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球根  作者: たいしょ~
3/10

#3

手首に刃先を入れる…


「ブツッ」と生肉を切る、嫌な音が頭に鳴る…


だけどあたしは、笑ってる…


もう少しだけ深く入れる…

すぐに赤い血が流れ出る…

こぼれ落ちるのを見ながら「生と死」二つの相反するベクトルが、ちょうど等しくなる瞬間がある…



そう、完全な「ゼロ」だ…


「こんなのじゃ死なない」って気持ちと、「このまま死にたい」気持ちのちょうど真ん中に「それ」はあるんだ…




いつしか自分でもわからなくなっていた…


あたしは「あたし」をどうして傷つけるんだろう?


誰よりも強くないし、傷つきたくなんかないのに…



言うなれば、もう「クセ」だろう…


爪を噛むとか、髪をいじるとかと変わらない「日常」になっていた…



…また、包帯買わなきゃ…



ある日、あたしには彼氏ができた…



すごくいいヤツで、こんなあたしでも好きでいてくれるんだ


あたしの「ヒーロー」


あたしだけの「ヒーロー」


ただ嫌われたくないあたしは、「家庭」のことも「リスカ」のことも言えずにいたんだ…


学校も違うから、バレないって思っていたし…



何度目かのデートの時、嫌な同級生に会ってしまった…


あたしは、気付かれないように下を向いて、離れようとしたのに…彼氏があたしを呼んだ瞬間に気づかれてしまったんだ…



「〇〇じゃん?…彼氏?」『一応ね用事あるから…』


「ふ~ん…であの彼氏は知ってるの?」


『そんなのあんたに関係ないじゃん』


「…確かに関係ないね…(笑)」



何とか気にする彼氏をごまかして、その場はうまく切り抜けた…つもりだった…



その日の夜、彼氏から電話が来た…


「もしもし…〇〇?」


『うん今日会ったばかりなのにどうしたの?』


「…何か俺に隠し事してない?」


『…えっしてるわけないじゃん?』


「信じていいの?」


『疑うつもりなの?』


「いや…そういうんじゃないけどさ…お前の学校のヤツから色々聞かされてさ…」


『えっ何を』


「いや…くだらない噂だと思うからいいや…お前に疑われたくもないしね」


『気になるな~どんな噂?』


「いや…お前がリスカしてるとか、家庭がめちゃくちゃだとか…くだらないだろ?」



…ヤバい…誰が?…アイツしか考えられない…


「どうした?声が遠いよ?」


『…ちょっと疲れたから、今日は寝るね』


「わかったあまり気にするなよ?俺が守るから」

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