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細語橋
幻に囚われた大旦那を置き、鶺鴒と白露は細語橋へと向かう。
もうこの村には用はないと白露から退魔刀を受け取りながら鶺鴒は憐れみの目を、背後で蹲る大旦那へと向けた。
「この村はあの男が殺した人々が作り出した幻影だ。大旦那は死ぬまであそこに囚われ続けるだろう」
晴れた視界ではこの村の惨状がよく見える。豪華な屋敷や絢爛な人々の姿はどこにもない。ただみすぼらしい男と無数の骸骨と廃屋だけがそこにあった。
私利私欲のために人を殺した男の末路はあまりにも無残だった。
「行くぞ」
鶺鴒が腰に差した二本の妖刀を鳴らしながら細語橋を渡っていく。白露は大旦那の姿を忘れないように脳裏に焼き付け、振り切るように朱色の板へと足を乗せた。
細語橋は白露を難なく受け止め、送り出す。
「ありがとう」
そう囁く声が聞こえた気がした。




