第8話 最強の兄弟1
セミの鳴き声が減っていく。夏休みは終わりを迎えようとしていた。それでも、夏特有の暑さはまだまだ続きそうだった。
「そろそろいいだろう?」
席の誕生日席に座る者が発言する。
「行こうぜ!兄ちゃん!」
「ああ、”第2位”!今から作戦通りに俺たち二人が行くからな」
「ああ、頼むぞ」
「本当に彼を利用するの?もし死んじゃったりしたら……」
一人の女性が発言をする。
「そしたらそれまでの男だったってだけさ!」
少し明るい少年が言う。
「それじゃあ困るのよ……。」
「なんだよ?”第3位”のお気に入りだったりするのか?」
「………まぁいいわ……」
「誤魔化してんの〜?」
「そろそろ時間だ!」
第2位が宣言すると教室は静かになる。
そして二人の兄弟が立ち上がり、どこかへと向かう。
刀夜は夏休み……修行を毎日のように行った。
真春の盤の使い方も慣れてきたこともあって、真夏の盤の習得を目指していた。
「夏の盤の神様にはいつになったら会えるんだ?」
「夏休みが始まった時に言ったが本当にそう簡単に解放をすることは出来ない、その時を待つ他ないじゃろうな……。」
(お手上げ状態ってわけか…)
「まぁ今日はゆっくり休むといい…」
そう言われた刀夜は現実世界に戻ってくる。
「おぉ戻ってきてたのか?」
剛には説明しているため、諸々の事情を知っている。
「おう!少し組手でもしに運動場にでも行くか?」
俺は剛を誘うが、
「すまん……今日は少し休もうと思って……」
「そうか……まぁせっかくだし、一人で運動してくるよ!ゆっくり休めよ?」
「うん、ありがとう!」
刀夜が外に出た後に剛はニヤリと笑う。その顔は段々とピエロの顔になり、
「これでいいのですか?」
「ああ、こういう時のためにお前を中間テストで救ったんだ。まだまだ役に立ってもらうぞ?」
「はい……”第2位様”。」
刀夜は運動場に出た。おかしなことに誰もいない。
(いつもなら少なくても2人ぐらいは鍛錬をしている生徒がいるのにな……)
そう思いながらジョギングを始めようとした時、後ろから気配がする。
刀夜は腕を上げてその気配の方向にガードを構える。。すると、茶髪の男の拳が飛んできていて、刀夜は反射でそれを防ぐことに成功する。
……が、さらに背後からもう一人、黒髪の男が出てきて俺の足を勢いよく蹴りあげる。俺は飛んで回避しようとしたが、最初に拳を向けてきた奴がかかと落としを刀夜の腕に叩き落とす。
俺は避ける余裕がなく、そのまま受ける。その威力はただのかかと落としとは考えられない威力で、地面にヒビが入り足が土に埋まりそうになった。
(二人もいるのかよ!?)
茶髪の男が間髪入れず刀夜の足を狙っていた。その蹴りを刀夜は回避することができず、足を飛ばされ刀夜の身体は空中に浮く。
(一旦この場から離れないとやばいな……)
俺は空中に浮いた瞬間刀を地面に刺し、その刀の反動で飛び、その場から離れる。
「馬鹿な……!刀を手放すなんて!?」
茶髪の男が驚いているが……
「妖刀 四季」
俺はそう叫ぶ、すると妖刀は意志をもち、俺の方向に帰ってくるように動き出す。
「自己紹介もなしに襲撃か?」
刀夜が四季を回収しながらそう煽ると
「そうだな……自己紹介はしておこう。仮にもこれから仲間になるかもしれないからな。」
すると黒髪の男が
「俺は闇鬼!順位は第9位!」
(おいおい、おかしいだろ!第9位?それに……もう一人も気配がおかしい。)
そうしてもう1人の茶髪の男を睨みつける。
「俺は光樹…闇鬼の兄だ。順位は第8位。よろしくな」
「そんな最強の兄弟が俺になんの用だ?」
すると光樹が答える。
「簡単なことだよ……お前の力を測りに来た。」
そうして目の前から光樹が消える。
(俺の能力は”光操る能力”、つまり光速で動ける。)
光樹は光速で動き、刀夜の周りで翻弄する。
「速さは夏休みに散々桜で慣れた!」
夏休みの修行で桜の速さに慣れ、動体視力が上がっていた刀夜は意識を目に集中させる。
だが......
