【日常の10】火事騒ぎとか
「お爺ちゃん来たよ。」
お茶を吹いてしまった。不覚。
◇
オルゴール職人の孫のマリエッタか。このネタ、そのうち喰らうとは思ってたけど。
「それが今日だったのよ。孫キャラもいけそうでしょ?」
ノーコメントで。
ちなみに、元ネタは私の1000字短編「音楽の小箱 ~年老いたオルゴール職人の独白~」です。
https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/2973209/
失礼しました。
◇
昨夜、火事騒ぎがあってね。
「ええ?」
なんかねえ、火災警報っぽい音がどこかから聞こえてくるな、と思ってたら。
「思ってたら。」
消防車2台と救急車が来て、ウチのすぐ裏の道に止まった。
「火事!」
いや、結局火事じゃなかったみたい。
「何だったの?」
ガス自殺をやろうとして、警報器が鳴ったもんだから、消防署に通報されたみたい。
「そんなこと良く分かったわね。」
私の住んでるとこは下町でね。私みたいな人付き合いの薄い人間の所にも、その日のうちに噂話が届いてしまう。
「…えええ、怖っ。」
だから近所で悪いことは出来ない。すぐ噂になるからね。でも逆に言うと、治安がいいということでもある。慣れると住みやすい所だよ。
「なるほどね。」
ここに越してきてから一年目くらいだったかな。近所の床屋に行って散髪してもらってたら、私の住んでるアパートを知ってた。
「まあ近所だしね。」
それどころか、私の普段の行動やら何やら、全部知ってた。
「……それ怖すぎ。」
下町って独特で、表向きはお互い無関心な顔をしてるんですよ。でも、その裏でものすごくチェックを入れてくる。
「わああ。」
まあ、江戸の昔から人口密度が高かったから、自然とそういう近所付き合いのスタイルが出来てきたんだろうね。
「なるほどね。」
慣れてくれば、いい所だよ。
◇
「ところでさ、『アルハンブラの思い出』ってどんな曲なの?」
………今日は珍しい角度からツッコミ入れて来るね。
「アルハンブラは私にも縁が深かったじゃない。」
そうか。
「有名な曲みたいだけど、何か知らないでいるのが悔しかったから。」
こんな曲。
~ダンタリオン、試聴中~
「きれいな曲ね。ギターのトレモロって、こんな感じなんだ。」
私も昔は弾けたんだけどね。
「弾いて。」
いやもうやめてから何十年も経ってるからね。
「そうか、残念。そういえば、マリエッタはこの曲の作者の娘の名前からつけたのよね。」
生後3か月で死んでしまったんだけどね。
「え?」
ターレガの「マリエッタ」って曲があるよ。
~ダンタリオン、試聴中~
ダンタリオン、号泣しちゃった。
「……曲の由来、聞かなきゃよかった。」
この曲でそんなに泣くとは思わなかったよ。ごめん。
「年取ると涙腺が弱くなるのよ。」
………私とおんなじこと言うんだね。
◇
じゃあ、お詫びに笑ってもらおう。
「何?」
コロンって人が書いたお話。「ぼくはたい焼き」。
https://ncode.syosetu.com/n0769kp/
~ダンタリオン 試読中~
「……………」
おかしいでしょ?
「………おかしいけど……おかしいけど、これ……なんか悔しい。」
わかる。わかるよダンタリオン。
「小学4年生ネタなのに……オチも全部読めてるのに……それでも笑ってしまう自分が悔しい!」
そうなんだよねえ。
「……あと、挿絵が駄目。」
あれもなんか来るよねえ。
◇
「はー、一年分くらい泣いて笑ったわ。ありがと。」
どういたしまして。
「じゃ、またね。」
おやすみダンタリオン。




