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とある女の子が生まれて、憎むまで

作者: 郁律華

あらすじにもある通り、とんでもなく暗いです。

とある女の子が生まれて、女であることに苦しみ、病んでいく話です。

鬱表現やセクハラ表現などが含まれます。

読んだあとの保証は何もできません。

自己責任で読んでください。

現代より少し昔、とある商家には有名大学を卒業したものの少し傲慢な男と田舎の女子大学を卒業した世間知らずの男の妹がいました。


男は商家を後に継ぐかもしれないと地元へ帰り、一般企業へと就職し、取引先で後に結婚する女性と出会いました。

何年かが過ぎ、男と女性が結婚しようとしたときに、男の妹が交際していた男性の子供を妊娠しました。

男の親は外聞をはばかり、男の妹と交際相手を先に結婚させるようにし、男と女性の結婚式を後にするように言いました。

当然、男と女性は反対しましたが取り合ってくれません。


仕方なく、男の妹と交際相手が結婚した後に結婚式を挙げました。

男の妹の子供は女の子でしたが大層可愛がられました。

ほどなくして、男と女性の間にも子供ができます。男は跡取りとしても望まれていたため、子供も男の子が望まれていました。

しかし、生まれたのは女の子でした。

男と女性は喜びましたが、男の親は少しばかり残念に思ったそうです。

男と女性の間に生まれた子供は、親の愛情を受けて育ちますが、男の体質が遺伝したのか呼吸器が弱く、幼少期に何度か肺炎で死にかけました。何とか助かったものの体が成長するまで激しい運動は控えるよう言われました。


