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82話 新手の影

 客室でのんびりとする六人。


「さて、それじゃ準備でもしようかな」


 晴葵がのっそりと立ち上がり、カバンに近づく。


「あら?夕食にはまだあるわよ?それともお風呂でも入るのかしら?」


 本を読んでいた千弦が顔を上げて尋ねてくる。


「いや、どっちでもないよ。俺が言ってるのは……コレさ」


 そう言って晴葵が取り出したのはガラケー。


 そして、メガネだった。


「ふふ、拙者『デュアルワールド』をアップデートさせておいたのだ!」


 いつの間にやらメガネを装着してアプリを更新させている匡也が叫ぶ。


「全員『デュアルワールド』アプリを長押ししてくれしてくれ。そうすると、アップデートと出るはずさ」


 晴葵に言われた通り、全員がアプリを更新してメガネをかける。


「いいかい?それじゃ、夕食まで……スタートさ!」


 晴葵がアプリを起動させると、聞きなれた警告音と『ERROR』表示。


 こうして六人は、数度目の『デュアルワールド』へと旅立った。



「やっぱりか」


『ERROR』の文字が消えて早々、晴葵が呟く。


 そこは旅館の中ではなく、自分たちの家だった。


「やはり、我らの家がスタート地点になっているようでござるな」


 匡也も大して驚きもせずに頷く。


 本来、『デュアルワールド』は現在自分が立っている地点にモンスターなどを表示させるゲームであるが、データ世界『デュアル』自体は地元だけしか存在していないらしい。


「とにかく、サン達と合流しよう」


「そうですね」


 晴葵の言葉に文菜が頷く。


 そして家を出て、『ならふぁ』へと向かう晴葵達六人。


 その後ろで、一つの影が近づいてきていた。



「あれ?」


 小弓がピタリと足を止めて振り返る。


「小弓、どうしたん?」


 文菜が尋ねると。


「ううん、なんかノイズみたいなのが聞こえて……」


「ノイズ?」


 晴葵達も耳を澄ますが聞こえない。


「私も勘違いかもだから、行こー!」


 小弓が元気よくジャンプした途端。


 ザザ。


「あれ?」


 一瞬ではあるがノイズが聞こえる。


 さらに変化は視界にも現れた。


 メガネのレンズの一部に砂嵐のような物が見える。


 と、同時に。


「クハハハハ……」


 不気味な声が聞こえた。


「みんな!集まるんだ!」


 晴葵の合図で背中を合わせる六人。


 そして、全員の前に現れたのは。


「なんだァ?人間のガキ共じゃねーか」


 着崩したスーツにトレンチコート、そして中折れ帽を被った、愉快そうに笑う渋く低い声の男だった。

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