オムマ入学試験 第二話
空は澄み渡っていた。
道の両脇には花が並び、芝は短く整えられている。
夕暮れがゆっくりと降りてきて、空気は妙に張り詰めていた。
ダイケは隣を歩く新しい相棒から目を離せなかった。
頭は切れそうだ。間違いなく賢い。
だが森へ向かい始めてから、ずっと間の抜けた笑みを浮かべている。
……なのに、どこか英雄みたいな雰囲気もある。
長い沈黙のあと、オットーが真顔になった。
「オーブ、どっちが持つと思う?」
「俺は短剣がいくつかある。中距離はいける。剣のほうが得意だけどな」
「ふむ。俺は正面から殴るタイプだ。動きは遅いけど一撃は重い。体は鍛えてきた。タルモはまだ少ないが、打たれ強さと火力には自信がある」
ダイケは少し考えた。
「なら俺が持つ。後ろに下がる。……それより、戦闘中にオーブが壊れたらどうなる?」
「ああ。それは学長に聞けばいいな」
にこやかに言うオットー。
……あいつに話しかけたいわけないだろ。
数分後、二人は森の入口に着いた。
他のペアも集まっている。テントの横には学長が立っていた。
「来ました!」
オットーが元気よく声を上げる。
全員が揃うまで、また時間が流れた。
太陽が地平線へ沈み、緊張がさらに濃くなる。
学長が背筋を伸ばし、声を張った。
「よく聞け。これより水晶オーブを配布する」
テントから補助員が現れ、各ペアに一つずつ渡していく。
「配布完了後、森へ入るまで十分間の猶予を与える。その間、攻撃と略奪は禁止。位置取りのみ許可する」
「水晶オーブを三つ確保し、このテントへ戻れ。それが第二段階突破の条件だ」
オットーが即座に手を挙げた。
まさか本当に聞くのか……?
「何だ、斧の戦士」
学長は露骨に苛立っていた。
オットーは一度息を整える。
「戦闘中に相手のオーブを壊した場合、あるいは自分たちのが壊れた場合はどうなりますか?」
学長の眉間にしわが寄る。
「当然だ。タルモで再構築する。そんな初歩もできぬ者に、この大学にいる資格はない」
再構築?
初歩だと?
俺はまだまともにできないのに……。
ここに来てから、ずっと置いていかれている気がする。
ダイケはチームのオーブを受け取った。
全員に配り終えると、空気が一気に重くなる。
「第二段階、開始だ」
学長が歪んだ笑みを浮かべる。
「森へ入れ」
ダイケはオットーに近づき、小声で言った。
「少し待とう。どこに流れるか見る」
「了解」
親指を立てるオットー。
大半のペアが走り出したあと、ダイケが言う。
「残り五分。西と中央に多い。俺たちは東へ。高所を取る」
二人は森へ駆け込んだ。
――まだ動いていない数少ないペアの中に、あの二人の少女もいた。
「言い争ってても進まない」
一人が苛立つ。
「私が進路を見る。あなたは戦闘担当」
「はいはい。じゃないと落ちるしね。……せめて名前くらい教えて。私はタラ」
「キラ。東へ行く。あっちは少ない」
その頃、ダイケとオットーはわずかに高くなった場所へ到達した。
ちょうど十分が経過する。
「オットー、俺は木に登る。索敵する。理想は消耗した連中を叩く。地上は任せた」
息を整えながら言う。
オットーが固まった。
「消耗待ち? 冗談だろ。そんなのやらない。正面から一組選んで戦う。名誉がない」
ダイケはすでに木の上から森を見渡していた。
「理屈は分かる。でも勝率は下がる。逆にやられる可能性もある」
「落ちてもいい。来年また受ける。信じろ。俺は名誉を守りたい」
「……分かった。横取りなし。正面勝負だ」
その瞬間、オットーが身構えた。
「来るぞ」
ダイケは木の上で息を殺す。
矢が飛んだ。
一直線にオットーへ。
彼は双刃の斧で弾く。
直後、槍使いが突進。
不意打ちだ。
オットーはぎりぎりで受け止める。
……槍の方はタルモ感知が甘い。腕と脚に集中。
弓は均等に回している。たぶん俺の位置も読んでる。
ダイケが分析する。
次の矢が彼へ向かった。
ダイケは木から飛び降り、かろうじて回避する。
オットーを助けたい。
だがオーブは弓側のはずだ。
あいつを落とす。槍はオットーを信じる。
ダイケは脚にタルモを流し、一気に距離を詰める。
感知は維持。
走りながら矢が飛ぶ。
剣でかろうじて弾いた。
くそ……脚強化と感知の同時維持はきつい。
木の陰に滑り込む。
距離は近い。
向こうではオットーと槍使いが拮抗している。
互いに消耗が激しい。
いつ第三者が来てもおかしくない。
……勝てるのか?
胸の奥が締めつけられる。
ダイケは木の裏で息を整えた。




