◎第32話◎ 海を眺めて
加奈子とのドライブで海に着くとさっそく2人だけのパーティーが始まった
もちろん、外は寒いから車の中で海を見ながらおやつなどを食べていく
「いいね、海を見ながらこうやって食べれるっての」
「そうね。たまにはいいかも」
ポテトチップスを食べながら波立てる海を見る
しばらく、2人で海を見ながら話をしていると浜辺に2人の影が見えた
「うわ、あの人ら寒くないのかな?」
加奈子が物珍しそうに浜辺の方を見る
ここからじゃ遠くてよく見えないけど浜辺に座って何か話しているみたいだ
そして、何があったのか1人が立ち上がり、叫んでいるような動きをした
「ちょっと窓開けてみよっか」
「ダメよ、なんか聞いちゃ悪いでしょ」
「大丈夫大丈夫、叫ぶぐらいなんだから聞いても大丈夫だって」
加奈子は面白いものを見つけたかのように嬉しそうな顔をしながら少しだけ窓を開ける
すると、風の音と共に女性の叫び声が聞こえてきた
「ああああ~~~~」
「なんか決意を言ってるのかと思ったらただ叫んでるだけか」
「うふふ、そうね。でもあーいうの良いわね」
「確かに、なんか青春っぽいよね。まぁバカっぽいけど」
「うふふ、そうね」
本当に青春っぽい
ポテトチップスを手に取り、パクっと食べる
しばらく私と加奈子は浜辺にいるカップルを見ていると男性が女性に促されて立ち上がり、何かを叫ぶ見たいだ
「あ、男の子叫ぶみたい」
加奈子は少し窓をを下げる
すると、女性は海を指差したかと思うと男性が叫んだ
「まだ好きだぁぁぁぁぁぁ」
思わず目を大きく開いてしまった
聞いたことのある声
だけど、その聞いたことのある声の主がこんなところに居るとは思えない
遠くから見てもその聞いたことのある声の主とは判断できない。
それに風の音の中で聞こえた声だから間違いってこともある
「うっわ…あの子凄いわね…まさに青春って感じ。ね、美穂…美穂?どうかした?」
「え?あ、う、ううん。本当ね、青春してる」
私の勘違いだ
少し冷静になればさっきの声もどこか違うような気もする
それに人の声なんて同じような声の人はたくさんいる
自分を落ち着かせるようにお茶を口の中に入れる
浜辺にいるカップルは叫び終わったのか駐車場へと歩いてくる
その姿がどんどん近づいてくると共に加奈子はニヤニヤしながらこっちに歩いてくるカップルを見ていた
おそらく、どんな顔をしているのか見たいんだろう
「美穂美穂、ここで私たちに聞かれてるって気が付いたらどんな顔するのかな?」
「失礼よ、そんなこと」
「でももう聞いちゃったわけだし」
「でも」
「あ、こっちに来る」
見ちゃいけない。と思っていても目は自分の意思関係なくこっちに向かってくる2人に視線が行ってしまう
しかし、もう少しこっちに歩いてくれれば顔を確認できる所まで来ると急に男性が浜辺へと戻っていく
女性は何か言っているように見え、男性は手を上げて返事をしたみたいだ
「ありゃ男の子が戻っていく」
加奈子が残念そうにつぶやくがこっちに向かってくる女性を興味深々に見つめる
少しして歩いてきた女性は私のよく知る人物だった
同じ会社で私の部下の加藤さんだ
向こうはまだ気が付いていない様子でそのまま通り過ぎていく
もしかしたら……なんてことを思うけどそれはない
加藤さんと彼が知り合うなんて事はない。彼にはスーツを着た可愛い女の子がいるはずだから
通り過ぎていった加藤さんは車に乗ると少し走って行き、途中で男性を拾って走りだした
「あ~ぁ…私たちもそろそろ帰ろっか」
「そうね」
「あ~…帰ったらまたちゃんと謝っとこ」
「うふふ、そうね。勉さんに迷惑かけちゃったんだから」
「はぁ…我ながら恥ずかしいよ…」
加奈子は大きなため息を吐いて、シートベルトを締める
そして、車を街の方へ向かって走りだした




