観覧車を観覧するだけ
なろうラジオ大賞6の参加作品です。
今日は7日。
カレンダーの7の周りにはお花とその下の余白には【遊園地&動物園デート♡】の文字が書かれている。
誰にも見えていないだろうが、俺の頭にもお花が咲いている。たくさん。
雨が降った時は映画を観てショッピングしようかと言っていたが、雲ひとつない晴れだった。
遊園地&動物園は思ったより小さく、携帯で調べた滞在時間は各60〜120分だった。
遊園地も動物園も家族で来たり、学校の遠足で来たりと幼い頃何回も来ているが、彼女と来るのは初めてで今日はとても新鮮な場所に感じた。
午前中に動物園、午後に遊園地に行くプランだが、俺は高いところや絶叫マシンが苦手だ。
苦手なことを言い出せずにここまで来てしまった。
今はできれば動物園にずっといたいと思っている…
「ここの動物園ってパンダいないよね。」と彼女が言った。
マップを見てみるがパンダはいない。
「あ!パンダいる。レッサーパンダ!」と彼女は喜びながら、レッサーパンダの方へ向かって行った。
レッサーパンダが1番気に入ったのだろうか、ずっと眺めている。
暫く眺めた後に、彼女が俺を見て「レッサーパンダに似てる」と言ってきた。
複雑な気持ちだ。
カワイイよりカッコイイと言われたい。
動物園のお土産コーナーで彼女はレッサーパンダのぬいぐるみを買っていた。
お昼ごはんは彼女の手作りサンドイッチ。
朝少し早起きしてサンドイッチを作ってくれたと思うとキュンとした。
そして、午後は遊園地へ。
ジェットコースターに向かう途中だった。
…心拍数が徐々に上がる俺。ムリだ。
「あの、実は俺絶叫マシンとか高いところとか苦手で、ごめん。無理かも。」
正直、無理しようと思ったが無理できない。
だって足がガクガクだから。
情けなくて、カッコ悪いな俺。
「大丈夫?」と優しい彼女。
ベンチで一休みしながら、2人で目の前の観覧車を眺めた。
彼女は俺の苦手なモノがわかって良かったと笑った。
ただ観覧車は乗りたかったらしい。
お互い、頭の中で観覧車で…♡とドラマみたいなことを考えていたことがわかり、笑った。
「観覧車は乗らなくても、充分だよ。」と言って、彼女が俺の手を握る。
彼女の手は冷たかった。
今日、晴れてたけど寒かったもんな…
そのまま手を離すことなく、家に帰ったのだった。
観覧車を観覧しただけ、乗り物にも乗らずに。