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お嬢様、マナー違反ですよ



部屋の中でグラスに水を入れて立つ僕。

目の前に透明なボールをイメージする。

その中にグラスの中の水を注ぐ。

水は床にこぼれることなく空気中に揺れている。

底が弧を描いている。

うまくできてほっとするが、空気中の水分を集める、というのがうまくいかない。

とりあえず、空気中の水分を集めてグラスに溜める、というところからスタートしようと思ったら、1口分しか集められなかった。

“ウォーターカッター”はできるのに何が違うんだろう?

“ウォーターカッター”が、これっぼっちの水なわけはないし。

ルチアさんに相談してみよう。


ルチアさんは仕事に出ていなければ大概、図書館、冒険者ギルド、酒場にいるとモニカさんに聞いていたから、返却する本を持って、とりあえず図書館に向かったのだが、貴族の女の子に声をかけられた。

正確には、女の子の従僕だ。

「君。アルフレートくんだね?お嬢様が君を連れてくるように仰っている。一緒にきてくれ。お嬢様は伯爵家の御令嬢だから逆らうことはお勧めしない」

脅迫です。

僕のことを何故か知っている。

少し後ろに豪華な馬車がある。

確かに逆らうのは得策じゃないけど、大人しくついていくのも得策じゃないよなぁ。

「御用件はなんでしょう?」

「それは、お嬢様からお話がある」

仕方ない。

結局、男についていくと、男が馬車のドアをノックしドアを開ける。

中にはドレスを着た女の子がいて「あなた、本当に男の子なの?」と不躾に聞いてきた。

第一声がソレかよ。

「そうです」

なんとなく女の子と思わせた方がいいような気もするが、バレてるんだから嘘をつくことはしない。

知っているはずなのに驚いた顔をされる。

知ってたんでしょ?なぜ驚く。

「本当に男の子なのね」

御令嬢のわりには不躾な視線だ。

平民だからいいとでも思ってるんだろう。

マナーってのは相手を不快にさせないことを学ぶことのはずなのに相手によってマナーを無視するのはいかがなものか。

「もう行ってもいいですか?」

ジロジロ見るだけで何も言わないから言ったのに「ダメに決まっているでしょう!」と怒られた。

理不尽...。

「いいわ。あなたを私の従僕にしてあげる」

はぁ?

何が「いいわ」なんだか。

誰も従僕にしてくれなんて、お願いしてないんだが?

御令嬢は嬉しそうに、にこにこしている。

断られるなんて思いもしてない、というふうだ。

「...ありがたいお話ですが、お断りいたします」

「...え?」

「失礼します」

「ちょ、ちょっと!待ちなさい!お前、追いかけなさい、捕まえるのよ!」

御令嬢は追いかけろ、などと言っているが、この国では子供は保護されている。

こんな多くの衆人環視のもと、子供が誘拐された、などとタダでは済まない。

大きい声で捕まえろ、なんて言って目立っているしムリだよ、お嬢様。

馬車には伯爵家のものであろう紋章が入っているし、誰が子供を連れ去ったかバレバレだ。

過去、魔力を増やすために虐待を受けた子供がいたことから子供全体を保護する法律がしっかりしているのだ。

案の定、誰も追ってこない。

まぁ今の僕には魔法もあるしな。



小走りに図書館へ向かう。

だが、マリアさんしかいなかった。

あー、スマホ欲しい。

誰か魔道具として連絡手段作ってくれないかな。

マリアさんにも聞きたいことかあったので質問させてもらった。

前世の...えーと、何歳だろう?ま、いっか。

改めて。

前世の大人の経験値を持つ僕には魔法士養成学校の入学試験は新しいことだらけだったものの勉強には、特に苦労することはなかった。

過去問も解説書も充実していたし、わからないところはマリアさんたち美女3人が教えてくれたし、マリアさんにいいところを見せたい図書館の司書さんにも教えてもらうこともできた。

通りすがりのおっさん、いや、失礼。おじ様も教えてくれることがあった。

よしよし。マリアさんにも順調だと言われているし、このまま特別枠に潜り込んでタダで学校卒業するぞ!



その2日後のことだ。

僕は部屋で勉強していたが休憩として魔法を考えていた。

この世界には、広く知られている魔法と、一部の人にしか使えない魔法がある。

広く知られている魔法としては火炎魔法がある。

一般的には松明の炎をイメージ、それを風で煽る。

ここで、そんなことしたら消えちゃうじゃん、などと思ってはいけない。

また、松明程度で火炎放射器みたいなことできるわけ、などと思ってもいけない。


他にもできるできないは置いといて氷魔法がある。

技や呼び方はそれぞれだが極寒地方の冬をイメージする。

あの寒さをここに、とすると再現できる。ハズである。

氷の礫だったり氷の矢だったりを目標目掛けて飛ばす、なんてのもあるらしいが、そんな魔法を使えるようになるために極寒地方の冬を過ごしに行く魔法士が毎年いるそうだ。

会得できなくて何年も住み続けているものもいるのだとか。

王都は雪が降ることも稀だからな。

会得したと思ったのに王都に来て再現しようと思ってもできないこともあるそうだ。

魔法は想像力、とはこういうことだ。


で、僕の辿りついた結論はコレだ。


前世で言う中二病を患っているヤツが勝つ!


中二病か...。僕も患った記憶があるよ。

左目が疼く、とか僕のトリガーをひいてしまったら...みたいな重症ではなかったけどね。

ハハ、ちょっと黒い歴史だ。


まぁ、ソレはともかく独自の魔法を考えていた。

机上の空論とならないようにしたいな。

魔法のイメージは企業秘密みたいなものだから実は日本語で書いている。

前世が日本人、という人にはバレてしまうが、そんな人、周りにいないし、いたとしても、その人には、きっと魔法を見られただけで簡単に真似されてしまうだろう。

僕は前世持ちっていうだけで特別頭がいいわけじゃないし。


頭の中ではできそうだな、と思うことをいくつか書いたところで母が入ってきた。

まだ仕事中のはずだし薬屋の男の部屋掃除には早い。

「どうし...、誰ですか?」

母の後ろから1人の男性が入ってきた。




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