第6話 中間テスト4
「始め!」
刀夜は桜を取ろうと桜が落ちてくる場所を予測し、向かい取ろうとする。
(やっぱり楽勝……)
そう思った時、桜は光速なんて遥かに凌ぐ速度で落下する。
それは刀夜の手を貫通する。
「あぐっ!?」
(手が!?)
「落ち着け、ここは精神世界、手という概念は無いから現実の手はそのままじゃ……ただし精神世界で一度消滅した手は、精神世界に一度入り直さん限り直らんがな」
(それってつまり……)
「チャンスはあと一回ってことかよ!?」
「おぉ〜よく気づいたな。そうじゃよ。両手を失ったらお主は現実に帰ってあの天堂とか言うやつに”殺される”それだけじゃ……」
(でも貫通する程の速度の桜をどうやって取れば……しかもチャンスは一度……)
淡々と話す佐保姫の言葉を聞きながら刀夜は考える。
「ちなみに桜は取ろうとする意識をした時にあの速さになるぞ。」
(どうする?一か八かでチャレンジするか?)
神社には試練用に木刀が何本か置いてある。「雪の盤「冬眠冬華」を左手に集中して発動して衝撃に耐える?
(これが一番可能性がありそうだ……)
地べたに座りながら熟考し、考えがまとまった刀夜は立ち上がる。
「もうチャレンジするのか?」
「ああ……クリアしてやるよ!」
木刀を1本持ち、庭に出て桜の木の下に向かう。
俺は左手に集中して「冬眠冬華」を発動する。
(狙いはあの桜……取るぞ)
桜のスピードは上がり、俺めがけて向かってくる。
桜が刀夜の左手に直撃する3mm前で「冬眠冬華」にぶつかる。
いくら左手の耐久力が強くなっても身体は衝撃に耐えられないので刀夜は桜が飛んできた方向とは別の方向に吹き飛ばされる。
どの方向に向かっても桜はついてくるので衝撃がぶつかり続ける。
そして「冬眠冬華」にヒビができる。
(持ってくれよ……)
その願いが届く訳もなく。
パリーン!!!
最悪の音がした。
(冬眠冬華でも耐えられないなんて……)
そのまま左手を貫通していく。
そのまま吹き飛ばされ……両手を失った刀夜は勢いを殺せないまま桜の木に激突する。
(終わった……試練は…)
桜の木に激突したことで大量の桜がヒラヒラと舞落ちてくる。
(もう桜がトラウマになりそうだ……)
微かに目を開けて上を見る。
「諦めるのか?了承したら現実世界に戻してやるが…」
(いや……諦め……るかよ!!)
そうして刀夜は木刀を歯で掴み
「手で取るのはやめだ!木刀で桜を刺してやる!」
刀夜は立ち上がり、無理承知で桜を刺そうとした。
だが……不思議なことに桜の速度は上がらない……
(???)
刀夜は桜の真ん中を捉えて木刀で刺そうとするが、両手が無くなったことで平衡感覚がズレる。さらに歯で支えているため、ブ針に糸を通すぐらいの難しさだった。
数十回のチャレンジの末、刀夜は木刀に桜を刺す……
(やった……)
その瞬間
「おめでとう!試練突破じゃ!!」
「そんな方法で強引に桜を取ったのはお主が初めてじゃよ。」
拍手をしながら神社から出てくる佐保姫。
「それにしても……なんで速度が上がらなかったんだ?」
(いや…冷静に考えれば、佐保姫は取ろうとする”意識”をした時に速度が上がる……つまり、俺が刺すと言う思考になったから桜の速度は上がらなかったわけか……)
「どうやら気づいたようじゃな……」
「手でキャッチとは言っておらん!頭でも口でもなんでもいいからキャッチすれば良かったんじゃ!」
「頭に乗せるだけでも良かったのかよ!!」
「この試練は、”冷静に考えること、無意識に物事を行うこと”を強化する修行でもあったんじゃが……」
「まぁそこはまた修行するとして、わしがお主を認めたことによってお主は春の力を100%使えるようになった。じゃが100%は最終奥義……使い所は考えよ!それに今回は使うな?お主の体力は戻っておらんから使えば身体が耐えられずに死ぬ……」
「それってどっちにせよ死ぬってことか!?」
刀夜が声を荒らげると
「最後まで聞けぃ!!」
刀夜は圧に圧倒されて「すいません」と正座で謝る。
「50%なら耐えられるじゃろう。それだけあれば、あんな雷なんて十分じゃよ」
(20%でも余裕だろうがな…)
佐保姫は片隅でそう考える。
「まぁ、なんだ。」
「これからよろしくな!刀夜!」
「ああ、よろしく!」
手を差し出した佐保姫の手を取った時
(うおっ?)
