ずるいずるいと言う義妹が婚約者を譲れと言ってきました
誤字報告ありがとうございました! どこが義理の関係なのかわかんなくなってた!
さらに誤字報告ありがとうございました!
「お義姉さまばかり、ずるいですわ!」
またか。私はうんざりした。
「何がずるいというの?」
「お義姉さまのケーキにだけ、チョコがのっています!」
うわー、そんなことで文句を言ってきたのか…。
「それはこのケーキが私の誕生日のお祝いだからよ? あなたのお誕生日にも、チョコプレートがのっていたでしょう?」
「でもでも、私の時よりずっと大きくておいしそうです!」
「……そんなこと言われても、これは、デザート係のシェフが、私の為に、私の好きなナッツを入れて作ってくれたものだし…」
私が言い淀んでいると、
「マチルダがこんなに食べたがってるんだ、譲ってやりなさい」
お父様がそう言った。
「ごめんなさいね、我慢のきかない娘で…」
私の新しい義母となった父の後妻が、申し訳なさそうに言う。
「はい…」
私は侍女に頼んでチョコプレートを別皿に移してもらい、マチルダに渡した。
「わー! お義姉さま! ありがとう! うれしーい!」
マチルダが満面の笑顔になって、チョコプレートをかじった。
「ははは。マチルダはかわいいな」
お父様も笑顔になった。
そう、マチルダはかわいい。思わず守ってあげたくなるような、小動物のような可愛らしさを持っている。私にはないものだ。
そして、お父様とお義母様がマチルダを甘やかすので、なんでも自分の思い通りになると思い込んでいる。割を食うのはいつも私だ。
「クラウディア、私からの誕生日プレゼントだよ」
お父様が、包装された小箱を差し出した。
「まあ、うれしいです。部屋に戻ってから開けさせていただきますね」
「ん? なぜだい? ここで開けておくれ。クラウディアが喜ぶ顔が見たいよ」
(ここで開けたら、たぶんまたマチルダにずるいって言われるから、開けたくなかったんだけど…。)
「……そうですね、では開けさせていただきますね」
包装を開けて中身を取り出すと、横からマチルダが手を伸ばして私からとりあげ、
「キャー! なんて素敵なオルゴール!ずるいずるい、お義姉さまったらこんな素敵なプレゼントもらってずるーい!」と言い出した。
想定通り。
「ずるくはないだろう、誕生日なのだぞ」
とお父様が言うと、
「だってお義姉さまは私よりずっと恵まれているのに! その上こんな素敵なプレゼントをもらえるなんてずるい!」
出た。
「お義姉さまは恵まれている」。
これが出るとマチルダの言い分はみんな通る。
「しょうがない、クラウディア、マチルダに譲ってあげなさい」
「はい…」
やっぱりだ。もう慣れた。
私は、せめて記念に包装とリボンだけでも取っておこうと、オルゴールを渡そうとしたが、
「箱もリボンもかわいいからちょうだい! ね?」
と言われ、包装ごとマチルダに渡した。
私には、アラン様という婚約者がいる。爵位を持つお父様がいる。
その爵位は私の婿となるアラン様に継がれる。
マチルダの肩書は公爵令嬢だけど、お父様と血がつながっていないし、養子になっていないので継承権がない。婚約者もいない。
それだけでも、きっと私は恵まれているのだろう。
誰が主役かわからないような誕生パーティーを終えて、自分の部屋に戻ってきた私は、がらんとした部屋を見回して、ため息をついた。
このあいだまではここにあった、お気に入りのクッションも、市場で気に入って買った壁時計も、去年のお父様からのプレゼントだったガラスの人形も、今は全て義妹の部屋だ。
宝石箱を開けた。何も入っていない。
ネックレスも指輪もブローチも、全部全部、マチルダが「ずるいずるい」と言って持っていった。
いつまでこんな生活が続くのかしら。
(ああでも、明日はアラン様が来て下さる日だもの、きっといい日になるわ)
私はなんとか気分を変えて、明日のために睡眠を取るのだった。
◇◇◇
翌日、アラン様の待つテラスに向かうと、マチルダがそこにいた。
「マチルダ…なぜここに?」
「ああ、少し早く到着してしまってね。君が来るまでの時間つぶしにつきあってくれていたんだよ」
アラン様が答える。
「お義姉さまのお支度はまだだったから、その間だけ、アランさまとおしゃべりさせてもらっちゃいました~」
笑顔で言うマチルダ。
いや、支度はとっくにすませてたし…。早く着いたって知ってたら、すぐに来たんだけど…。
わざと私に連絡しないで、アラン様と話してたの?
「せっかくだから、私もお茶に参加していいですか? アランさまともっとお話ししたいし!」
無邪気そうな顔でマチルダが言う。
「あはは、マチルダ嬢はかわいいことを言うね。僕はかまわないよ。クラウディアもいいだろう?」
「……そうですね」
(私は恵まれているんだから、マチルダのこのくらいの望みは許してあげなくちゃ…)
クラウディアは感情を押し殺して、2人に笑いかけた。
「そうだ、1日遅れちゃったけど、プレゼントを持ってきたんだ」
(あああ、アラン様、それはマチルダがいない場所で出してほしかった…!)