そして、男と女性の子供が退院した後に今度は男の父親が脳梗塞で倒れました。後遺症で左半身が動かなくなりました。

介護と家の事業を考え、男は親の店を手放すことにしました。そして、手放すことに反対した親と一緒に住むことになりました。


2世帯住宅を新居として構えたものの、長期休暇には男の妹が子供を連れて遊びに来るようになりました。

男と女性は不快に思いましたが、男の親はそれを意に介しませんでした。

男の母親は男の妹の子供を大層可愛がりました。

そして、男の娘も可愛がろうとして何度か呼んでは話をしたりしました。

娘は体が弱かったため、あまり外に出ては遊びません。

そのため、男の母親が話し相手になってやろうと申し出たのです。

男の妻となった女性は嫌がりましたが、家族となったことだからと娘に男の母親と遊んでおいでと言いました。

娘は男の母親に話しかけますが、よく編み物や手芸をしていました。それを見て、話しかけて良さそうなタイミングを計りながら話しました。

ある時、男の母親が娘に言いました。

「娘ちゃんは一人っ子だもんね。」

「うん、でもパパとママがいるよ。」

「本当は弟か妹が生まれるはずだったんだよ?」

「そうなの?」

「お母さんの病気のせいで生まれなかったんだけどね。弟ほしかった?」

男の母親にそう言われたとき、娘は幼心に悟りました。

本当にいるべきは男の子だったのだと。

でも、ここで間違えてはまた自分の母親がいじめられると思いました。

「兄弟がいたら楽しかったかもしれないけど、今のままでも楽しいよ。」

そう、娘は答えました。

男の母親はそれから何も言いませんでした。

娘はその時のことを誰にも明かしませんでした。

何故なら、自分の親に言えば怒り、悲しむだろうと思ったからです。そして、なぜ男に生まれなかったのかということをさらに突きつけられる気がしたからです。

だから、忘れようとしました。そして、十数年は忘れられたのです。


成長した娘は高校生になりました。

幼少期の影響で呼吸器はあまり強くなかったため、文化部に所属しながら友人と勉学に励み、教師にも質問に通ったりしました。

ある時、全校生徒が集まって生徒総会が開かれました。

生徒総会の議題は挨拶についてです。

生徒会は挨拶を生徒が行うように持ち回りで朝に校門にて挨拶活動を行う案を出しました。

娘は挨拶とは自ら行うものであり、強制されて行う活動ではないと思い、震える足を叱咤しながら全校生徒の前で発言しました。

通常、生徒総会にて生徒会に意見をする生徒など稀であったために非常に驚かれました。しかも高校 2年生の女子生徒です。

それを援護すべく高校3年生の男子生徒も発言しました。

全校生徒の意見は娘の意見に大きく味方し、生徒会の提案が却下されました。

これは類を見ないことでした。


しかし、この議論で生徒総会は長引きました。

大勢の生徒はこの結末に賛同していましたが、一部の生徒は長引いたことに不満を持っていました。

そして、女子生徒が階段を登っていることを知った上で上の階からこう発言したのです。

「女の癖にでしゃばりやがって」と。

その時、娘はカッとなり、急いで階段を駆け上がると、発言した男子生徒に迫りこう言いました。

「文句があるなら何時でもおっしゃって?聞いてあげる。」

男子生徒は黙りました。

娘はその様子を見て踵を返しました。


その後、職員室に用事があり友人と向かっていると、涙が浮かんできました。

女だからいけないのかと。

女でなければ、先輩のように男であれば良かったのかと。

友人は必死に慰めましたが、娘は悔しくてなりませんでした。

通りがかった教師が不審にに思い、娘に事情を聞きました。

「それは男子生徒が悔しかったのだ」と言いました。

「それなら発言すれば良かったではないか」と娘は言いました。

「男子生徒にはそれだけの勇気がなかったのだ」と教師が笑いました。

「しかし、女の癖にと言ったことは許せないことだ。職員室で取り上げて注意しておく。」

そう教師は言いました。娘は教師に頭を下げました。

これで女ということで不当な扱いはされなくなるのではと思ったからです。


次の日、娘は隣のクラスにいる友人に会いに行きました。

クラスに入ると、一斉に話し声がやみました。

そして、そのクラスの男子生徒から睨み付けられました。

娘の友人があわてて教室から娘を連れ出すと、昨日の失言をした男子生徒が教室内で教師に注意されたのだと説明しました。

クラスの男子生徒らはその発言をした男子生徒に味方し、娘を無視するように仕向けていると友人は説明しました。

娘はまざまざと女であることがどんなに嫌われているのかを突きつけられました。


自分の教室にふらふらと戻ると、自分のクラスメイトは何時ものように騒いでおり、何の違和感もありません。

でも、娘にとっては恐怖でした。いつ、このクラスも隣のクラスのようになるのか分からなかったからです。

そこで、近くに座っていた男子生徒に聞きました。

「昨日の生徒総会はどう思った?」

「とても面白かった。発言してくれてスッキリした。」

男子生徒はそう答えました。それだけで泣きそうになりました。


放課後、クラスの用事で職員室を訪れたときに校長に娘は話しかけられました。

「よく発言してくれた。」

娘は曖昧に笑ってその場をやり過ごしました。