(見えない!?)
俺はどこから来るか分からないまま背中から強打を受ける。
「兄ちゃんが速さだから、俺は火力でバランスを取っている。」
「ちなみに能力は”闇を操る能力”だ!」
闇鬼の方は自分の能力について語ってくる。
「バカっ!能力をそんな堂々と教えるんじゃね〜!」
光樹は闇鬼に優しく怒る。
刀夜は強打を受けた部分を「春の盤 桜の波動」で部分回復し、立ち上がる。
「そんな簡単に能力をバラしてくれていいのか?」
俺が聞くと……光樹は笑い出す。
「1対2だし、どちらも順位は一桁、勝てるわけないだろ?」
(確かにそうだ……二人相手だとやはり翻弄される。それに光樹のスピードはあまりにも早すぎる。)
「でもさっき兄ちゃん怒って......」
そこまで闇鬼が言ってから、
「そういことにしとけばいいんだよ..」と小声で言い返す。
(2人相手...しかも高順位)
長期戦は不利だと察した刀夜は覚悟を決める。
刀一度しまい……。
「修行の成果見せてやるよ!」
「春の盤 解放!」
「神刀 佐保姫!!」
俺はピンクの桜の模様のある裃を纏い、刀抜く。
「真春の盤 「桃千鳥」」
桜の鳥が光樹と闇鬼に飛んでいく。
「少し想像以上だな……」
そう言って、二人はジャンプして二手に別れる。
光樹は光速で移動しているため、闇鬼を狙って桃千鳥は追尾する。
刀夜もつかさず、走る闇鬼の目の前に瞬時に移動し、刀を振る。
「真春の盤 「春一」」
この剣術は元々春の盤の技だが、夏休みの修行で強化することに成功した。
刀夜の刀と桜の鳥が闇鬼を前と後ろ同時に攻撃をしようとした時。
「闇鬼!」
そう叫んで光樹が光速で闇鬼を助ける。
俺は桃千鳥とぶつかりそうになり、やむを得なく、桃千鳥を解除する。そのまま俺は空中で一回転してからサッカーゴールの上のポストに着地する。
(いいぞ!実践でもかなり技を並行して使えている。新技も成功した。.....じゃが、スピードが足りないのう。)
佐保姫が話しかけてくる。
「ああ、それが今困っている。」
(やはり夏の盤を解放できなかったのが痛いな。)
佐保姫の言葉に刀夜は耳を傾ける。
「どういうことだ?」
(ステータスで分けると、春の盤は威力重視で考えると、夏の盤はスピード重視なんじゃ!)
「なるほど…それは神刀にも反映される」
(そうじゃ)
そんな会話をしていると。闇でできた銃弾?が飛んでくる。俺はそれを軽く避ける。
「光陽!」
刀夜の周り全体がピカピカにひかり、何も見えなくなる。
おそらく光の能力で目眩しをしているんだろう……俺は前が見えず、どこからか飛んできた闇の銃弾に気づけずに当たっていた。
まだ目がチカチカしているが、光樹が用意している技に気づき俺は対応をしようとする。
「光の槍!!」
光速で槍が飛んでくる。
避けようとするが、俺の足元が闇でできた手に掴まれていて動けない。
俺は神刀で闇でできた手を切ろうとするが、切ったところから再生し、再び元の状態に戻る。そこで光速で飛んでくる槍!
俺は冬の盤 「冬眠冬華」を使えば防げるだろうと感じたが……神刀の解放による欠点を説明してくれた佐保姫の言葉を思い出す。
「神刀を解放すれば、その解放した季節の盤以外は解放している間使えなくなるなら気をつけよ。」
だから「冬眠冬華」は無理か……そう考えていると。何故か「冬眠冬華」が発動する。
「え?」
(なんでじゃ!?)
