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◇第25話◇ アルバイト

 

「550円のおつりになります。ありがとうございました~」


 お客さんにおつりを渡して軽く頭を下げる

 春休み、俺はアルバイトをすることにした

 長い春休みを有効に使うためにだ


 今働いている所は小さな本屋さんで、忙しい時もあれば楽なときもある普通の本屋だ

 さっきのお客さんが居なくなると暇な時間が来る

 俺は客側からでは見ないように小説を開き、こっそり読む

 すると、30代後半ぐらいのおじさんがレジに入ってきた


「斉藤君、おつかれさま」

「あ、中島さん。どうもです」


 この人はこの本屋の店長、中島さんだ

 気さくな性格で年相応の見た目でとにかく優しい


「相変わらず斉藤君は本読むね」

「あ、すみません」

「あはは、別にお客さんから見えなければ良いよ。僕も結構するし」


 中島さんは笑いながら掛かってきた電話に対応する

 ここに働き始めたのは春休み前からだから約2週間目ぐらい

 仕事の内容も覚え始めてきて、他のアルバイトの人とも仲良くできている

 俺は本を読みながら店の中を見渡す


 ここらへんは大きな会社が多いため、サラリーマンやOLが多いけど学生も時々来る

 そのためお金を払わずに持って帰る万引きも他の店舗よりは少ないが一応あるため定期的に確認することが必要なのだ

 もちろん、カメラもあるからそれで確認すればいい


「そういえば、斉藤君は今週ずっと入ってるけど遊ばないのかい?まぁ僕的にはありがたいんだけど」

「一応遊んだりしてますよ。友達とかと」

「よかった、安心したよ」

「どうしてですか?」

「僕が斉藤君にまかせっきりな所があるから気使って入ってくれてるのかなぁって思ってさ。今日だって急に電話してしまったから」

「あはは、どうせ暇ですから良いですよ。お金も貯めたいですから」

「彼女とかは居ないのかい?斉藤君ならいそうな気もするけど」

「……今はいないですね。というより、お金貯めたいんですよ、俺」

「へぇ、どうしてだい?」

「車の免許取るために親にお金借りてるんでそれを早めに返そうかなぁって」

「すごいね、僕が斉藤君の歳にはそんなこと考えなかったよ」

「あはは、でもまぁちゃんと免許取れたらの話ですけどね」


 今やっと仮免を取って、2段階目に入ったぐらいだからまだまだ安心はできない。

 中島さんは車の話になると意気揚々に語り出した。

 俺はその話を聞きながら時々来るお客さんの相手をして時間が過ぎていく


 そして、時計の針が6時を指した頃、俺の今日のバイトが終わりになった


「あ、斉藤君。今日6時までだったよね?」

「はい、おつかれさまでした」

「うん。おつかれさま」


 エプロンを取りながら休憩室の中へ入る

 ポケットの中から携帯を取り出し、確認すると豊臣から合コンの誘いメールが来ていた

 今日の相手は大学生らしい。あまり行きたくはないけど焼肉の食べ放題飲み放題らしく少し魅力的だ。

 俺は悩みながら休憩室のテーブルに置かれている飴を口の中に入れる

 バイトの終わった後にここで飴を舐めながらお茶を飲むのが俺の小さな楽しみだ。

 早く家に帰ればいいのだが、ここでバイト仲間と話すこともある。それが結構楽しい


 俺はお茶を飲みながら携帯を触っていると店側のドアから同じアルバイトの和志君が入ってきた


「疲れたぁ~…あ、潤一くんおつかれ~」

「うん、お疲れ様」


 和志君は長いことここでアルバイトをしている人で俺と同い年。

 俺がここに入った時に色々教えてくれたりして仲良くなった


「ホント品出しは腰に来るよ…」

「お爺ちゃんじゃないんだから大丈夫でしょう」

「いや、僕は体育系じゃないから。高校の部活も帰宅部だったし」


 和志君は腰をポンポンと叩きながら椅子に座る

 俺がお茶を注いで出すと「ありがとう」と言って飴をなめた


「そういや、次の人来ないなぁ」

「東さんだっけ?」

「そそ。そういや知ってる?東さんって可愛いけど彼氏いないらしいよ」

「へぇ」

「あ、反応薄いな。もしかして潤一くん彼女いたりする?」

「俺はいないけど…ちょっと東さんに特別な感情無いかなぁ」

「あははは、まぁ誰にでも甘えちゃう人だしね。彼氏いないって言っても明日にはできてそうだし」


 和志君は笑いながら、近くに置かれている中島さんの私物である漫画に手を伸ばす

 アルバイトの子たちのために置いてくれていて、休憩時間は自由に読んだりできる

 しばらく和志君と話していると思ったより話していたのか6時20分近くになっていた


「来ないね、東さん」

「もしかして今日、僕1人?」

「いやそれは無いと思うけど。来るでしょう」

「はぁぁ~…来てほしいなぁ」


 和志君はお茶を一気に飲み干して、漫画を元の位置に戻す

 そして、椅子に座りながら背伸びをして「あぁぁぁ~」と喘いだ

 ちょうど和志君が伸びきった時にバンっ!と店側のドアが開くとびっくりしたのか、和志君はこけそうになる


「あ、よかった。斉藤君!今日夜行けたりしない?」

「え?」

「いや、なんか東さんが風邪引いたとかで休みたいって言ってきたんだけど、今日僕は娘の誕生日で」


 中島さんは申し訳なさそうな顔で手を顔の前で合わせてくる

 確か中島さんの娘さんは5歳って言ってたっけ。ちょうど可愛い頃だ

 それにお父さん大好き~とか言ってそうな歳だから、どうしても出たいんだろう


「大丈夫ですよ。暇なので」

「ほんッとごめんね!あとでお弁当買ってくるから」

「ありがとうございます。ってことで和志君よろしく」

「よかったぁ…1人じゃなくて」


 和志君はホッと胸を下ろして椅子から立ち、店の方へ入っていく

 中島さんは何度も「ありがとう」と言って店の方へと入って行った

 俺は東さんが30分からなので25分ぐらいまで休憩することにして、豊臣に合コンの断りのメールを送った


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