次に一年生のときにお世話になった教師から話しかけられました。

「昨日は面白かった。さすがだね。」と。

「でも、それをよく思わない人がいるのも事実です。」

娘は思わず答えてしまいました。

「どうかしたのか?」

教師に尋ねられました。

「昨日の放課後の件で注意してくださったのかもしれませんが、それで隣のクラスの男子生徒たちから無視をされているようです。まあ、でしゃばり過ぎたんでしょうね。」

娘が曖昧に笑うと教師は眉を潜めました。

「自分の意見を言って、それが正当な意見なら何かを言われる筋合いはないはずだ。」

娘は曖昧に笑って礼を言いました。心は晴れないまま、また忘れようと思いました。時が過ぎれば何とかなるものだと思いました。



やがて、娘は大学生になり、卒業して就職しました。

就職先では新入社員研修があり、同期と三ヶ月間共に業務について学びました。

ある時、研修担当の社員が新入社員数人を伴って夜ご飯に連れていってくれることとなりました。

ゲームに勝ち抜き、娘は参加することになりました。

ビアガーデンにて飲み会ということで、娘と同期の女性社員が一人、後は研修の担当社員と同期の男性社員が4人でした。

娘は男性の多さに戸惑いましたが、早々に切り上げられるようにあまりお酒を飲まないようにしました。

しかし、もう一人の女性社員がお酒で潰されてしまいました。

必死に連れ帰ろうとしましたが、男性社員たちに阻まれ、娘も次の店に飲みに行こうと無理やり腕をとられて連れていかれてしまいました。


娘は悔やみました。何故なら、女性社員に付き添ったのが同期の男性社員一人だったからです。

お酒で酔わせて近くのホテルになんてことが容易に想像出来ました。

せめて早く帰って誰かに相談しなければと思いましたが、次の店に行かなければ帰さないと言われ、困惑しました。

仕方なしに男性社員と2人は無理だと話し、もう一人男性社員がいるように頼みました。

そして居酒屋にて奥に座らされ、隣に男性社員、真正面にも男性社員に囲まれました。

どうしたら帰っていいかと必死に頼みました。

すると、度数の高い酒である焼酎を一瓶空けられれば帰っていいと言われました。

ならばと娘はその瓶を自らロックでのみ、男性社員たちにも飲ませながらハイペースで飲みました。


瓶の底が見えたときに男性社員が返すまいと娘にもたれかかってきました。

「酔っちゃった」

そう言いながら娘の胸元を触ってきました。

娘はとっさにお手洗いだと言って逃げました。

お手洗いにて友人に助けを求める連絡をしました。

でも、連絡はとれても誰も近くにいませんでした。

娘はテーブルに戻ると飲んだのだから帰っていいだろうと男性社員に告げました。

仕方なく帰っていいと言われ、送ると言われたのも正反対の方向だからと断り電車を乗り継いで急いで帰りました。


部屋につくと涙が止まりませんでした。

女であることが憎くて仕方ありませんでした。

そのときに、高校生の時に言われた「女の癖に」という一言を思い出してしまいました。

女であることが辛くて仕方なくなりました。

そして、寮であったため、友人を訪ねました。

事情を説明して協力をあおぎました。

他の研修グループでも女性社員が男性社員に触られるという事態が多発していると友人から聞き、友人たちを集めて人事部に掛け合うことにしました。


次の日、胸を触ってきた男性社員から一緒に出社してくれなければ立場がないと言われ、渋々一緒に出社することを友人に話すと、友人が激怒し、友人も一緒にいてくれました。

そして、娘はビアガーデンに置いてきてしまった女性社員とは言葉を交わせませんでした。

罪悪感でいっぱいでした。なんと謝ればいいのかわかりませんでした。

女性社員に付き添っていた男性社員が近くの男性社員に言いました。

「昨日のせいで背中にひっかき傷がついている」と。

とても愉快そうに笑っているのです。周りの男性社員も囃し立てていました。

娘は後悔と怒りでいっぱいになりました。

私のせいだと帰ってからずっと考えました。会社や社会は守ってくれないと思いました。


後日、懇親会という名目で屋形船に研修のグループで乗りました。

奇しくもビアガーデンで女性社員に付き添っていた男性社員が娘の隣に座りました。

みんながお酒を飲んで席を離れて行き始め、娘と男性社員の周りには人がいなくなりました。

娘はとっさに男性社員の胸元をつかみました。

「私は知っている。忘れるものか。あの子にしたことを絶対に忘れることがないことを思い知っておけ。あの子が許しているから見逃すが、今後、手を出したら私は許さない。」

そう小声で怒りを抑えながら言いました。男性社員は顔を青くして首を縦に何度も振りました。

つかんでいた胸元を離すと、娘は残りのご飯を何事もなかったかのように食べ、周りを見渡しました。

先程の男性社員はどこかへ逃げていました。

室内はカラオケを楽しむ男とそれを盛り上げようとする女、酔ったふりをして男を侍らせる女、男を誘惑する女、全てが遠い世界のことのようでした。

外に出るとタバコを吸う男性たちが多く、咳が少しでました。

娘の弱かった呼吸器はタバコや有害物質にたいしては過敏に反応してしまうのです。

咳き込みながらも、外がましだと景色を眺めていると、一人の男性社員が話しかけてきました。

「中はしんどいね。」

「そうね。彼女がいるなら寄っては来ないよ、あの人たち。」

