◎第14話◎ 杉本部長
潤一のおかげで風邪もばっちり治り、仕事にも集中できるようになった
すると、難しいプロジェクトもスイスイと進んでいく
「谷川くん、君は本当に素晴らしいね」
「杉本部長。ありがとうございます」
今回のプロジェクトも無事にイケそうだ
これも潤一のおかげなのかな?
「本当に谷川くんは素晴らしいよ」
「いえ、チームが良いからです」
「チームはリーダーで決まる。リーダーが悪ければどれだけ良い部下を持っていても腐らせるだけだからね。でも、谷川くんは部下を輝かせる力を持っている。ぜひ僕も見習いたいよ、あはは」
「杉本部長も素晴らしいと思いますが?」
「僕なんて所詮、父の会社の跡取り息子だよ。父の権力でここに座ってるだけさ」
杉本部長は照れたように笑う
でも、杉本部長は素晴らしい人だ。冷静に周りを見て、個人の能力を見極める力は本当に素晴らしい
誰と誰を組ませれば良いかとかを見極めるのは難しい。
でも、それを簡単にしているのだからやっぱり凄い人だろう
「谷川くん、今日空いているかい?」
「はい?」
「あ、彼氏がいるよね。ごめん、今の忘れて」
「あ、いえ。今日は大丈夫なのでお付き合いしますよ」
一度飲んでみたかったのはある。
私がこの会社に入ってから何かと気にかけてくれた人だ
恩返しもしたい
「そうか…誘ってよかった…」
「はい?」
「いや、何でも無いよ。それじゃ今夜仕事が終わったら近くで飲もう」
「ええ。それでは私は」
頭を下げて、部屋を出る
杉本部長と飲むのは初めてだけど、悪い人では無い
それに最近、潤一はレポートがあるとかで忙しいから中々会えないし、家に帰っても寂しいってのもある
もちろん、杉本部長に特別な感情は無い。だけど、恩は感じてるから1度ぐらいなら良いだろう
私は仕事場に戻り、今夜のために仕事を済ませていく
そして、19時にすべての仕事が終わり、ちょうど杉本部長からメールで入り口付近で待ってるというのが来た
「すみません、お待たせして」
「いや、大丈夫だよ」
急いで向かうと優しく微笑む杉本部長が立っていた
私と部長は一緒に少し歩いて近くにある居酒屋の中に入る
ちょっと部長とはイメージが違う気もするけど、お洒落なバーとかに連れて行かれても困ったから安心した
「僕のイメージとは違うかい?」
「い、いえ。でもこういう所来るんですね」
「僕好きなんだよ。こういう賑やかな場所。谷川君はお酒大丈夫かい?」
「あ、はい」
「それじゃすみません!生2つで」
部長が店員さんに適当に注文していく
注文の仕方・店員さんと顔見知りな所を見る限りじゃ結構ここに来ているらしい
「それにしても、まさか谷川くんと一緒に飲めるなんてね」
「え?」
「ほら、谷川君ってあまり人と飲まないと思っていたから。あ、ごめん、気にさわったかな?」
「いえ、確かに仕事仲間と飲むより、家で飲むことが多いですね」
「あはは、僕と同じだね」
部長は笑いながらビールを飲み、からあげをつまむ
確か、潤一がここのからあげも美味しいって言ってたっけ
1口食べると確かにジューシーで美味しい
部長とは会社の事とか最近起きた事などを話して楽しく過ごす
するといつの間にか時間は10時になろうとしていた
さすがにそろそろ帰らないと。
「あ、私そろそろ」
「あ~もうこんな時間か。それじゃ出ようか」
「はい」
部長は「今日は奢らせてもらうよ。頑張ってくれたお礼に」と言ってお勘定を払ってくれる
ちょっと新鮮な感じだ。潤一とは割り勘が多い、本当は奢ってあげたいけど潤一が嫌がる。
勝手に払ってしまうと子供扱いされたって拗ねたりするから極力割り勘にする。でも、拗ねた潤一も可愛いから時々勝手に払っちゃうんだけど。
居酒屋を出ると部長はタクシーを呼んでくれた
「それじゃ今日は付き合ってくれてありがとう」
「いえ、奢ってくださってありがとうございました」
「ううん。それじゃまた明日」
「あ、部長は乗らないんですか?」
「一緒じゃ悪いだろう?」
「いえ、大丈夫ですよ。どうぞ」
「すまないね」
奥に詰めて、部長を乗せてから私の家まで向かってもらう
その間も部長と楽しく話しをして、15分後、私の家の前に着いた
「すみません、タクシー代まで」
「あはは、大丈夫。僕は何もしてないのに君たちより給料貰ってるんだからこれぐらいしないとね。
それじゃ今日はありがとう。また明日」
「はい。でわ、失礼します」
最後に頭を下げてタクシーが見えなくなるまで玄関前に立つ
そして、タクシーが見えなくなってからマンションの中に入ろうとすると潤一の姿がこっちに向かってくる
「美穂さん!お帰り!」
「あ、潤一来てたの?」
「…うん、ついさっきね。今まで仕事?」
「そうよ」
飲んでいたけどあれも上司との関係を切らないための仕事のうち。
潤一と一緒にエレベーターに乗ると今日は何があったとか授業だるかったとか少しハイテンションな感じで楽しそうに話しながら一緒の時間を過ごした