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ダイケ  作者: ochitsuki
3/4

ありがとう

美しい夕暮れの中、炎の都ホノオの王都は人であふれていた。商人や貴族が大半だが、別の目的で集まった者たちもいる。オムマ魔法大学の入学試験が、明日に迫っていた。


「ダン、この短剣すごいよ。深紅の色、刃の鋭さ、全部好きだ。これが欲しい。しかも、小さな仕込みがある……ん? 何に使うんだ?」


「若いの、その短剣はストゥーシャ産だ。大陸の最北にある王国さ」

短剣を売っている商人が答えた。


「へえ、それが何か関係あるの?」

ダイケは首をかしげた。


「ははは。地理に疎いようだな。ストゥーシャでは、タルモを使った温度操作の研究が盛んでね」


ダイケは話を聞いていたが、まだ短剣との関係が分からなかった。


「その仕込みにはオリーブ油を入れる。温度を制御できれば火を生み出し、“炎の短剣”として使える。もっとも、その技を扱えるのはストゥーシャでも一流の魔法使いだけだがな」

商人はそう説明した。


「えええ!? すごすぎる……! いつか絶対に覚えたい!」

ダイケは目を輝かせた。


「それで、値段はいくらだ?」

ダンが尋ねる。


「金貨一枚だ」


ダンは少し困った顔をした。短剣一本にしては高い。それでも彼は懐から金貨を取り出し、商人に渡した。


ダイケは短剣を受け取り、興奮気味に言った。

「本当にありがとう、ダン。最高だよ」


「明日が十六歳の誕生日だって言ってたろ。忘れてないさ」

ダンはそう返した。


「へへ、本当にすごい人だよ、ダン。さあ、街を見て回ろう。ここは初めてなんだ」

ダイケは笑った。


二人は街を歩き回った。ダンは以前にもホノオの都を訪れていたが、名物の菓子や壮麗な建築に、また心を奪われた。一方のダイケは、夢の中にいるようだった。こんなに美しい場所があるなんて知らなかった。星空が、その感動をさらに深めていた。


朝日が昇ったばかりだというのに、ダイケとダンはすでに起きて、支度をしていた。


「じゃあ、僕は試験だ。ダンは……何をするの?」

ダイケが尋ねる。


「俺は自国の酒を売りに行く。焼酎とかだな。領主様に献上する約束でね。オゼロとホノオの文化交流ってやつさ」

ダンは答えた。


「えっ、そんな重要な役目なの!?」

ダイケは驚いた。


「まあな。故郷じゃ、それなりに名の知れた商人でね」


ダンは誕生日を祝うべきか迷った。試験がある以上、楽しめるはずもない。触れない方がいいだろう、そう判断した。


ダイケは別れの言葉に悩んでいた。試験に受かれば、もう二度とダンに会えないかもしれない。それでも、きちんと別れを告げたかった。


「ここで別れだね。もう会えないと思う、ダン」

ダイケは言った。


「ああ、そうだな。これが最後の会話だろう。寂しいが、残りの時間を楽しむさ。君が目標を叶えることを願っている。結局、何を目指しているのかは聞けなかったが……成功を祈る。いい子だ」

ダンは落ち着いた声で答えた。


「そうですね……少し、つらいです。でも、それぞれの道を行かなきゃ。あなたは僕を成長させてくれた。温かさも、教えてくれました」

ダイケは物悲しい目で言った。


ダンは深く息を吸い、静かに言う。

「一つだけ頼みがある。俺を覚えていてくれ。この旅を、忘れないでくれ。心にしまっておけ」


その瞬間、ダイケは亡くなった両親のことを思い出した。一緒に過ごした時間が、胸によみがえる。なぜか、この人の温かさが、それを呼び起こした。気づけば、涙が一筋こぼれていた。


「もちろんだよ、ダン。ありがとう……さようなら」


ダイケは大学へ向かって歩き出した。別れの場面が、頭から離れない。もう少し話せばよかったかな……でも、無理に引き延ばすのも違ったかもしれない。そう考えた。


少し黙ったあと、彼は自分の頬をぱん、と叩いた。

「集中しろ。試験だ。絶対に受かる。いつまでも考えてる場合じゃない」


オムマ魔法大学は巨大で、圧倒されるほどだった。入口には多くの人が集まり、年齢は十五から二十歳ほどが多い。状況を把握するため、ダイケはタルモ感知を発動した。大半は自分と同程度のタルモ量だ。


だが、視線をずらした瞬間――

自分の倍はあるタルモを持つ者を感知した。


ダイケは完全に混乱した。

一生をかけて鍛えてきた。自分より強い者がいるのは分かる。だが、倍? そんなことが可能なのか。生まれてから毎日、狂ったように鍛え続けても届かない量だ。そう思った。


そのとき、大学の中から一人の男が現れた。

風変わりな姿だった。顔に大きな傷、真っ白な髪、皺は少ない。戦士のような軽装の鎧をまとっている。


男は大きく息を吸い、ほとんど叫ぶように言った。

「よう、ちびども。ずいぶん集まったな。ざっと二百人ってところか。だが、通過できるのは二十五人だけだ。あとは省略する。俺がこの大学の学長だ。これから、この試験のルールを説明する」

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