#10
あたしの中の小さな女の子…
泣き虫で、弱くて、甘えたがりで…
今、思えばそれが「良心」だったのかなぁ?
一度、クセがついてしまうと止まらない…
欲望なんていくらでも大きくなるし…
男なんてみんな「バカ」に見えた…
「体」を預けておけば、みんな優しくしてくれる…
家になんて、いたくなかったあたしは「自分」を使い、渡り歩いた…
…そう、まるで波に舞うハンカチみたいに、揺れて、流されて…
…ワガママにもなった…
どうしても「彼氏たち」が捕まらないと、街に出て獲物を探した…
埋められるなら、誰でもよかった…
退屈もスキマも…
そして、おとなしかったあたしは、どんどん派手になっていった…
慣れない化粧をして、街に立つ…
まるで「コールガール」だ…
化粧は演じるための「スイッチ」だ…
本当のあたしは、小さくて臆病だから…
紅をひいたその瞬間から、あたしはただのパイロットになる…
「あたし」という入れ物を操るためのね…
でもそんな「幸せ」な時間も長くは続かなかった…
…そう、子どもができてしまったんだ…
…生理がこない…
あたしくらいの歳だって、容易に想像はつく…
あたしは、街はずれのドラッグストアで検査役を買って、そこのトイレで調べた…
「何かの間違いでありますように…」
…神様と時間は、どんな人間にも平等で…無慈悲だ…
「おめでた」なのに「残念」な気持ちになり、あたしは自分の惨めさが滑稽になり…笑った…
その時期に関係をもったのは、一人だけ…
その夜、早速その彼氏に相談に行った…
「ねぇできたんだけど」
『はぁ?ナニが?…ってまさか』
「…子ども…」
『…マジかよ~』
「産むつもりはないから、お金ちょうだい」
『…って証拠は?俺の子どもじゃないかもしれないじゃん?』
「いや、あんたしかいないし」
『…信じられないな…だって、今日だってかなり久しぶりだろ証拠だってないしさ…騙して金を取ろうとしてるんだろとりあえず帰れよ』
「…帰れるわけないじゃんその時期はあんたとしかしてないし、あんたしかいないんだから」
『…マジ、めんどくせぇよお前…たかだか何回かしただけなのによマジでウザいから帰ってくれない?』
…「バカ」なのは男だけじゃなくて、あたしもだった…
あたしは野良猫みたいに、路地裏で泣いた…