何人口説いたんですか?」
『…お前なぁ…確かにここはたまに来るけど、いつも一人だよ連れてきたのも、お前が初めてだ…』
「そうなのいや~モテそうだからさ優しいしね…すごく慣れてる感じだし…」
『あいにく、優しくもないしモテねぇよ(笑)余裕なんかないしさ…だって今だってすごく心臓がドキドキしてるし…ホラね?』
彼に手を引っ張られて、彼の胸に当てられる…
…確かに早い気もするけれど…あまりわからない…
「あまりわかんない」
と言いながら、あたしは彼の正面から隣に座った…
…もちろん手は繋いだまま…
『えっちょおま』
「…なんか近くにいたくなって…」
…あたしには、あたしの中には、黒い生き物がいる…
何もかも手に入れたい…尽きない欲望の様な、黒い仮面…その名前は…"本能"だ…
少し慌てる彼を、冷静に判断するズルイあたし…
彼の代わり?とかじゃなくて「愛されることの気持ちよさ」に気付いてしまった…
彼の好意を裏切りながら、またわかってるのに騙されながら…二人はお互いの暗黙のタイミングで…唇を重ねた…
もう止まらなくなった感情を抑えられず、今日初めて会ったのに…体も重ねてしまった…
…ただ彼は、ひどかった…
最中にも、「彼氏いるのに」「彼氏かわいそう」とか…言ってた…
なら、抱かなきゃいいのに…と思いつつ、目の前の優しさにすがりつく、あたしは汚い女だ…
一度だけの「賭け」は、あたしの「女」の部分を膨らました…
…ごめん…あたしは弱いし、ズルいよ
声も届かない「彼氏」に、心の中で謝って…またあたしは汚れていった…