目の前には巨大な雷の龍が迫っていた。
(それと……なんだ?この力は……)
気づくと俺はピンクの桜の模様のある裃を着ていた。
脳内で佐保姫の声が響く。
(これが本当の 神刀 ”佐保姫”じゃよ?今の力で50%ぐらいじゃな……さっきも言った通り、今の体力じゃこれが限界じゃな)
(佐保姫がなんで俺に話しかけれるんだ?)
当たり前の用に刀夜に話しかけてくる佐保姫に疑問に思う。
(本当の神刀を解放した時のみ、お主の思考に干渉できる。とりあえず今は戦いに集中せよ。)
そう言われて刀夜は戦いに意識を戻す。
(わしに合わせてこう唱えよ。)
(真春の盤 「春眠」)
「真春の盤 「春眠」……」
刀夜が佐保姫の言ったことを復唱すると、桜の龍が出現して雷の龍に向かっていく、互いの龍は衝突することなく、桜の龍が雷の龍を飲み込み、中で何百という斬撃を受け、雷の龍は消滅する。
(これが……神刀の力?)
(こんなので驚くな……まだ50%じゃぞ?)
刀夜はふとつぶやく
「俺はまだ強くなれる!」
そんな刀夜を天堂は驚いた顔で見ている。
「本当に面白い奴だ!」
そう言って刀夜の背後にまで来ていた天堂は刀で俺を斬りつけようとする。
それを刀夜は無意識にスレスレで避ける。
(ギリ見える…)
無意識にあの桜の試練は役立っていた。
そしてカウンターを食らわせようとした。
その時だった……
ドクンと心臓が痛みだし、刀夜はその場に倒れる。神刀が元の刀に戻ってしまう。
(服も戻っている。反動か……佐保姫の声も聞こえなくなった。)
異変に気づいた天堂は、刀を俺の首スレスレで止める。
「お前との戦い面白かった。本気で戦う日を楽しみにしている。」
そう言ってゴールに向かって去っていく。
(この力があれば……本当に……)
そう考えていると、
「お前は危険そうだからここで殺しておく……」
そう言って天堂の攻撃から逃れていた者が機会を伺っていたのか、ぞろぞろと出てくる。
(反動で……身体が動かな…い)
目の前にナイフが飛んでくる。
カキンッと甲高い音が聞こえ刀夜の前に二人、誰かが立ち塞がる。
「やっと追いついた〜!てかもうゴールじゃん!」
「俺は強くなるために高め合えるお前が必要なんだ!」
下城と剛だった。
剛は透明化して複数人の首を叩き、気絶させる。
下城は薙刀?を使って何かを召喚し、俺に肩を貸してくれる。
「もう時間がないわ!急ぐわよ!」
「二人とも……なんで? 」
「一緒に卒業するんでしょ?」
「一緒に卒業するんだろ?」
声を揃えて二人が言う……
「ああ!ありがとう!」
こうして三人でゴールの線をこえ、中間テストを乗り越える。
影では教師陣の中でこう言われている。
「実力主義なのに協力なんておかしな奴らだ」
さらに、
「確かにな、そう簡単にこの学校で”信用”はしてはいけない」
……と




