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お題シリーズ

比喩 シーズン・ギルド

作者: リィズ・ブランディシュカ



 弱くてちっぽけな冒険者達は、強大な者達に遠く及ばない。

 だから彼らは、ギルドを作る事にした。


 その者達は、まだ知らない。

 これから駆けるように過ぎていく時の中身を。





 一月の人は、始まりの瞬間に居合わせた。

 まっさらな心で、世界が始まるのを見届け、絆が培われていくのをその目で見ていた。


 二月の人は、産声をあげる世界で、ただ祝福され幸福にひたっていた。

 これから何が起こるのか全く知らずに、

 世界はただ、優しい揺りかごそのものだった。


 三月の人は、小さな別れを経験した。

 けれどそれは、心に傷をつくらなかった。

 温かくて、幸福な別れだった。

 まだ、胸が痛むほどではない。


 四月の人が、新しい出会いを引き連れてきた。

 輪に、一つの可能性が加わる。

 みな、その新参者を歓迎した。


 五月の人は、可能性を感じていた。

 弟子とした新参者の成長には、目を見張るものがあった。


 六月の人は、いつも憂鬱な気分を抱えていた。

 年長者であるその者は、とりたてて才能のない人間だった。

 活躍する若者がまぶしかった。


 七月の人は、あらゆる面で飛躍をみせる傑物だった。

 それにつられ、皆が力を伸ばした。

 輪は大きくなり、季節達の数は一気に増えた。


 八月の人は躍進し、変化に富んでいた。

 才能を開花させる者が多くいた。

 そのため、季節達は神の領域へもたやすく手をのばした。


 九月の人は、輪の外でそれを眺めていた。

 大きくなった泡は、いつかはじける。

 その時に備えて、何も言わずに去っていった。


 十月の人は、口を閉ざした。

 古巣に誰も近寄らず、孤独な時間を過ごしていた。

 慎ましく静かに、けれど逞しく生きていた時を忘れる事ができなかった。


 十一月の人は、歯車を盗んだ。

 小さな部品を引き換えにして得たのは、大金。

 笑いながら泣きながら、季節達の元を去っていった。


 十二月の人は崩壊を目にした。

 一瞬で、後には何も残らなかった。

 上げた嘆きの声すら闇の中に沈んで消えていった。




 そして跡形も残らない。

 誰もいない。


 残った者は滅びに巻き込まれ。

 去った者は傷を受けた。


 彼等の残した足跡は、やがて全てが消えていった。



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