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◇第27話◇ 和志君の家。

 

「やっと終わった~!」


 和志君がタイムカードを入れて誰もいない店の中で叫ぶ

 僕もタイムカードを入れるとすぐに電気を消した


「うわっ真っ暗じゃん」

「あはは、もう帰ろうよ。いつもよりゆっくりしすぎたんだから」


 今はもう11時だ

 いつもなら10時に閉店して10時半には帰ってるのに2人でゆっくり片付けをしていたからこんな時間になってしまった


「はぁぁ…もう11時かぁ…これから家に帰っても寝るだけだし…姉ちゃんいるしなぁ」

「和志君ってお姉さんいるんだ」

「うるさいよ?親代わりみたいな感じだから尚更ね」

「でもお姉さんって良いよね。なんか」

「そう?…あ、もしかしてお姉さん好き?なら俺の姉ちゃん紹介しようか?」

「いや、それは…」

「まぁまぁちょっと男っぽい所あるけどさ。ほら行こう!」

「あ、ちょ」


 和志君は楽しそうにしながら携帯を開き、文字を打っていく

 そして、打ち終わると嬉しそうに「さぁ行こう!」と言って店を出た



 和志君の家は普通のマンションで、玄関には何足か女性の靴が置かれている


「あ、ごめん。ちょっとここで待ってて」


 和志君はそういうと家の中に入って行き、奥の方からバタバタと音がする


「ちょっと、メール見てなかったの?」

「電話してきなさいよ!」

「電話かけたら姉ちゃん怒るじゃん。うるさいって」

「と、とりあえず上がってもらって。何か作るから」


 しばらくして和志君がドアの向こうから顔を出して「入っていいよ」と言う

 本当に入っていいんだろうか?

 僕は靴を脱いで、手招きされる方へと向かう

 そして、ドアを開けるとエプロン姿の綺麗な女性が会釈した


「和志の姉の理恵です。いつも弟がお世話になってます」


 和志君が言っていたように本当に綺麗な女性だ

 でも、こっそり和志君が耳打ちをしてくる


「猫被ってるから。普段あんなんじゃないよ」

「こらっ!和志!」

「姉さん、チャンネル変えていい?」


 お姉さんは「ごめんね、あんな子だけど仲良くしてやって」と笑いながら台所へと向かう

 それからは僕と和志君とお姉さんとでお酒を交しながら時間を潰す


「和志、こら、和志!寝るな」

「うぅぅ…」


 まさかビール2本でここまで潰れるとは思わなかった…

 和志君はぐて~としていて気持ちよさそうに寝ている

 そして、お姉さんはつまらなさそうに和志君にちょっかいを出していて、反応が無くなると次は僕をターゲットにしてきた


「潤一くんは今フリーター?学生?」

「学生です。ここから3つ向こうの」

「あ~、あそこね。いいなぁ、学生ってなんだか響きが良いよね」

「そうですか?僕は早く大人になりたいですけど…」

「そうなの?どうして?」

「大人の方がいいじゃないですか…学生じゃどうにもならないこともあるし」

「そうかなぁ、私が学生の時なんて一杯楽しめたし合コンで出会いもたくさんあったなぁ。社会人になったらそういうのぜんっぜん!あ~学生に戻りたいわ」


 理恵さんはビールを飲みながら、学生時代はこうだったとかあーだったとか色んなことを話す

 そして、次は社会人はどうだとかしんどいとか散々言う


「ほんっと…社会人キツイよ?もし上司が最悪だったらもう会社なんて行きたいと思わなくなっちゃうし」

「そうなんですか?」

「そうそう。まぁ私の上司は……そうね~最高なんじゃないかな?」

「あはは、言ってることと違いますよ」

「私のところは別ね。私はあの人に憧れ持っちゃってるし」

「憧れですか?」

「何でもできるし、会社からも期待されちゃってるし、なによりカッコいいからね」

「へぇ、すごい人なんですね」

「そうね、ものすごく凄い人。凄過ぎてちょっと私と合わないと思っちゃうぐらいね、でもそんな人でも自分が信頼できる人がいないとダメになっちゃったりするんだよね~」


 理恵さんは優しい笑顔で俺を見ると「なんかキャラに合わないこと言っちゃったね」と言って乾杯を求めてきた

 どんなに凄い人でも自分が信頼できる人がいないとダメになる…

 美穂さんもそうだったから…いや、美穂さんが悪いんじゃない、信頼できるほどの人になれなかった俺がダメだったんだ

 俺は持っていた缶ビールを一気に飲み干して、考えを止めた


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