◎第45話◎ 夜空
温泉はこんなにも気持ちいい。もちろん露天風呂は恥ずかしかったけど、普段都会では見ることのできないような明るい月の光と星の光。あんな空がきれいだったなんて思いもしなかった。
「あぁ~気持ちよかったですね~」
浴衣を着た三橋さんが背伸びをしながら部屋に敷いている布団にダイブする
「あぁ~紗代さん、これからお酒飲むんですから寝ないでくださいよ」
「はいはい~。加奈子さん飲める口ですよね、ガンガン行きますよ~」
「前みたいに潰さないでくださいよ。ほら、美穂もそんなところで立ってないでこっちに座りなよ」
三橋さんは嬉しそうに起き上がるとさっそくビールを開ける
そして、すぐに加奈子と三橋さんのハイペースな飲み合いが始まった
それにしても本当に速い……
加藤さんと加奈子が買ってきたお酒が恐ろしいペースで減っている
「紗代さんと加奈子ちゃん凄いペース…」
「私たちは普通に飲みましょうか」
「ですね。何本か分けておいてよかったです」
笑いながら別のビニール袋を出し、私たちは部屋の小さなテラスに置かれているテーブルに座る
加藤さん曰く、ここの旅館は隠れ宿で有名?らしく数々の著名人も来るらしい
だから、景色も凄く綺麗だ
「本当に気持ちいいですね、なんか仕事から離れた~って感じで」
「うふふ、そうね」
「ですよね~。それにしても……」
「ん?」
「何か良いことありましたか?谷口さん」
「…そうね、それなりに」
「あぁーなんか恋する女性の顔ですよ。ずるいですよ!」
「これも皆のおかげね。やっと自分の気持ちに素直になれたもの」
「いいなぁ、私もそんな相手見つけたいなぁ~」
羨ましそうに見てくる加藤さんだけど、彼女のおかげで気付けた
だから少しは私のような気持ちを……ううん、加藤さんは私みたいにバカじゃない…彼女はしっかりと自分を見ているし相手も見ている。私のようなミスは絶対にしない
「うふふ、そうね」
「あ~、ずるいですよぉー」
どこか楽しそうに加藤さんは笑うとビールを飲む
私は片手に持っているビールに飲みながら、外の景色を見る
都会ではまず見れないような星空を見ていると潤一の言っていた事を思い出した。
あれはまだ潤一はまだ大学生になってなくて、暇だ、大学生活不安…などと言っていた付き合って間もない頃。
私はどうにか勇気をあげたいと思い、少し遠くのプラネタニウムに行こうと提案した。
少しでも現実から離れてリラックスしてほしかったから。
私の考えは見事に的中して、プラネタニウムから出てきた潤一の顔は楽しそうな顔をしていて「いつか本物の星空見ようね!」と本当に楽しそうな顔をしていたのを思い出す
また、あんな笑顔が見れるんだろうか…