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◎第47話◎ 第一駐車場

 

 加奈子や加藤さん、三橋さん達はどこにいるんだろう…

 各自、お土産として旅館から少し離れた商店街に来ていた。ここは旅館の人にお勧めしてもらっただけに色んなお土産があり、楽しいお買い物ができたんだけど……


 途中ではぐれてしまったのか、いつの間にか1人になっていた

 そして、携帯で加奈子に連絡をすると加奈子達は固まっているらしく、駐車場で待っていると言っていた


 私はお会計を済ませ、加奈子が言っていた駐車場へと向かう

 時間的にはまだ余裕がある。今日の夜に家に着けばいいから。

 私はお土産を持って、車を止めている駐車場に着くと私の車はあった。

 だけど、中にはだれも乗っておらず、周りにも誰もいない


「どうしたのかしら…場所間違えた?」


 ちょっとした不安を持ちながらも自分の持っているカギで開けてみるとガチャという音とともにドアが開く。ということは私は間違っていない

 もしかすると加奈子達が間違っているのかもしれないと思い、携帯で加奈子に電話を掛ける


 数回コールが鳴り、ようやく加奈子が出たと思うと向こうは何やら盛り上がっていた


「加奈子?どこにいるの?」

「あ~美穂?今どこらへん?」

「今、車の所にいるわよ。加奈子、場所間違えてない?」

「あ~………」


 少しの沈黙の後、加奈子がおかしなことを言い始めた


「ごめん、私たちもう帰ってる途中なのよ」

「え?」

「ごめんね、美穂。ちょ~っと知り合いに会っちゃって、話をしていたら同じ帰り道って言うからつい乗せて~って」

「え?でも」

「ほんっとごめん!あ、理恵先輩も紗代さんもいるから安心して!ほんっとごめんね、美穂」

「あ、うん…それはもう良いんだけど…本当に大丈夫なの?」

「ん?あ~大丈夫だよ。皆乗ってるし。あ、ちょっと相手の人に代わるね」


 すでに加奈子達は車に乗っているのか、音楽が流れていて、加奈子からおそらく車に乗せてもらっている知り合いの人に代わる


「あ、すみません。えっとじゅ…じゃなくて、加奈子さんの知り合いの豊臣です」

「あ、はい」

「ほんとすみません。つい意気投合してしまって。えっと…そのそちらは大丈夫でしょうか?」

「え、ええ。こっちは車もあるから1人でも大丈夫ですよ。すみません、何か加奈子がお世話になってしまって」

「いえいえ、こっちこそすみません」


 相手の子は声からして若そうな感じがする

 でも、しっかりしているのか礼儀正しくて声からしても良い人らしい


「えっと…あと本当に申し訳ないんですけど……」

「はい?」

「その~…つい、加奈子さん達と盛り上がってしまって…ほんと恥ずかしいんですけど、友達を1人そこの近くの駐車場に置いてけぼりにしてしまったんですよ…」

「え?」

「そのぉ…できればそいつを拾って…あ、すみません!無理ですよね、ほんっとすみません!」

「え、あ、大丈夫です。でもえっと…その…」

「あ~すみません、男なんですよ…あ、でも、ほんっとバカで小心者なので手は出しません。絶対!信用できる奴なので」

「え、でも…」


 知らない男性を乗せるなんて怖いに決まっている…

 向こうもそれを分かっていて申し訳なさそうに言っているのだけれど、さすがの私も知らない男性と車の中を過ごすのは無理だ

 しかし、ここの場所に置いてけぼりにされている子も可哀そうだ。

 置いていかれた男の子がどこに向かうか分からないけど、友達が加奈子達を送るということは私たちと目的地はさほど変わらないということ。つまり、車でも3時間以上かかってしまう。


 電話の相手は申し訳なさそうに「ほんっとすみません。無理なこと頼んで」と言っていると急に加奈子に代わった


「あ、美穂?大丈夫大丈夫、相手は私も知ってる子だし、ほんと何もしてこないよ。もしされたら全力で私がその子を社会的に潰すわ。それに美穂もきっと安心できる相手」

「え?」

「あ~何でもない。とにかく、その子お金も無くてバスでこっちに帰ってこれないらしいのよ。だからとりあえず会ってみるだけしてあげられない?相乗りが無理ならお金だけ渡してあげて、そのお金は帰ってきたら私が返すから」

「ん~…ええ、わかった」

「ほんとありがとう。美穂はホント良い子だね~」

「家に着いたらきっちり恩返しはしてもらうからね」

「はいは~い。あ、ちょっと豊臣君に代わるね」

「ええ」

「あ、豊臣です。ほんとありがとうございます!えっと、場所は第一駐車場の所にいると思います。両手にお土産袋持っててポツーンと1人寂しそうにコーヒーの缶とか飲んでるのがおそらく友達かと。ほんっと無理なこと頼んでしまってすみません。それじゃお願いしますね!」


 豊臣くんと言う子はそれだけ言うと電話を切る

 あまりに急に切られてしまって何も言えなくなってしまう


 しょうがない…お金だけ渡して1人で帰ってこよう…

 そんな風に思いながら、男の子が置いてかれている第一駐車場へ向かい、お土産袋を持っている男の子を探す


「第一駐車場はここのはずなんだけど………」


 辺りには車だらけ。この中のどこかに本当にいるんだろうか?

 両手にお土産袋を持ってポツーンと寂しそうにしている………


「豊臣のバカヤローーーーーー!!!!!」


 ……いた…いたけど……でも…え?

 でも…どうして潤一が?

 頭の中がぐるぐるとものすごく働く。それはもう仕事でもこんなに働くことは無いぐらい

 そのせいなのか、手に持っていた車のキーを思わず落としてしまった



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