佐保姫も驚いている。
光の槍は「冬眠冬華」で勢いが減り俺の目ギリギリで止まる。
(今のは明らかにおかしいぞ?)
佐保姫が混乱をしているが……
「そんなことより、今は戦いに集中しないと死ぬ……」
俺は闇でできた手を切ることを諦めて、俺の立っている地面ごと斬る。
そして、他の技も複用できるなら、技の早い「夏の盤」を多めに使っていく!
「夏の盤「夏月鼈千」」
相手は速くなった斬撃に反応を遅れ、闇鬼に直撃する。
「ぐはぁ!!」
「夏の盤「虫取安元」」
虫取り網の網状のような斬撃で辺りを囲む。
「これは悪手なんじゃないか?」
闇鬼が言う。
「ここでお前だけでも戦闘不能にする。」
(常に斬撃を繰り出さないとこの網は消えてしまう。維持するために体力をごっそりともってかれる。闇鬼の言う通り、悪手かもしれないけどタイマンじゃなきゃ勝ち目がない。)
「狭くなったのならちょうどいい。一ついいことを教えてやる。人という固定概念に囚われるな」
そう言うと闇鬼の身体は大きくなっていく。その風貌はまさに”鬼”だった。
(どういうことだ?)
(刀夜!春の盤に切り替えよ!あれが本当に鬼なら威力重視の方がよいばずじゃ!)
佐保姫の助言通りにすぐに意識を夏の盤から春の盤に変える。
混乱していると光樹は網の外から
「あいつは能力が二つあるんだよ。」
「闇の能力と鬼のように強化される能力、名前通りまさしく”闇鬼”だ!」
(能力が二つ!?聞いたことないぞ?)
(来るぞ!)
佐保姫の声に考えるのを中断して闇鬼を見る。
すると闇鬼は特別速くはないが、かなりのスピードで俺の方に向かってくる。
俺は拳を向けてきた闇鬼にカウンターを入れようとギリギリでかわそうとする。
……っが、ギリギリでかわしたはずなのに俺の頬には切り傷ができる。
(まじか!?けど……)
俺はカウンターを決めようと
「真春の盤 「春一」」
を闇鬼の腹に切りつける。
「無駄だ……」
外で光樹がつぶやく
大した傷がつくことなく、闇鬼は俺に拳を向ける。
(そんな……)
その拳を刀で受けるが、折れてしまうと判断しやっとの思いで受け流す。受け流された拳は地面に叩き落とされる。
ゴゴゴゴッという音ともにヒビがはいり、やがて地面は真っ二つに割れる。
「これが第9位の……力」
(これは本気で行かなねば、勝てんの〜)
佐保姫と俺の思考は一致していた。
(そうだな……出し惜しみはしない…)
修行中……
「100%の力?」
俺が質問をすると
「そうじゃ、わしとお主が100%リンクした時、「神姫解放」が使えるようになる。これはわしの力と「能力」を使える……つまり”100%”わしの力を貸し与えるということじゃ!」
「なるほどな……というか能力?お前も能力を持っているのか?」
神様が能力を持っているなんて予想もしてなかったため驚く。
「当たり前じゃろう?能力を使わないお主にとっての朗報じゃ…」
「だって……あんな能力……。」
俺は少し感情が高ぶる。
「まぁまぁ、わしの能力はーーーーーー」
「お前、この状況を覆せるとでも思っているのか?」
立ち上がる俺に向けて闇鬼が聞いてくる。
俺はニヤリと笑い
(出し惜しみはしない……)
「神刀 佐保姫「神姫解放」」
俺の刀にピンク色のオーラが纏い、そのオーラはやがて俺の身体全体を囲む。
(そのオーラを纏えば、多少の攻撃は耐えられるぞ!)と佐保姫が言う
(先に言っとけよ……何事かとちょっと驚いただろ?)俺はふっと微笑む。
「さっきとは違うわけか……」
そう言って闇鬼は闇で巨大な斧を作る。そして先程使用した闇で作った手を何十本もだし、俺目掛けて飛ばす。
俺は目の前から来る黒い手を避け続け闇鬼に近づいていく。俺は刀を構えて
「真春の盤「春眠」……」
闇鬼の身体に切り傷ができる。さらに桜の龍に噛みつかれてそのまま空中に連れてかれる。
「終わりだ!」
トドメを刺そうと飛ぼうとしたが、足に何本か黒い手が絡まっている。
「お前がな!!」
闇鬼が叫ぶ。桜の龍が消え、斧を上空から勢いよく俺の脳天目掛けて打ち下ろしてくる。
「食らえ!斧闇突!!」
(わしの能力はな…………)
(!?)