「いや、本社勤務になるから誘惑して彼女と別れさせようとしてる人がいる。」

「それは災難だ。本当に。」

娘は女を武器にした女性社員の同期がいることも知っていました。

屋形船から見る夜景を見てこう思いました。

女になれなかった女はどうしたらいいのかと。


研修期間が終わり、業務で外回りをしているとお客さんからは女の子だからとよくしてもらえることがありました。

娘は心の中でラッキーと思うしかないのだと言い聞かせました。

いずれは私じゃないと無理だと言われるように勉強をしながら過ごしました。

電話対応も穏便に、上司の担当のお客様でも謝り、先輩が答えられないお客様からの質問にも答えました。

そして、日々の売上の数字について上司から指摘され、時には上司の機嫌が悪く無視をされたりしながらも努力していました。


ある日、朝からの会議の前にで体の震えが止まらなくなりました。

娘は右利きでしたが、震えて右手で文字を書けません。パニックで涙も止まりません。

慌ててフロアで一番上の上司に文字が書けないほどに手が震えることを説明したところ、早退するように言われました。

担当の上司にひたすら泣きながら謝ると、一瞥された後に午後からは来れるんだよね?と言われました。

娘は絶望しました。体調を心配するのではなく、業務をしなくては人間として見てもらえないのかと。

病院次第ですと何とか答えて逃げ出しました。


体が震えたことがあるのは2度めのことでした。

1度めは高校3年生の夏に唐突に震え、検査なども行いましたが、原因不明。その際は学校側に色々と配慮してもらったものの、今回は社会人です。どうすればいいのか不安でいっぱいでした。

病院に行けば、高校生のときの震えがぶり返しており、ストレスや負担は避けるようにと告げられました。

無理だと思いました。

受診した次の日に上司たちに謝り、手は震えるが問題ないと告げて業務に戻ったもののメモがノートに取れません。

書けて単語がいくつかです。

上司にメモを取っていないのかと注意されることも良くありましたが、書けないのです。

そのうち、娘は外回りで歩く際に車が突っ込んできてくれれば死ねるのにと思いました。来る日も来る日も思いました。

横断歩道の信号を待っているときなど、このまま歩けばひかれるだろうかと考えることもありました。

その頃、娘の親である男と女性、男の母親もその時は娘と一緒に過ごしていましたが、震えで追い詰められていることは言いませんでした。

娘はこっそり精神科の病院に行ってみました。

しかし、鬱傾向でも話せるなら問題はないと返されました。

その後、娘の母親は精神科に行ったことを知り、みんな大変なんだからそんなんでどうするのかと怒りました。

娘はもはや逃げ道なんてないと思いました。

震えをおさえようとしてもおさえられず、薬をもらいに通院していましたが、娘の感情が限界に達し、その病院でメモがとれないことにより業務に支障があることを泣いて話しました。

そして、渋々とその病院の医者は診断書を出し、休職するように言いました。

娘は次の日に職場にそれを見せると、今日から休んでいいから帰れと言われました。

荷物をまとめ、そのまま帰りました。

帰ってからは泣きました。でも、男の母親がいるので声は押し殺しました。何を言われるか分からないからです。


そして、次の日から起きれなくなりました。

娘の両親は起きろと言いますが眠くて眠くて仕方がないのです。

まるで、体は限界だったのだと言わんばかりでした。

渋々起きても空を眺めるだけ。生きてる意味なんてどこにあるのかと思いました。

飼っていた犬と猫が側にいてくれたため、何とか自制が効きました。


仲のいい同期の女性社員に連絡すると転職を勧められました。

転職サイトに登録すると職が溢れています。

どうせなら大学で勉強していた分析の仕事がしたいと思いました。

なんとか転職活動を成功させ、勤務地である東京へと単身引っ越しました。

一人は楽でした。家族からの干渉が和らいだからです。

行動に制限をかけられず、連絡は来るもののある程度好きにできます。

そして、新しい職場にて働き始めました。慣れないことも多かったものの様々な人と出会いながら勉虚しました。


とある先輩が娘の勉強していた分野に興味があると話したため、大学時代の教科書を数冊貸しました。

そして、娘は社長には分析の専門職が今後必要になり、ビジネスもそれで進められるのではないかと提案しました。

しかし、社長はその分析は娘の趣味でしかないと言われました。

娘は落ち込んだもののチームのために簡単な分析やグラフ作成などを行いました。

異動の季節になったときに分析チームが発足される噂を聞きました。娘はそのチームに入れたら、大学の時のようにより深く分析ができるかもしれないと思いました。

でも、異動できませんでした。代わりに分析知識のない女を武器にした女性社員と大学時代の教科書を貸した先輩がそのチームに配属となりました。

先輩は異動の前日に娘に借りていた本を返しました。

「異動するから返すね。全然読まなかったけど。」

娘はそうですかと受けとりましたが、帰ってから荒れました。

分析のことをなにも知らない人が専門職につき、その下にフォローとして入らなければならない屈辱や女を武器にした女性社員がそのチームに配属になって笑っていること、全てが許せませんでした。

