87話 終焉の時
「アイツも、元に戻りやがったか」
プサイが晴葵の横でため息を吐く。
なんだかんだで彼もオリジナルAI同士としてオメガを心配していたようだ。
全員が感動ムードに包まれていた時。
「許さん、許さんぞぉ!」
ボロボロの体のスティグマがふらふらと立ち上がり、胸から骨型の槍を飛ばす。
それはオメガに向かって一直線に飛び。
「オメガ!」
全員が間に合わない。
しかし、一瞬にしてヘータがオメガを庇うように骨の槍に立ちはだかる。
「消えろぉ!」
狂ったように笑うスティグマ。
が。
「……オメガを救うために隠してきたことが、まさかオメガを守るために使えるとはな。残念だったな、スティグマ。俺は……防御型だ」
ヘータのロングマフラーが盾のようになり、骨の槍をへし折る。
「なっ!」
愕然とするスティグマ。
「残念だったな……お前さんの悪巧みとやらも……ここまでだなァ」
スティグマを見下ろし、ニヤリと笑うプサイ。
「ま、まだだ……我は!不滅!」
プサイに踏み潰される瞬間。
スティグマは自身をデータへと戻し、この世界に溶けていった。
「……逃がしたか」
ポツリと呟くプサイ。
彼がつぶやくと同時に。
がらがらと世界が崩れ始める。
「な、なんでござる……!」
「この世界はもうすぐ崩壊します……」
オメガが苦しそうに言う。
「え、早く逃げないと!」
「と言ってもどこに!」
「緊急脱出は!」
「ダメだ……壊れてる」
呆然とする幸大達。
「本当にゴメン!謝って許してもらえることジャネーのはわかってる!けど……ゴメン!」
サンやヘータ、ショー達が晴葵に頭を下げる。
サン達はこの世界が消えても膨大なデータの中に戻るだけだ。
しかし、人間である晴葵達は……。
「……いいんだ」
ポツリと晴葵が呟く。
その顔は諦めももちろん混じっているが、どこかすっきりした表情だった。
「みんな、ごめん。けど、俺はこれもありかと思ってる。大事な仲間たちと、一緒にいれる。一緒に崩れていく世界で居れる。ちょっとだけ、喜んでいる俺がいるんだ」
照れくさそうに笑う晴葵に文菜達は慌てるのをやめて、晴葵に近づく。
もう世界は、どんどん壊れている。
遠くの足場も、真っ白に消えていく。
『デュアル』の終わりが近づいていた。
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