#4
…頭の中が真っ白だ…
初めての「彼氏」
大事な「彼氏」
あたしの「幸せ」を奪うのは誰?
気づいたら、そこは見慣れない風景だった…
…目が回る…気持ち悪い…
あたしは反射的に吐いた…
何も入ってないから、胃液しか出ない…
…と、そこに走ってきたのは、看護婦だった…
「大丈夫?まだ寝てた方がいいわよ?」
『…てか、なんであたし、こんなとこにいるの?』
…空気が緊張した…
看護婦は言葉を選ぶようにして、思い口を少しずつ開いた…
「…あのね?覚えてないなら、思い出さなくてもいいことなのよ?」
「人はね、すごく辛いことは"忘れる"様にできてるから…」
…要領を得ない…
…イライラする…
あたしはヒステリックに声を荒げた…
『そんなごまかしじゃなくてあたしが知りたいのは何でここにいるのか』
…辛そうな顔をして、看護婦は答えた…
「あなたはね…お家で、手首を切ったの…もう少しで手遅れになるところだったみたいよ?これで満足?」
…信じられなかった…
…あたしが自殺未遂…
…なぜか背中が寒くなって、布団に潜り込んだ…
それでも寒くて、手足が震えて…何か、自分の物じゃない感覚みたい…
…あたしは「彼女」に見られている…
この手足は「彼女」のだ
―そう「理解」した瞬間―
あたしは「イモムシ」になっていた…
…最初は「遊び」感覚でやっていた「リスカ」…
慣れは「痛み」を麻痺させて…あたしは今頃、自分のバカさ加減に気がついた…
そして、声をあげ…泣いた
産まれたての赤子みたいに、全身の力で…
そして泣くだけ泣いたら、少しだけ眠った…
その夜…彼氏がお見舞いにきた…
あたしは精一杯、泣き顔を隠すように、メイクをした…
「…お疲れ」
『ごめんなさい』
「守れなくて、ごめん」
『悪いのはあたしだよ』
「うん…でも知らなかったとはいえ、気付けなかった俺が悪いでも、どうして嘘をついたの?そんなことで嫌うと思った?」
『…あなたみたいに"普通"に育った人には"そんなこと"でしかないかもしれないけれど、あたしには"そんなこと"じゃなかったの嫌われたくなかった怖かったもうこれ以上捨てられるのは、嫌なの』
「…そっか…何か、俺じゃダメみたいだな…ごめんなでも本当に好きだった…」
『あたしなんかほっといてよ死ねば良かったんだ』