帰ってから酒をあおる日々が続きましたが、そんなときに別部署の男性社員から仕事を手伝ってもらったからと、飲みに誘われました。

居酒屋で2人きりとは気まずい気もしましたが、奢りだと言われ断りにくく着いていきました。

娘はそこで本を貸した先輩の愚痴を話したりしました。別部署の男性社員もその先輩は気に入らないらしく、愚痴で話が盛り上がりました。

また飲みに行こうと言われ、いいですよと答えました。

久しぶりに愚痴を話してスッキリした気持ちになったのです。


そして、2回目に別部署の男性社員と飲んだときに、娘は体調が優れず、あまり飲めないことを伝えました。

しかし、男性社員は飲める分だけと言われて仕方なく少し飲みました。そして帰ることを告げたときにまだ早いからと、そこ辺りを散歩しようと腕を捕まれました。

歩いていく方向の先にホテルが見えました。娘はまずいと思い、なんとか言いくるめて駅の方に戻り、また飲みましょうと言って帰りました。

娘は帰ってから荷物をおいて、ぼんやりと座りました。もう涙は出ません。代わりに笑うしかありませんでした。

そして笑い尽くしたあとにやっと涙がでてきました。

後日、昼間に男性社員につれていかれそうになった道の先を歩くとやはりホテル街でした。

ため息をついて、道は引き返しました。


異動の時期になると、中途採用の社員たちがきました。そこに前職で仲のよかった同期社員の男性もいました。

久しぶりといってご飯を食べに行き、近況を話しました。

娘は先に巻き込む可能性があることを伝え、頭を下げました。

同期社員は協力するから心配するなと言ってくれました。


でも、不幸は続きました。

分析チームと合同の会議で娘にも分析チームの会議に出てもらったらどうかという話になった際に本を貸した先輩が渋り、娘の上司も渋ったのです。

娘はまあ、仕方ないかと思い遠慮することを伝えました。

その後、本を貸した先輩が娘が近くに座っていることを知りながら他の男性社員に娘のことを「別のチームなのに勝手にでしゃばってきて調子に乗っている」と悪し様に言っていました。

娘は席から動けなくなりました。

右手が震えようとするのを左手でおさえ、トイレに駆け込みました。

それから呼吸をしにくくなる日が続きました。一度、早朝に目が覚めたかと思うと、息がうまくできなくなって過呼吸で救急車に運ばれたこともありました。

会社に行けなくなりました。行っても、本を貸した先輩が近くに座るだけで呼吸がしにくくなりました。

産業医との面談を勧められ、病院に行くことを勧められました。

適応障害になっていました。


娘はまた休職すると今度はもっとマシなところにと思い、転職活動をして無事に転職しました。

そこでは女性ではなく、一人の人間として評価されました。

娘はやっとほっとしました。スキルは足りないけれどまた勉強だと思いました。

忙しい日々も成長のためだと思いました。


春が近くなりました。

娘は思い出しました。女として搾取されかけたあの時を。

女であることを否定されたあの時を。

胸を触られたあの日や女の癖にと言われたあのとき、そして男の母親から暗に言われた男の子なら良かったのにという言葉。

娘は胃が痛くなりました。もうストレスなんてないはずだと思いました。

確かに忙しいけど、誰も私を虐げる人なんていないのにと。

でも、思い出してしまうのです。本当は男の子として望まれていた人がいたこと。女の癖にと言われたこと。女を武器にしないと仕事ができなかったこと。女として搾取されかけたこと。

頭の中で男なら良かったのにという言葉が反響します。

忘れようとして、見なかったことにしてきたことになぜか今、追いかけられているのです。

娘は疲れ果ててました。

思えば、朝起きれば涙を流す日も、自分で自分の首を絞めている日も、携帯の充電の線で頚を絞めている日もありました。


娘は思うのです。

なぜ私は私として生きているのか。消えたいのにと。


毎日願っているのです。

ひっそりと消えさせてくれと。



そして娘は女であることをこれからもどこかで憎むのです。

読んでいただきありがとうございます。

あの、お菓子でも食べて幸せな気分補給してくださいね?

この小説の通り、性を否定されたり、不当に搾取されるということは簡単に起きることがあります。

まあ、女性として生きることが楽しいこともあるんですけどね!

反対に男性だって男性ならではの苦しさもあるでしょう。

苦しさも多い社会です。

みんな苦しいかもしれないけど、幸せになれればいいなと思います。

セクハラはダメ、絶対!

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