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子供にもモテる僕



近所の女の子たちに捕まった。

皆、僕が男の子だと知っているのだが、おままごとに誘われる。

今日は人形ではなく自分たちでやるリアルおままごと(等身大おままごと)だ。

僕を旦那さんにして、その妻に誰がなるかで、いつも揉める。

モテるって大変だなぁ...。

旦那さん役の僕は冒険者、ということになった。

楽でいいかも。

「じゃぁ行ってくる」

見事、僕の妻役になった女の子と子供役になった女の子2人(姉妹の設定のようだ)に声をかける。

「あら、いってきますのキスは?」

ダメか、スルーできたら、と思っていたが甘かった。

前世日本人の僕には気恥ずかしい。

僕の妻役になった女の子が僕の腕を掴む。

「あ、あぁそうだった」

僕は早々と観念して妻役の女の子の前髪を上げるとおでこにキスした。

隣の奥さん役の女の子の視線が痛い。

「パパ!あたしにもキスして」

子供の長女役の方が言う。

あれ、今まで子供役にはしなかったのに。

他の女の子たちからブーイング発生。

「そんなの変よ」

「わたしが子供役のときはしてないわ」

「わたしのときも。それにわたしのパパは、わたしにはしないわよ」

「うちはするもん」

「わたしのパパはしないけど、別に変ではないと思う」

あー、うるせ。

「じゃ、こーしよ?」

子供役2人の頭をぽんぽんして「いいこにしてるんだよ」と声をかける。

そして、さっと戦線離脱だ。

後ろから「えー、キスがいい」とか「やっぱり変よ」とか第2ラウンドが始まったような気がしなくもないが、振り返らず家に帰る。


帰ると母が用意してくれているおやつとコップを用意して図書館から借りていた本を読み返す。

今日、返しに行く予定だったんだけど。

少し読んだところで時計を見る。お茶を冷蔵庫(薬屋の男からの貸与品)から出して用意した全てをカバンに入れて現場、ではなくおままごとに戻る。

「お仕事達成!みんなでお茶にしよう」

持ってきたものを広げて準備していると今度は僕の隣に誰が座るかで揉めてる。

変に口を出すと余計に揉める可能性があることは既に学んでいるので、ある程度待つことにしている。

今日は、すんなり決まったようだ。

皆で食べながら次は何をして遊ぶか話が始まった。


「まーた、おままごとか?よく飽きねーな」

近所に住む男の子3人だ。

「あんたたちだって、いっつも棒振り回して同じようなことしてるじゃん!よく飽きないわね」

「オレたちは騎士になるんだから遊びじゃない。稽古だ」

「ふん。棒で地面に落書きするのが稽古なわけ?そんな騎士、見たことないけど」

「そっ...、け、剣を自在に操るアレだ、稽古だ」

バカ、苦しすぎる言い訳だ。

ほら、女の子全員が呆れた顔をしてる。

「...バッカみたい」

だよな。

「お前らみたいなヤツなんて騎士になっても守ってやらねーからな!」

そりゃダメだろ。

「騎士は弱い者を助けるものだよ。そんなこと言って本当の騎士になったら女性や子供や老人を助けるんでしょ?もちろん、ここにいる女の子たちも。ね?」

僕はにっこり微笑んで圧をかける。

「ま、まぁな」

よし。

「じゃ、一緒に遊ぼうよ。何して遊ぶか話していたとこなんだ」


それから広場へ出て鬼ごっこすることになった。

すげー疲れた。

なんでだ。僕が集中的に狙われているような気がする。気のせいにしては、ずっと走り回っている。

ほら、あの子は、また突っ立ったままじゃん。

あっち狙えよ。

多分8回目の鬼ごっこが終わったときだ。

男の子の1人が帰る、と言い出した。

家の仕事があるらしい。

僕も図書館に行きたかったので一緒に離脱だ。

「えー、もうちょっと遊ぼう」と言われるが今日中に返さないといけない、と言っておく。

ごめん、嘘だ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



あたし、リエル。6歳。

今、恋をしてるの。

アルフレートくん。


アルって呼んでいい、ていうから皆がアルって呼んでる。

あたしだけに呼ばせてほしいけど今は仕方ないわね。

今は、皆のアルだもの。

でも。そのうち、あたしだけのアルになるの。

アルフって呼ぼうかしら。あたしだけの呼び方とかいいわよね。

アルって下町の男の子にしては綺麗過ぎる。

2か月くらい前に引っ越してきたけれど、すぐに有名人になった。

大人からも子供からも。

アルのお母さんも綺麗だったけれどアルの綺麗さは、ちょっと違う。

貴族の子供みたい。まぁ貴族の子供なんてまじまじと見たことないけど。

貴族の中でも群を抜いて綺麗なんじゃないかしら。

そんなアルはモテる。まぁ仕方ない。

今日のおままごとでは、もちろんアルの妻役を狙っていたけれど違う子に取られてしまったわ。

でも娘役をGet!

行ってきます、のときに子供にも、とキスを強請ってみた。

他の子が「そんなの変」とか言ってきたけど変ではなくない?

うちはしてないけど。

少し険悪になってきたところでアルが「じゃ、こーしよ?」と、あたしと妹役の子の頭をぽんぽんして顔を覗き込むようにすると「いいこにしてるんだよ」と微笑んで言った。

くっ。アル、素敵。

ますます好きになっちゃう。


その後、アルが家からおやつと冷たいお茶を持ってきてくれたので皆でおやつタイムにする。

お菓子を持ってきていた子もいたので、合わせるとそれなりな量になるが全部なくなる。

濡らした手拭いが用意されているのもアルの素敵なところだ。

この辺の男の子にはできない芸当よ。

アルのお母さんは料理が上手で、いつもお菓子を多めに用意しておいてくれるらしい。

それに冷たいお茶なんて、ちょっとだけ贅沢。

アルのお母さんが勤めている薬屋の人が魔道具(冷蔵庫)を貸してくれているらしい。

魔石を使う魔道具はまぁまぁ高級品だから一般家庭にはあったりなかったり半々くらいだろうか。ちなみに、うちにはない。

その後、絡んできた男の子たちと一緒に鬼ごっこをすることになった。

この男の子たち、もしかしてだけどアルのこと女の子だと思ってるんじゃないかな。

そんな話を女の子たちで話したことがあったんだけど、あの男の子たちを嫌いな子が「効果的なタイミングで教えてあげましょ?」と言うので皆で教えないことに決めた。

効果的なタイミングっていつのことかしらね。

鬼ごっこでも男の子3人はアルを狙っているみたいだった。

本当に女の子だと思ってるのかしらね?

まぁ本人に言われるまで、あたしも女の子だと疑いもしなかったから気持ちはわかるわ...。

それでも信じられなくて友達と一緒にアルのお母さんに聞いたんだもの。

事情があって男の子のフリしてましたー、て言われてもやっぱり、としか思わないわ...。

今日の帰り際の笑顔も破壊力が凄まじかったわ。

そこにいた全員が、ぽーっとなっていたもの。


...男の子、よね?




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