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いざ、異世界へGo!

一度短編で出したものと同じです。ご容赦くださいませ。

終電も去り、さっきまでの人混みが嘘のように静寂(せいじゃく)に包まれた新橋駅。


俺は昭和通りを進み、旧新橋停車場の建物の前に立った。





「えーっと……。 能梨安彦(のうなしやすひこ)さんですか?」




声を掛けてきたのは何やらメルヘンチックな格好をした紫色の髪でツインテールの女の子。


なるほど。異世界にいそうな雰囲気だ。




「あっそうですけど」




「お待ちしておりました。私は案内人のニコラと申します。それでは中の方へどうぞ」




ほぉ。名前も異世界の住人ぽい設定にしているのか。


弱小旅行会社のツアーにしてはなかなか凝っている。


どうせ本名は花子とかエリカとかありきたりなものなんだろう。


そう心で思いながらも俺は建物の中へ入る。




俺がここに来た理由。


それはただただ現実逃避したかっただけだ。




勉強も出来ず、社会でも落ちこぼれてしまった。


おまけに死ぬ勇気すらないヘタレときた。




どうしたものかと茫然とスマホを眺めていた時に目に入ったバナー広告。




「電車で異世界へGo!」




子供の頃によく遊んだ鉄道趣味レーターゲームに似た名前だ。


見るからに胡散臭いな。


待てよ。異世界に行けば生まれ変われるかもしれないぞ。


俺はどうせこの世ではお荷物なんだ。


いっそ異世界に行った方がお互いwin-winなのではないか。




気が付けば広告をタップして応募フォームに必要な情報を書き込んで応募するボタンをタップ。


その足でコンビニに向かって指定振込先にお金を振り込んでいた。


そして電車に乗って新橋駅に来ていた。






入ってしばらく進み、ホームの遺構のところへやってきた。




「嘘だろ?」




俺の目に飛び込んできたのは旧国鉄モハ1形電車ではないか。


何故こんなところに止まっているんだ。


色々あり得ない光景を目にして錯乱していた。




「それでは間もなく発車するので車内へお入りくださいませ」




ニコラに言われて俺は開いていた前扉から乗車する。


乗り込んで早々に木の香りが漂っていて照明もレトロな雰囲気を醸し出している。




「それでは異世界へ出発進行!」




そう叫ぶとニコラは首にかけていた笛を吹いた。


同時にゆっくりと開いていた扉が閉まる。


そしてプァンと威勢のいい警笛が響くと電車が動き始める。




ゴォーっと唸り声のような音を立てて走る電車。


今では滅多にお目にかかれない吊掛駆動の音だ。


何だか懐かしい音だ。


そういえば田舎にいた頃よく乗っていた電車の音と同じだったな。


俺は懐かしさを感じているといつの間にか眠りについていた。






「……さん。 能梨さん。起きてください!」




ニコラの声が聞こえてゆっくり瞼を開ける。


すっかり寝込んでしまったようだな。


思えばここ最近まともに睡眠を取っていなかったからな。




「もうすぐ終点に着きますので準備をお願いします」




「あ、は、はい……」




ニコラが笑顔で後ろに向かって歩いていく。


それよりも俺はただ目の前に見える風景に驚いている。


目の前にはただただ広い草原が見える。


後ろを振り向いても草原が広がっており山の上には中世ヨーロッパを思わせる城が建っている。




マジで俺は異世界へ来てしまったのか。


あの広告は嘘ではなかったのか。


頭が錯乱状態になっていると風景が一変してレンガ造りの建物が見えてきた。




「間もなく終点フォルトゥナに到着しまーす。降りたらまずは入界審査を受けてくださいね」




ニコラはそう言うと一枚のカードを差し出す。


俺はそれを受け取る。


どうやら審査カードのようだな。




そう言っているうちに電車がブレーキ音を響かせる。


モーター音が響いて大きく揺れて電車は停まる。


扉がゆっくりと開く。




「では、行ってらっしゃいませ」




降りる前にニコラが深々とお辞儀をする。


俺は笑顔で会釈してステップを降りる。




よし。ここでいっちょやってみましょうか。




俺は決意を固め、ネクタイを緩めて入界審査場の扉を開いた。

お読みいただきありがとうございます。

ちょこちょこと更新していきますのでどうぞよろしくお願いします。

誤字脱字やおかしな部分がありましたらご遠慮なく指摘してください。

そういうものも大変励みになります。

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