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◎第22話◎ 加藤さん。

 

 あれからもう数日。

 私は仕事で潤一のことを忘れようと頑張った


「谷川くん、本当に君は素晴らしいよ」


 杉本部長が嬉しそうに資料を見ながら褒めてきた

 おそらく今回のプロジェクトのことだろう


「いえ、私だけではありませんので」

「それでも君は素晴らしい」

「ありがとうございます。それでは私は職場に戻りますので」

「あ、谷川君。よければなんだけど今日どうかな?」

「………すみません。今日はちょっと」

「そうか…残念」

「すみません、では失礼します」


 今は誰とも飲もうとは思わない…

 今は男性と飲む気分じゃない、潤一のことを思い出してしまう

 私は仲間の所へ行き、皆に今回の報告をする。すると皆は大喜びした


「今日はホントに大変だったから嬉しさが倍ですね!」

「そうね。本当に大変だったわね。加藤さん、本当にお疲れ様」

「いえいえ、谷川さんのおかげですって」

「ありがとう。それじゃ私はまだちょっと仕事が残ってるから皆は先に帰ってもいいわよ」


 残りの仕事は1人でできる。

 皆は最初の方は遠慮をしていたけど、大丈夫と言い切ると帰っていく

 そして、1人になった途端、力が一気に抜けてしまった


「はぁぁぁ…」


 今まで大きな仕事があったからなんとかなっていたけどこれからはどうしよう…

 少しでも暇ができてしまうと潤一のことを思い出してしまう

 もう割り切らないといけないのに…



「た、に、が、わ、さん」

「きゃっ」


 突然温かいモノが頬に触れる

 慌てて顔を上げるとそこには加藤さんがニコニコしながら立っていた


「驚いちゃいました?」

「え、ええ」

「すみません。でも、ちょっと気になって戻ってきちゃいました」

「仕事なら私だけで」

「いいえ。谷川さんの事ですよ」


 加藤さんは自分の席から椅子を持ってきて私の横に座るとコンビニの袋の中からお酒を取り始める


「今日はここで飲みましょうよ。女2人で」

「え、でも」

「大丈夫です。ここの警備員とは知り合いですから見逃してくれますよ」

「でも」

「はい、かんぱーい」


 思わずこのノリに流されるように乾杯をしてしまった

 加藤さんは嬉しそうにビールの蓋を開けてグイッと飲み始める


「今日は谷川さんのお話聞いちゃいますよ~。もう無礼講です。私の方が部下ですけど、年上ですから」

「え?」

「え?って私、谷川さんより2つ上ですよ?」

「そ、そうだったの…えっと…ご、ごめんなさい」

「あはは、別に2つぐらい何も変わらないですけどね~。それより、どうします?いきなり本題かなぁ、それともこう、楽しげなお話をしますか?」

「えっと…楽しげなお話で」

「そうですね~。最近、杉本部長が谷川さんと接近しようと頑張ってるらしいですよ?」


 そ、それは本題じゃないんだろうか…

 加藤さんは楽しげにビールを飲みながらおつまみのチーズをパクッと食べる


「正直、私はあんまりあーいうの好きじゃないんですけど、谷川さんはどうなんですか?」

「どうなんですか…って聞かれても…」

「あははは、ですよね。それじゃもう本題です。最近、谷川さん仕事に熱中してますけど何かありました?」

「…特に何も」

「本当ですか?そうですねぇ…一緒にファミレス行ってから何かを忘れたいかのように仕事してましたよね?残業も増えましたし」

「それは仕事が」

「嘘ですね。いつもの谷川さんなら嬉しそうに帰宅してましたよ?」

「………」


 前なら潤一が家に居たりしたから楽しかった…

 だけど、今はもう…


「…ふぅ、やっぱり何かあったんですね。お姉さんが聞いてあげましょう!」

「…でも」

「大丈夫、たぶんだけど谷川さんよりは恋愛経験豊富ですから!」


 グッっと握りこぶしを作って、それを胸に当てる

 もしかしたら…もしかしたら、加藤さんになら話してもいいのかもしれない

 この悲しい気持ちが少しでも和らぐかもしれない…


 私は息を深く吐き、今心の中にある悩みを打ち明けた



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