おかえり
別れを惜しみながらも旅立った翌日には、高津賀の森のよく晴れた空が白露たちを迎え入れてくれた。
高津賀の森に帰ってくるのはかれこれ四年と少し前のことになる。幼少期の十三年間を過ごした森はまるで白露の帰還を祝福するように木々をざわめかせた。
白露は慣れた道をすいすいと進んでいく。そして見えてきた丸太小屋に歓喜の笑みを浮かべた。
事の発端は新街を出てすぐのこと。古烏が一通の依頼書を運んできたことだった。
いつものように依頼書を受け取った鶺鴒は面白そうに文面へと目を通していた。珍しく古烏は白露に言葉をかけることなく飛び去ってしまう。
ふらふらと疲れたように飛び去って行く古烏の背を不思議そうに眺めながら、白露は久方ぶりに返ってきた腰の重みへと手を置いた。
白露との再会を喜ぶように取り上げられていた妖刀がカチャリと音を鳴らす。
「白露喜べ。里帰りが出来るぞ」
「里帰り?」
これまたいつも通りの唐突な言葉に首を傾げれば、鶺鴒は「依頼でな」と頷いた。
「高津賀の森のすぐ側にある村から依頼がきた。ついでに高津賀の森に顔を出しとけ」
そんな鶺鴒の粋な計らいで、白露は四年ぶりに高津賀の森へと踏み入れることになった。
丸太小屋の扉の前を白露は迷ったようにうろちょろと歩きまわった。四年ぶりに家に帰るのが、こんなにも心が落ち着かないことだとは思わなかった。
第一声はどうしよう。やっぱり「ただいま」だろうか。いや、でも久しぶりに合うのだから「久しぶり」が妥当か? むしろ「元気だった?」のほうがしっくりくる。
ぐるぐると脳内で何度も想像する白露に痺れを切らしたように、丸太小屋の扉が急に開いた。
「誰だ! さっきから人様の家の前でうろちょろ――」
「よ、よう」
「……お前、シロ坊か?」
「ただいま、イタチ」
白露の口からすんなりと言いたかった言葉が飛び出す。イタチは信じられないとでもいうように白露を見上げ、やがて体を震わせた。
「シロ坊!」
がばっと白露に飛びついてきたイタチを、白露は嬉しそうに受け止めた。
「ただいまイタチ」
「おかえり。シロ坊」




