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番外編1-2


今晩の冷え込みは和らいでいたが12月もあと僅かでこれから日々寒くなってくる。月島は鍵をポケットから取り出すと店の勝手口から中へ入った。中の更衣室兼休憩室にはナオとカズがすでにおり着替えをしていた。


「おはようさん」


かけていた眼鏡を胸ポケットにしまうと2人に声をかける。


「あ、おはようございます」


2人は返事をしたが何かいつもと違う。


「どうした?何かあった?」


月島の問いかけにナオは直ぐに答える。


「マスターの所にシュウから連絡いきませんでしたか?」

「連絡?あーそういえば携帯の電源切っちまってたかもしれないな」


月島はポケットから携帯を出すと電源を入れる。その様子を見ながらナオは続けた。


「昨日、熱があるって途中で帰ったじゃないですか」

「うん、そうだったね」


携帯にはシュウから何度も着信が入っていた。


「何かインフルエンザだったみたいだよ」


ナオより先にカズが言った言葉に携帯の画面からカズの顔を見る。


「インフルエンザ?まじ?」


持っていた携帯を下ろすと月島はため息をついた。


「やっばいなー。やっぱ厨房に入れないとダメだったか。参ったな…こうなれば兼松にでも来させるかな」


月島のぼやきにカズの顔が歪む。


「3人で何とかなるんじゃねぇ?」

「カズは兼松さんの事苦手意識持ってるよね」


笑いながら言うナオにカズは首をすくめる。


「あの人怖ぇもん」


カズの言葉に月島も苦笑いしてしまった。

その時、裏の勝手口を叩く音がして女性の声が聞こえた。


「あれ?この声…」


ナオが勝手口の方へ行き扉を開けると大きな箱を持った美鈴が立っていた。


「こんばんは。忙しい時間にごめんなさい」

「こんばんは…って、どうしたの?1人?」


驚いているナオに美鈴は笑いながら頷いた。

ナオの後ろからカズと月島も覗き込む。


「おっひさしぶりじゃん。どうしたの?陸に飽きた?」


相変わらずなカズの言葉と笑顔に美鈴は苦笑いしてしまった。しかし、月島が不思議そうな顔で尋ねてきたので持っていた大きな箱を渡した。


「実はこれを渡そうと思って寄ったんです。後、来年の頭には引っ越しするのでご挨拶も込めて」

「とりあえず中に入りな。こんな所じゃ狭いし」


月島は箱を受け取ると美鈴を中に招き入れた。休憩室の机の上に置かれた箱を見ながらカズは尋ねた。


「何?ケーキ?」


カズの言葉に美鈴は頷く。


「実はそうなんだ。生ものだから保たないんだけど食べてもらえると嬉しいです」

「俺、ケーキ好きよ」


そう言うと早速蓋を開けると、中には苺が並んだデコレーションケーキが入っていた。


「やべぇ、まじ旨そう」


嬉しそうにカズが言うが月島は不思議そうに美鈴を見た。


「こんなでかいケーキ買って来たの?」

「んーっとそうなんだけど品質には問題無い訳ありなのです。大きなホールは2つあったからひとつはさっき夜理ちゃんの所へ持って行ったんだ」

「へぇ。じゃあ有り難く頂きましょうかね」


月島の言葉に美鈴も安心して笑う。


「じゃあお邪魔になってしまうので私はこれで失礼します。また今度、陸と来ますね」


3人にお辞儀をして行こうとした美鈴をカズが止めた。


「美鈴さん、この後用あんの?陸が来るとか?」

「……陸は今日まで仕事だから来ないと思うけど」


カズが何を言い出すのか美鈴は躊躇いながら答えた。


「そんじゃあさぁ、美鈴さん厨房やってみない?」


突然のカズの言葉に驚いたのは美鈴だけではなく月島とナオも目を丸くする。


「実はさ、シュウのヤツがインフルエンザで休みになっちゃって困ってたんだよね」

「そんな事突然頼まれる美鈴さんの方が困るよ」


ナオは呆れ顔で言うと、月島も苦笑いしながら言った。


「いやいや、気にしなくていいよ。兼松か誰かにでも電話しようと思ってるから」


月島の顔を見ながら美鈴は困った表情をした。


「兼松さん、海人さんと出掛けてしまったんでいませんよ」

「あ…そう。まあ何んとかなるよ」


月島は笑って言うと時計を見た。すでに5時半であった。

月島の様子を黙って見ていた美鈴であったが遠慮気味に言った。


「手伝える事があるならお手伝いするけど、私で大丈夫?」


美鈴の言葉にいち早くカズが反応する。


「いいよ!いいよなぁ、マスター!」


嬉しそうに美鈴に抱きついたカズにナオが慌てて引き離す。


「カズ!やめろって」


ナオに庇われた美鈴は乱れてしまった髪を直しながら苦笑いした。マスターは迷っているようで頭をぽりぽりとかいた。


「うーーん。いいの?皿洗いとか調理、頼んじゃうよ」

「それは大丈夫」

「帰りも遅くなるよ?」

「明日は休みだしそれも大丈夫。服装も今日はラフだしエプロンさえ貸してもらえれば」


笑って言う美鈴に月島は顎に手を持ってくる。確かに服装はジーンズでハーフコートを羽織っていた。靴もスニーカーという格好だ。


「じゃあ、お願いしちゃおうかな」


月島の言葉にカズはニカリと笑った。ナオは少し心配そうな顔をしたが美鈴の顔を見ると笑った。


「やりっ!」「お願いします」

「こちらこそお願いします!」


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