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◎第39話◎ 本当の事。

 

 三橋さんはニコニコしながら店員さんに日本酒を頼み、それが届くと私にすすめてくる


「そうですね…まずは谷口さんの気持ちから聞きたいです、私」

「え?」

「潤一くんの事好きですか?」

「え?」


 三橋さんは厳しい目をしながら私を見つめ、潤一君の髪を優しく撫でる

 この人は何を私から聞きたいんだろう…自分の彼氏の元彼女である私が現れて、何を聞き出したいんだろう…


「私は好きですよ、潤一君。昔から何でも器用にできるのに自分は不器用だって思いこんでいて、すぐ何かあると落ち込んでは自分で抱え込んじゃう。そんな潤一君を見ているとかまってあげたくなるんですよね…もう大人なのに子供のようで、でも時々自分より大人な感じを出してくれる。頼りないんだけど頼りになるような子だから、私は好きです。谷口さんはどうですか?」

「………わ、私は」


 なんて言えばいいんだろう…

 三橋さんは昔の潤一を知っている。たぶん私より知っていて、歳も潤一と近いから私みたいな悩みも無い。そうなると今の方が潤一も私も幸せなんだろうか…


「私は潤一君が大好きです、小さい時からずっと。谷口さん、あなたは潤一君のことどう思ってますか?」

「………」

「今は素直な谷口さんの気持ちが聞きたいです。好きかもう未練はないか」


 到底彼女に勝てる気がしない…

 三橋さんはじっと私を見つめる。彼女の目を見ていると嘘なんて付けない、吐いた所で顔に出てしまう

 だったら、自分の気持ちをここで吐きだそう


「…私はじゅ、潤一の事が好きです」


 三橋さんの目を見つめ返しながら真剣に言う

 これが私の気持ち。素直な気持ち。


「大好きです。三橋さんには申し訳ないですけど自分に嘘は吐けません…だって、潤一の事が大好きですから」


 三橋さんは急に優しい目に変わると私にお猪口を渡し、お酒を入れると「どうぞ」と勧める

 何が何だか分からないけど私は一気に飲むと三橋さんは嬉しそうに笑った


「よかった、やっぱり谷口さんは素晴らしい人です、潤一君が惚れただけあります」

「え?」

「ごめんなさい、試しちゃって」


 三橋さんはぺロっと下を出しながらさっき店員さんから貰った新しいお猪口に日本酒を入れて話し始めた


「谷口さんを試しちゃいました。どれだけ潤一君のことが好きなのかなぁって思って」

「え?え?」

「私は潤一くんの彼女じゃないですよ、ちょっと勘違いしてるのかなぁと思ったので試しちゃいました」

「え?で、でも…」

「安心してください。私と潤一君はただの仲のいい姉弟みたいな感じですから。それにしても…潤一君も凄い彼女を…」

「そんな…」


 信じられない…

 この前、ファミレスで見た時の潤一の楽しそうな顔は明らかに姉弟とかそういうのじゃない

 あれは本当に好きだから楽しそうにしていた顔だった。だから私は見たことが………


「潤一くん、本当に谷口さんの事好きですよ。まぎれも無く」

「でも」

「私の事が好きだと思っていた方が良かったですか?その方が都合がよかったですか?」

「…」

「私は谷口さんと潤一君の間に起こったことは何も知りません。けど、自分が好きになった相手を信じることはできませんか?潤一くんを信じることは」


 三橋さんはお母さんのような子供にやさしく話かけるような声で私に話かけてくる

 そうだ…杉本部長に言ってもらえた時に感じた。私は潤一の事が好き、それは間違いはない。

 そして、潤一が好きだと私が勝手に思っていた相手は今、目の前で違うと言ってくれている


「もう大丈夫そうですね」

「すみません、私頑張ってみます」

「それじゃ!ちょっと頑張る前にお酒飲みましょう!エネルギーを蓄えないと」


 三橋さんはさっきとは全く別の雰囲気でお酒を注いでくれる

 そして、昔話に花を咲かせていた加奈子と加藤さんもこっそり私たちの話を聞いていたんだろう

 ニコニコしながら私のために盛り上げてくれた



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