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◎第38話◎ え?

 

 無事仕事も終え、加奈子と待ち合わせた場所へと向かう

 時間もピッタリで、加奈子は少し早めに来ていたのか私を見つけると「こっち」と手を上げた


「あれ?なんか美穂良いことでもあったの?」

「え?」

「なんか顔が生き生きしてるというか…ん~」

「そ、そんな見ないで」

「ん~…まぁいっか。ほらほら飲み会行こうよ!」


 加奈子は本当に楽しみにしていたのか私の背中を押して、加藤さんとの待ち合わせ場所の居酒屋へと向かう

 仕事を終えた時に、加藤さんに電話した時にはすでに向こうは到着していたらしく、楽しそうな声が聞こえていた


「すみません…なんか勢いで…」

「ううん、私たちの方が遅れてるから」

「うぅ…ほんっとすみません。あ、ちょっとここから動けない状況になってしまって…こちらに来てもらってもいいですか?」

「ええ。もちろん」


 この後、加藤さんから場所を聞いて加奈子と一緒にその居酒屋へと向かっているタクシーの中で急に加奈子が昔のことを話し始めた


「大学進学の時さ、美穂は海外の大学に行っちゃったじゃない?」

「そうね」

「あの時、寂しいなぁって思ってたけど…あの時離れたのが良かったのかなぁって今は思うんだよね」

「え?」

「正直、高校の時に美穂のこと凄いなぁってずっと思ってて、一緒にいるのもちょっと嫌だったんだよね。なんか自分がみじめになっていくような感じがして…あ、もちろん勝手に私が思ってただけなんだけどさ」

「……」

「でも、美穂が海外に行ってしばらく会えなかった時、ずっと会いたい会いたいって思ってたんだよ。だからメールずっとしてたでしょ」

「そうね…ものすごい返信が速かったのを覚えてる」

「あはは、なんか恥ずかしいね。…でも、美穂には感謝してるよ、私。

 大学の時にもサークル内で美穂みたいに凄くできる先輩がいたんだけど、その人に嫉妬みたいなのせずに接せれたし…そういえば、その人も美穂と同じ会社にいるって言ってたなぁ。ってことで美穂には感謝しています」

「改まって言うなんて…何かあったの?」

「ん?ん~…今日はなんか言いたいなぁって気持ちになってさ。だから、美穂も自分の気持ちに素直になりなよ。今日はそれが許される日なんだと思うよ」

「うふふ、そうならなってみようかしら?」


 どうして今日が素直になれる日なのかは分からないけど、確かに今日は良い日だ

 杉本部長に話を聞いてもらい、スッキリした気分で仕事もできたし、自分に素直になれた

 加奈子がそれを分かってて言ったとは思えないけど、確かに今日は良い日。

 私たちは何の他愛も無い話をしながら待ち合わせの居酒屋へと向かう

 そして、お店の中に入り、店員さんに加藤さん達の場所へと案内してもらった


「あ、加奈子ちょっと私」

「ん?あ、うん。それじゃ先に行ってるね」


 携帯がブルブルと震え、トイレの中へと向かう

 電話の相手は非通知で掛けられていて誰だか分からない

 でも、もし仕事関係なら後で問題沙汰になるかもしれないので電話を受け、耳を当てる

 すると電話の向こう側からはガヤガヤとした賑やかな音が聞こえてくる


「…あの、谷口ですがどちら様でしょうか?」


 中々相手が名前を言ってくれない為、自ら名乗ってみる

 もしかしたら間違い電話なのだろうか?

 向こうからはただ賑やかな声が聞こえるだけど、他には何も聞こえない


「あの?」


 やっぱり間違い電話かも…。

 知らない相手からの無言電話。ふと何か怖いものかなぁと考えてしまったが考えを切り替え間違い電話だと思いこむ。


「加奈子に相談しようかしら…」


 電話を切って非通知と表示されている画面を見る

 もし、イタズラだとしてもこれは太刀が悪いし、間違い電話でも「すみません」の一言ぐらいあってもいいはず。それに今まで気が付いてなかったけど非通知で数件電話がかけられている

 少し怖いと思いながらも携帯をカバンの中に仕舞うと加藤さん達のいる部屋へと向かった



「ど、どうして…」


 加藤さんと約束していた部屋の中にどうして……

 部屋の奥の方で知らない女性の膝を枕にして酔い潰れている少年が1人

 それもその少年は見たこともあるも無いも私にとって大きな存在の子だ


「あ、谷口さん」

「美穂の部下がまさか理恵先輩だとはね~」

「え?え?」

「加奈子ちゃんと同じ大学で同じサークルだったんですよ」


 加藤さんは楽しそうに話す

 そういえば同じサークル内でものすごく出来た先輩がいたと言っていたけど、加藤さんなら納得だ

 加奈子と加藤さんは昔話に花を咲かせ始めるとドンドンお酒のペースが上がっていく

 完全に私は置いてけぼりだ…それにさっきから目線がチラチラと少年の方へと向いてしまう

 それにあの膝枕をしている女の子は見覚えがある…昔に一緒にいた女の子だ…

 ついさっきまで頑張ってみようと思っていた決意がボロボロと崩れていく音がする

 女の子は潤一の髪を撫でながらお酒を飲む。そして、チラチラと見ていた私の視線に気が付いたのかニコッと笑った

 素直に可愛いと思える笑顔。あんな子にあんな風に笑顔を見せられたら…

 私は出来る限り顔に出さないように微笑み返すと「お話しませんか?」と可愛い声で話かけてくれた

 私はドキっとしながらもその女の子に興味を持ち、自分の心の中で荒らしまわっている嵐を隠して女の子の横に座る


「はじめまして、三橋紗代って言います。あ、すみません…なんか変な格好で」

「い、いえ…あ、谷口美穂です。えっと、あの加藤さんと話されてる人の知り合いで」

「なんか久しぶりの再会で意気投合しちゃってますね。あ、お酒いけます?」

「はい。多少なら」

「よかった。じゃどうぞ~」


 三橋さんはコップにビールを注ぐと「乾杯」と言ってお酒を飲む

 私は少し口を付けてはいるが、視線は自然と膝枕をされている潤一の方へと向かってしまう


「ん?…あっ、すみません、この子潰れちゃって」

「え?あ…す、すみません」

「あはは、やっぱり気になりますか?元彼氏の男の子は」

「え?」


 三橋さんは優しい笑顔でそう言うとコップの中に入っていたビールを一気に飲み干した


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