◇第33話◇ 合コン!
「潤一、合コン行かないか?」
バイトが終わり、休憩室でお茶を飲んでいると豊臣から電話が来て、第一声がこれだった
「めんどくさい」
「いいじゃんいいじゃん、この前の合コンも来なかったんだから今日ぐらい来いよ。あと知り合い1人誘えるなら誘ってほしいな」
「いやだから行かないって」
人の話を聞けよ…
豊臣は俺の話なんて聞かずに合コンの相手のメンバーを言い始める
別に行くこともないから適当に聞き流しているとお店側のドアから和志君が入ってきた
「ふぃぃ~…あ、おつかれ~潤一君」
「おつかれさま。和志君ももう上がり?」
「うん。やっと上がり。あ、電話良いの?」
「あ~…ちょっと待ってね」
こっちの声が入らないように手で蓋をしていたのをどけて耳を当てる
「聞いてた?」
「全然、とりあえず行かないから」
「あ~そんなこと言っていいのかなぁ。この前、潤一に貸したお金まだ返してもらってないんだけど」
「はぁ?…あ~…」
あの飲んだくれて家に帰るために借りたお金のことか…
「それちゃらにしてやってもいいぜ?今日来たら」
「別に返すから良いよ。明日にでも」
「利子付いて3万になってます」
「はぁ?何言ってんだ?」
「もし、今日合コンに来てくれたらチャラにしてやるし奢ってやるよ。飲み放題食べ放題3300円!」
たかが3300円で釣られると思ってるんだろうか?
俺は大きなため息を吐こうとすると目の前に目をキラキラした和志君がいた
「ねぇ、今合コンの話してたりする?」
「え?あ、うん」
「それ僕も行っていいかな?」
「え?でも彼女…」
「いないいない。友達だよ、姉ちゃんが勘違いしてるだけ」
「で、でも…」
「お、そっちに誰かいるのか?その人も呼んでさ、遊ぼうよ!」
豊臣が電話越しに大声で和志君に話かける
その声は見事和志君に聞こえて、和志君も「行く!」と返してしまった
すると話は俺の不利な方へと進んでいき、いつの間にか和志君が俺の携帯で豊臣と話し、どんどん進んでいく
「うん、んじゃよろしくね~」
電話が終わると和志君は嬉しそうに携帯を返してきて「楽しみだね~」と断るに断れない笑顔で見てくる
どうせいつもと変わらず適当にご飯を食べて飲んで、時間を潰せば良いや…と思って苦笑いしながら頷く
すると、和志君は嬉しそうに時間まで適当に時間つぶそうと言って一緒にバイト先を出た
合コンが始まる10分前
俺と和志君は集合場所で待っていると豊臣が向かってくる
「あ、和志くん?」
「そうそう。豊臣くんだよね、よろしく~」
「今日の相手は凄いから和志君得だよ」
「ほんと?ラッキー」
「お互い良いの取ろう!」
「だね!」
初対面でここまで息ぴったりって…どこかであったことがあるんじゃないだろうか…
2人の会話を離れて聞いていると2人が急にこっちに振り返った
「潤一」
「潤一君」
「「頑張ろう!」」
やっぱりどこかであったことがあるんだろう…ここまで息ぴったりなんだから
俺は適当に「はいはい」と答えて今日の居酒屋へと向かう
前では豊臣と和志君が、どういう作戦で行くのかと楽しそうに話しながら歩いていて、俺はげんなりしながら後を付いて行っていると携帯がブルブルと震えた
「はい、潤一です」
「あ、潤一く~ん」
「紗代さん…」
「何何?お姉さんが電話してきて嬉し過ぎて泣いちゃった?」
「はぁ…なんですか?」
「いやちょっと暇になっちゃったから遊ぼうかなぁって」
「はぁぁ…俺ら今から飲み会なので」
「飲み会?」
「あ……いや、ちょっと用事が」
「行く行く、私も行くよ。どうせ合コンでしょ?行く行く」
やってしまった……
飲み会なんて言えば来るに決まってるじゃないか…紗代さんは超が付くほどの酒豪。潰れると言った言葉は知らないし大の大大お酒好き。ましてや合コンなんて聞いたら奢られると思ってる人
俺は慌てて切ろうとすると「絶対行くからね~」と言って電話を切った
あの人は俺達がどこで飲み会をするか知らないのにどうやってくるんだろうか…
俺は安心してしまって携帯をそのままポケットに入れる
しかし、これがダメだったことに後になって気が付き、その頃にはもう時が遅かった…