◇第34話◇ 紗代さん年齢詐称疑惑!
どうしてこうなった……
今日は豊臣企画の合コンのはず
だけど、相手が悪すぎる………
「こらっ和志!!ちゃんと野菜も食べなさい!」
「こ、こんなところでそんなこと言わなくても良いだろ!」
なぜ相手に和志君のお姉さんがいるんだ…
それも豊臣の情報では相手は3人+1人なのに2人しか来ていない
和志君のお姉さんと紗代さんだ
「あ~潤一くん、私とお酒取らないでよぉ」
「これは俺のです。紗代さんのはまだ来ていないだけですから」
「ここ遅いよね。来るの」
「あなたが早すぎるんです…飲むのが」
もうこの居酒屋に入ってから30分
豊臣はまったく相手にされず、ただひたすらご飯を食べている状態だ。
むしろ、今まであったことのないタイプでどう接せば良いのか分からないらしい
豊臣は合コンではいつも中心になるが、今回は明らかに蚊帳の外だ
お姉さんは和志君に注意していて、紗代さんは俺相手にお酒を飲みまくる
「潤一、酒のペースヤバいぞ…あの人」
「心配ないから。あの人は人間じゃない」
最初の方はこうやって心配してくれたが今ではさすがの豊臣も呆れてしまっている
紗代さんは少し遅めに入ってきて、15分の間にビール瓶を3本、焼酎1本空けている
完全なハイペース。一般人じゃなくてもアル中になるレベルだろう
しかし、紗代さんはグイグイと飲んでいき、今は焼酎2本目を飲んでいる
「潤一く~ん、私がやってるの見てる?」
「見てません」
「ならDVD貸してあげるね。見て欲しいし」
「良いですよ。どうせ萌え系なんでしょ?」
「そうだよ。私ヒロインだよ」
「おめでとうございます」
「実は萌え萌えのキャラで人気あったりしてます」
この人の存在自体が一部の人にとって萌え系では無いのか?
28にもなってこの幼児体型で童顔。高校生でも通るぐらいだ
「あとキャラソンも発売決定しちゃってたりするんだよ」
「それは凄い。おめでとうございます」
「え?紗代さんって声優なんですか?」
お姉さんに注意されまくっていた和志君が急に興味深々に紗代さんに近づく
「そうだよ、アニメでヒロインやってるの」
「すごい!なんのアニメですか?」
「マギだよ」
「え!?僕、そのアニメ見てますよ!」
「ありがと~、サインしてあげるね」
「うわ、ありがとうございます!」
紗代さんがやってるアニメって人気あったのか…と今更ながら思ってしまった
それからは紗代さんと和志君がアニメについて話し合う。2人の話す会話は俺には全く理解できない、所謂2人はオタクなんだろう。紗代さんは生まれてずっとだけど…
ようやく自分のペースでお酒が飲めるようになってご飯を食べようとすると横からガシッと腕を捕まられ、そっちの方を見るとお姉さんが嬉しそうに横にいた
「潤一君、元気になったね」
「おかげさまでありがとうございました」
「いえいえ、私は何もしてないけど。ん~来れないのかなぁ」
「もう1人の人ですか?仕事かなんかですか?」
「そそ。この前言ってた私の憧れの上司。きっと潤一君も気に入ると思うなぁ」
「俺、今は彼女作る気無いですよ?」
「まぁまぁどうせ合コンなんだし楽しく行こうよ」
お姉さんは俺の持っているコップとチンと合わせて「乾杯」と言う
どうせ合コンと言われても知り合いが相手だから、ただの飲み会だ
豊臣はもう完全にやる気をなくしている状態だし、和志君は紗代さんとアニメトーク全開だ
「潤一君とあの紗代さんってのは知り合いなの?」
「知り合いというか小さい時に隣の家に住んでいて一緒に遊んでたんですよ」
「へぇ~、ってことは紗代さんも大学生?」
「あの人は俺より8つ上ですよ…あー見えても」
「え?!」
本当に驚いたようにお姉さんは俺と紗代さんを何度も見る
その眼は「嘘でしょ?」と言いたそうな目だけど本当の話だ
俺も未だに年齢を偽ってるんじゃないのか?って思うけど運転免許証にも27と書かれている
「そ、それじゃ…えっと…その、わ、私と同じ27?……凹むわね…」
「あの人は人間じゃないので」
「それでも27であの容姿で肌の持ち主って羨ましい…」
「小さい時からあんな感じですよ。あの容姿であんな声だからますます歳偽ってるんじゃないか?って思ってましたし」
「でも今の声は少し大人っぽいけど?」
確かに今、和志君と話している時の声は大人っぽい綺麗な声で話しているけど、本来の声はあんな落ち付いたような声じゃない。本来はもっと子供っぽい、甘ったるい声でアニメでよく聞くような特徴のある声だ
昔は電話で自分の親でさえ騙せれる声域の広い人だったから、どれが本当の声かも分からないけど…
「ものすっごく子供っぽい声も出せますよ。あとはイケメンボイスって言うんですか?あんな感じの声もできますし」
「してもらってもいいかな?」
「はい。紗代さん、ちょっとイケメンボイスしてくださいよ」
「ん~?…ごほん……何かな?」
「うわ、カッコいい声」
「それほどでもないですよ。綺麗なお姉さん」
紗代さんはお姉さんの顎に手を置いて、「ふっ」と笑う
すると、お姉さんは「お、おぉ…」と驚いたように和志君の所へ戻っていく紗代さんの後ろ姿を見つめた
「す、すごいね…ちょっとキュンってなっちゃったよ」
「高校の頃は女の子にもてたらしいです。あの声使って」
「へ、へぇ…」
今ではオタクにモテモテなんだろうけどそれは言わないでおく
そんなことは言わなくても今の声を聞けば分かることだ
俺はお酒を飲みながら、合コンと言うことを忘れそうだった