番外編1-5
「まあ、しかしご機嫌だ」
月島は昨日と打って変わって楽しそうに美鈴と厨房にいる陸に呆れたように笑った。
「ホント。2人の世界だね。
陸って美鈴さんの前ではあんなに無邪気に笑うんだ」
カウンターの影から厨房を覗き込んだナオも頷いた。
「何だかんだ言って単純じゃん。仲直りしただけだろう」
月島とナオの横をすり抜けながらカズは言う。そして厨房に向かって声を掛けた。
「サラミの盛り合わせとじゃがいものベーコン炒め、よろしく!」
「はいっ」
美鈴の返事にカズは手を振る。そんな姿を見ながら月島は笑った。
「そんなもんか…」
「そんなもんみたいだね」
ナオも笑って答えると店の方へと行く。
「単純ね…。いいなぁ、若いって」
月島は若い4人を見て口元に笑みを浮かべた。不思議と自分の心も何か浮き足立っている。陸が辞めてから再び自分の持ち場となったカウンターに入ると月島は店の客たちに向かって声をかけた。
「よっしっ、今日はカクテル類お一人一杯サービスだよ!」
月島の突然の声にナオとカズは驚いたようだったが、直ぐにカズが反応する。
「おっ、マスター太っ腹!」
カズの言葉にお客達も気軽に声を上げて好きな品を注文する。
「はいはい。ちょっと待ってね。順番に作るからね」
月島も笑顔で答える。
自分の中にある幾つもの仮面の中でこの場所に居る自分とこの仮面は気に入っている。
だが、ずっとは続かない事を知っている。
だから今を楽しもうじゃないか。こいつらと一緒に。
前回のハワイ旅行で想いは等しくなったのでは?でも美鈴の行動にやっぱりヤキモキしてしまって短気になってしまう陸。今回は俊が出てきてフォローしてくれますが不思議な三角関係です。陸も苦労しますね。