私の願いもむなしく、アラン様は素敵な髪飾りを私に差し出し、予想通りマチルダの「ずるいずるい」が始まってしまった。
根負けしたアラン様は、
「次に来るときに代わりのものを持ってくるから」
と言って、髪飾りをマチルダに渡した。
「アランさま、ありがとうー!」
とびっきりの笑顔で言ったあと、マチルダは私をちらりと見た。優越感にあふれた顔を見て、
(それでも、私は恵まれているんだから…)
と心の中でつぶやいて、力なく微笑んだ。
◇◇◇
「お義父さまにお願いがあります」
領地の視察に行っていたお父様が帰ってきたため、ひさしぶりに家族が揃った夕食の場で、マチルダが口を開いた。
「なんだい? あらたまって」
「アランさまと婚約したいのです」
「……」ついに来たか。想定通り。
「それは無理だ」お父様、即答。
今まで何でもお願いを聞いてくれたお父様なのに、この返事は予想外だったのだろう。うろたえながらマチルダが言う。
「なぜですか? 私のほうがアランさまを好きです。アランさまも私のことをかわいいと言ってくださいます。どうかお義父さま、アランさまと結婚させてください」
「アラン君が承知するわけがない」
「なぜ!? お義父さまだってお母さまだって、お義姉さまより私のほうが好きですわよね? アランさまだって…」
「何を勘違いしているんだ、クラウディアのほうが好きに決まってるじゃないか」
「え…」驚愕するマチルダ。
「頭が弱いからしょうがないと思っていたが、まさかここまで身の程知らずなことを言い出すとは…」
お父様、直球。
「なに、何を言ってるんです? 頭が…弱い?」
「弱いだろう。15年も教育を受けて、何一つ身についていない。マナーも教養も刺繍もダンスも子供以下。まさか自覚がなかったのか?」
「そ、それは、本気出してないからで…私は、やればできる子です!」
自分で言っちゃうんだそれ。
「いつ本気を出すんだ」
「だ…だって、お義父さまもお母さまも、勉強しろとか、まじめにやれとか、言わなかったじゃないですか! 何も言われなかったら、やらなくていいんだって思いますよ!」
「おまえの母親は、ずっと叱り続けてたらしいじゃないか。貴族として生まれて、この年まで何も学んでいない人間に、口を出すわけないだろう。学習できないんだから無駄だ」
「ひどい……! お母さま! お義父さまがこんなひどいことを!」
助けを求めて自分の母親を見るマチルダ。
「お義父様の言う通りです」ばっさり。
「あなたにみんなが優しくしてくれたのは、あなたが恵まれない子だったから。不憫だから優遇してもらえただけです。つけあがるのもいい加減にしなさい」
「お母さま……?」
溺愛されていると思っていた両親に、こんなふうに怒られるとは思ってもいなかったのだろう。
地球外生物でも見たような顔になっている。
「頭も悪いし素行も悪い、見た目も悪いし何の取り柄もない。ここまで最底辺の子に、怒れるわけがないでしょう」
剛速球きた。
「ちょ、ちょっと待って、見た目? 見た目も悪いってのはないでしょう? みんなかわいいって…」
「かわいいわよ、ハムスターみたいで」
「ハムスター」
「背が低いのに大きな頭、丸い目と出っ歯、ずん胴で短い手足、小動物みたいでかわいいわ」
お義母様の言葉に、父も私もうんうんとうなずく。
「でも美女からはほど遠い」
ゴーン
でかいハンマーで殴られたようなマチルダ。
残りHPはきっと一桁。
「あなたと二人で暮らしてたときは気にならなかったけど、クラウディア様と一緒に暮らしてからは…どうしても比べてしまう。美しく賢く、動作のひとつひとつが絵になり、ダンスも刺繍も、淑女としてのたしなみをすべて身に着けていらっしゃるクラウディア様。それに比べたらうちの娘は、なんて馬鹿で不細工なんだろうと思ったら、不憫で…」
「ちょ…」マチルダはもう息も絶え絶えだ。
「つい甘やかしてしまった。クラウディア様にも本当に迷惑をかけて、ごめんなさい」
頭を下げるお義母様に、私はあわてて言った。
「い、いいんです、私が恵まれているのは本当ですから! 努力できるってことも才能だし、その才能がない人には無理なことだって、わかってますから…!」
「ぐふっ」マチルダが胸をおさえてひざをついた。
「フォローのふりしてトドメさしにいくか…」
お父様が人聞きの悪いことを言う。
「とにかく、マチルダは『バカでかわいい小動物』として扱っていくから、それ以上の待遇は期待するな。結婚相手は、したかったら自分で探せ。以上」
そこで解散となり、orzの状態で動けないでいるマチルダを置いて、食堂を出た。
私は恵まれてる。わかってる、わかってるけど…
あー! すっきりした!!!
私も、努力する才能がないので、「ぐふっ」となりながら書きました。