能力を聞いて俺は驚いた。
ドーンッと轟音が聞こえると同時に砂埃で前が見えなくなる。それと同時に網が消える。
光樹は
「やはりこの程度だったか……」
とつぶやくが砂埃が晴れて二人の立つ姿が見える。
しばらくして片方が倒れる。
倒れたのは…………
闇鬼だった。
「な……んで?あの攻撃をあの高さから直撃したら無事なはずが……」
光樹は混乱してそうつぶやく。
「ああ……間違いなく死ぬな」
俺がその光樹の言葉に共感する。
「だって鬼の耐久力でも倒れるぐらいなんだしな。」
闇鬼は生きてはしていたが、気を失って、鬼の姿から人の姿に戻っていた。
「お前何をした?」
「能力……「反射」を使っただけだ」
「反射だと?お前は全てを読んだ上でわざとあの攻撃を食らったのか!?」
俺はふっと笑う。
(神の能力は偉大じゃろ!?)
佐保姫がドヤ顔をしているだろうと容易に予想できる。
「くそ…」
一度距離を取った光樹
「逃がすとでも?」
俺はそういい地面を蹴ろうとしたが、
その場に崩れ落ちる。100%を使った反動。神姫解放どころか神刀まで解除される。
(いや……身体が動いたとしてもあいつの速さにはついていけない。もっと”速く”ないと!)
光樹の背中が遠のいていく。
(まだ強くなりたいと申しますか?)
その時、佐保姫ではない別の声が”刀”から聞こえる。
「誰だ?」
(私は 夏の神”筒姫”です。どうやらあなたの思いに連動して私の力をあなたに貸すことが可能になりました。)
そこで俺は思い出す。
(確か佐保姫が夏の盤の解放は試練を行わないと言っていたが、強くなりたい”思い”が解放のためのトリガーだったということか。)
「俺に力を貸してくれるのか?」
(もちろんです。さぁ……いきましょう!)
「真夏の盤 神刀 ”筒姫”」
真桜の盤とは違い、鯉の模様の裃を気づくと着ている。
(夏の盤は解放をすることで大幅にスピードが増します。今は30%程度の解放ですが、強くなりたいと思う程強さは増していきます。)
「ありがとう……」
刀夜はそうつぶやき、刀を構える。
(俺まだ戦える!)
「真夏の盤 九夏三伏」
俺はびっくりする。剣術を使おうとして地面を蹴った瞬間自分でも驚く速度で光樹に追いつく。
それはまさに瞬足で、そのまま剣術を光樹に打ち込む。
神刀は剣術によって得た熱で赤くひかる。
「さっきより恐ろしく速い!?」
光樹はとっさにしゃがみ刀夜の刀を避ける。
刀はそのまま後ろにある水を貯蓄している鉄のタンクを意図も簡単に斬る。
ジューーーっという音がしばらく続き、ゆっくりとタンクの上の部分が滑り落ちる。
未だ刀は夏の暑さを主張するように赤く光っている。
刀夜は刀に残った熱でタンクを切った時に付いた水滴が蒸発していることに気づく。
(ものすごい速さと熱だ……)
(神姫解放はまだ出来ませんが……最大限のサポートをします!)
筒姫は俺にそう言う。
(サンキュー!)
「なんで……急に速く!?能力か?お前も二つ能力を持っているのか?」
「さぁどうだろうな?」
混乱する光樹に俺は答えを濁す。
光樹は光の槍を今度は飛ばさず、手に持って構える。




