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◎第28話◎ 美穂の欠点


今回は加奈子視点です。

 

 横では美穂が椅子に座り、テーブルの上に腕を枕にして寝ている

 そして、その周りには缶ビールが5つも転がっていた


「美穂、風邪引くわよ」

「うぅ…んん…」


 美穂がこんなにお酒を飲むことなんて珍しい

 普段は絶対に酔わないように飲む量を考えているのだけど、今日ばっかりは進んだらしい

 私は寝室から毛布を持ってきて、美穂に掛けてから新しく買ってきたビールを飲む


 私と美穂が出会ったのは高校時代

 あの時から美穂は皆に信頼され、誰からも好かれていた

 もちろん、成績も優秀だったしスポーツもできた。そして生徒会長なんてのもやっていて、家はお金持ちのお嬢様、男からはそれはもうモテモテだった。

 だから、正直苦手だったのもある。私なんかと違って本当に何でも出来て、誰にでも親切にできるこの子が近くにいると自分がどれだけ小さい人なのかって悩まされたから


 だけど、そんな完璧なこの子でも弱点があった。それが男だ

 美穂は小さい時から箱入り娘として大切に大切に育てられていたらしく、父親からは「父さん以外の男は皆危険だ」みたいな感じに聞かされていたらしい

 だから、高校の時も男子とは付き合うことが無かった。一時レズなのかもしれないと思ったこともあったけど、それは美穂も否定していて男性を好きになるらしい。だけど好きであって恋するってわけじゃない

 そんな美穂も大人になって超一流企業に就職して、ちょっとは変わったかなぁと思ってたら高校を卒業したばかりの男の子と付き合ってるなんて言うからビックリだ


 その男の子も水族館で初めて見たけど、どう見ても私たち側の人間。

 美穂とは全く違うと言っていい世界の子がどうして美穂と居れるのか?それが最初に思ったことだ

 それも1年以上も…


 私と美穂は女同士で友達だから言いたいことは言える。不安だと思えばその不安をぶつけてしまえばいい。それぐらいどうってことない。もちろんそんな不安を言い合える仲になるまで時間はかかったけど、あの子はその領域まで達しているとは思えなかった。

 水族館の時ですでに何か2人の間に不安要素があったのは間違いない。

 その不安要素は確実に潤一君から生まれていることも分かる。あの子も私と同じ側の人だから。


「ん…じゅ…いち…」

「はぁぁ…」


 思わずため息が吐いてしまう…

 ここまで潤一君に依存していながらどうして手を放してしまうんだろう…いや、なんとなくわかるような気がする

 美穂の悪い所は2つある。

 1つは賢すぎること。

 2つは異性に対して壁を作ることが普通だと思っていること。


 賢すぎる美穂は相手の小さな不安さえもすぐに感じ取ってしまう。そして、賢すぎるがゆえに自分の中ですべて解決しようとする。

 そして、今回もそんな感じで勝手に自分の中で解決しようとして、あること無いことを勝手に想像していき、潤一君との間に小さいながらも壁を作ってしまった。

 もちろん、美穂だけが悪いわけじゃない。相手の潤一君も悪い所がある。

 だけど、私と同じ世界の子だから同情もしてしまう。

 美穂と一緒に居れば不安にもなる。ましてや美穂は社会人として優れすぎている人間、自分はただの学生で釣り合うのだろうか?と思ってしまうのも無理はない

 自分は20歳で美穂は25歳。たった5歳の違いでも普通の5歳の差じゃない

 追いつきたくても追いつけない、離される一方だと思ってしまったら…私でも耐えられない。それなら美穂の将来のために自分は身を退くと考える


 だからこそ、美穂はほんの少しでも潤一君の手を離してはいけなかった。

 彼は不安だらけで美穂と付き合っていたんだから…


「はぁ…なんとかしてあげたいけど…こればっかりは美穂、あんた自身が変わらないとどうしようもないわよ?お手伝いはしてあげるけどさ…」


 前で寝ている美穂の頭をポンポンと叩いて、缶ビールの中に入っている残りを一気に飲み干した




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