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一丁目のほとり ー悪魔との対話形式による日常記ー  作者: 蘭鍾馗


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17/26

【日常の16】もうすぐ桜のシーズン

「気が早すぎない?」



 そかな。

「まだ1月なんですけど。」

 そだね。

「桜ってば4月じゃないの?」

 それがね、2月に咲く早咲きの桜があるんですよ。

「そんなのあるの?」

 河津桜って知らない?

「あ、なんか聞いたことあるかも。」

 2月上旬頃から咲くんですよ。

「早っ。なんでそんなに早く咲くの?」

 それはですね。

「それは?」

 次回の『あてどない植物記』でくわしく解説します。

「何それ。」 ( `ー´)ノ”★


 ◇


 ここではごく簡単に説明を。

「はいはい。」

 伊豆の河津町ってとこに、河津川って川があってね。

「ふんふん。」

 その両岸の堤防に、超早咲きの「河津桜」っていう桜が植わってるんですよ。

「なるほど。」

 それが濃いピンクのきれいな桜でね。

「ほー。」

 毎年、2月上旬~3月上旬ころまで『河津桜まつり』が開かれて。

「開かれて。」

 屋台が出たり。

「出たり。」

 ちょっとしたイベントが開かれたり。

「するんですね。」

 するんですよ。

「で、毎年それを見に出かけるんだけど、今年は寒波が来たからまだ咲いてない、みたいな話ね。」

 …………全部言われちゃったな。


 ◇


 今週末行くつもりだったんだけどねー。

「咲いてないんじゃねー。」

 まあ仕方がない。

「ショウキ的には河津桜見てお終い?」

 いや、出店も見て回るけど、なんで?

「いやなんか、ショウキって花しか興味なさそうじゃない?」

 そんなことないって。それにね、面白い屋台が出てたりするんですよ。

「どんな屋台?」

 まな板屋さんとか。

「は?………何それ。」

 地元の建築会社が出してる店でね。イチョウとかホオノキとかヒバとか、珍しい木で出来たまな板を売ってるんですよ。

「……ふーん。」

 興味なさそうだね。

「ないわ。」


 ◇


 あとはねえ、みかん屋さんがいっぱい出る。

「みかん?」

 このへん、みかん畑多いんですよ。

「わざわざ伊豆まで来てみかん買うの?」

 それがね、東京のスーパーで売ってないみかんがあるんですよ。

「どんなみかん?」

 レモンイエローで、皮の厚いみかん。

「なんか酸っぱそう。」

 それがね、とても甘いんですよこの酸っぱそうなみかんが。

「そんな見た目で?」

 名前は『はるか』。

「聞いたことない。」

 東京のスーパーなんかではめったに見ない品種だよ。

「へー………。」

 河津桜まつりに行ったら、必ず買って帰るみかん。

「買ってきて!食べたい!」

 はいはい。再来週だねきっと。


 ◇


 あとねえ、毎年じゃないんだけど、変なイベントが開かれたりする。

「どんな?」

 こないだ行ったときは、クラシックカーのオーナーズクラブみたいなのが来て、車を展示してた。

「へー。桜関係ないよね。」

 ないね。

「他には?」

 極めつけに変だったのは、『発動機運転会』みたいな名前の同好会が来た時。

「何それ?」

 何ていうかな………木の台に据え付けた古いエンジンが沢山展示されててね。それを回して眺めるだけ、みたいな奇特な人達。

「は?」

 その台に据え付けたエンジンが、スパンスパン音を立てながら回るのを見て喜ぶ。

「…………」

 それで何かを動かすわけじゃなくて、ただただエンジンが回るのを見て喜ぶ。

「…………」

 まあ、見てるとそれなりに面白かったよ。牧歌的で。

「ショウキってそっち系のひとだったの?」

 そういう訳じゃないけど、まあそんなに嫌いじゃないかな。


 ◇


「ま、とりあえず今週末はおあずけ喰らっちゃったわけだ。」

 わけだ。

「とりあえず、再来週行ったら『はるか』よろしくね。」

 うん、買っとく。


「こんなとこかしらね。」

 そうだね。

「じゃ、また。」


 またね。


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― 新着の感想 ―
なんだかいろいろな地元のことをご存知ですね! 黄色いミカンはるかっていうのですね。関西でもあんまり見ないものですね。 ダンダリオンとの会話が小気味よい感じで、とても読みやすいです。 あの車で行かれるの…
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