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第二編「とけてしまえば」
みんな、私を透明人間だという。
ほら。今日も、誰も私を見ない。声も掛けない。
……ここにいるのにね。
ふう、と私は教室の一番後ろ、自分の席でため息をついた。
そうして、ぼんやり教室を見回す。
今は休憩時間。
同級生たちはみんな、楽しそうに話したり、ふざけ合ったりしてる。
私はその輪には入れない。
透明人間だから。
──見ないふりをされているから。
わかっている。
誰かが私を透明じゃない人間として扱えば、今度はその子が無視される。
……透明人間になる。
ああ。でも。
私は教室の窓、そこから見える空を見やり、目を閉じる。
本当に透明人間なら、何も感じなくていいはずなのに。
あの空の青さも、心の痛みも。
何も、……何も。
なら、本当に、透明になってしまえばいいのに。
透明になって、とけてしまえばいいのに。